第42話 勇者SIDE 手遅れ(旧、勘違い:改変)
どうしたら良いのか解らない…
日に日に日常生活がグチャグチャになっていく。
凛々しかったリダ
癒しのフリージア
可愛らしいミルカ
それがまるで今は見る影もない。
宝物が、ゴミみたいに変わっていく。
街の中はまだ、良いんだ。
高級な宿に泊まり、世話役をギルドに頼めば良い。
事務仕事も専門の人間に頼めばどうにかなる。
だが、旅先はどうにもならない。
俺達について来れらる人間は居ない。
魔王軍、魔族との戦闘。
自分の身を守りながらついて来れる人間は数少なく、居たとしてもそう言う人間は稼げるから受けてくれない。
それでも誰かに頼らずには生活は出来なかった。
頭を下げて頼んでいるのに...
『こんな書類も碌にこなせないんですか?』
『聖女様に賢者様に剣聖様…家事が全くできないんですか幻滅です』
『どうやら、今までこのパーティが上手く回って居たのはリヒト殿が居たからですかね』
『リヒト様の代わり?馬鹿ですか? S級は世の中に10人満たないんですよ…他のS級冒険者が雑用をするとでも?』
『旅について行き自分が守れる人間?最低A級ですが、誰も受けませんよ』
頼れば頼る程信頼は無くなっていく。
それなのに、問題の原因は一向に解決しない。
結局、街での問題は、お金と信頼を失う事で解決したが、野営や旅、小さな村では何も解決しなかった。
そもそも勇者の危険な旅についてくるには、リヒトレベルの人間が必要で…同じ位の実力者は、金が稼げるからこんな仕事を絶対に引き受けてくれない。
評判はどんどん下がり続ける…
人気があった幼馴染の3人は…戦うだけで『家事が何も出来ない女』と知られる様になり、清潔感が無くなり、身だしなみも悪くなった結果『女としては終わっているんじゃないか?』
そういう陰口を叩かれる様になった。
ヨレヨレの服にボサボサの髪…誰が憧れるものか…
街で宿屋に泊まり…
清潔感のある状態にするために結構なお金をかけ…
旅に出てまたボロボロになり、お金を使いまた戻す。
それでも昔のように『綺麗』と言われるようにはならない。
教会からも『無駄使いが多い』と請求する度に責められる。
どうしようもない…
どうしてもリヒトに戻ってきて貰わないと、今にきっと、大変な事になる。
◆◆◆
「カイト…リヒトはどうしたのよ!早く戻る様に言ってよ!」
フリージアが限界に来たようだ。
「何回も連絡をしているが、上手くいってないんだ...」
「ちゃんと謝ったの? この際プライドを捨てた方が良いよ!真摯に謝ればリヒトだもん許してくれるよ!」
「ミルカ、俺なりに謝りの手紙も送ったが、駄目だ!来たのはこの伝言だ、見てみるか?」
『オレノイバショハソコジャナイ…ダカラカエラナイ』
「これじゃもう難しいね…ハァ~諦めるしか無いのかな!」
「リダ!だけど誰に聞いてもリヒト以外は無理!そう言うじゃない?」
「あのさぁ、カイト…そもそも、只の待遇改善じゃ駄目だったんじゃないかな?」
嫌な予感がする…薄々は解っている。
俺が彼奴にしてきた事を考えると…
それしか思いつかない。
「意見があるなら言ってくれ」
「そもそも、リヒトは私達と同じ、小さな世界で生きていたのよ!同年代の男2人に女3人!それだけ世界。普通に考えたら私達3人しか恋人候補、婚約者候補は居ないわ!それなのにカイトが私達を独占したからリヒトは1人ボッチになったのよ!皆、同じ立場だったらどうかな? そんな孤独に耐えられる?」
「「耐えられない(かもな)」」
「カイトは?」
「同じだ!1人だけ除け者にされたら一緒に居たいとは思えないし逆の立場なら耐えられない」
「そうでしょう!続けるわね、誰も自分を好きになってくれる異性が居ないなか、親友のカイトが3人を独占してイチャイチャしていたら傷つくわよね?だから、リヒトは『此処に居たらずうっと1人』そう思ったから離隊をすんなり受け入れ出ていったのよ、それだけだわ」
「だがフリージア、それならどうすれば良いんだ!」
「皆んな考えて!リヒトは私達3人の中で誰が好きなのかな?小さい頃から一緒だったんだから、絶対この3人の中に好きな女性が居た筈よ!その1人が今後リヒトの恋人、いえ婚約者になる!それしか方法は無いわ!」
「俺は反対だ…」
「「私も」」
「私だって嫌だわ!だけど、それならこのままの生活を続けるしかないわ!だけど、これはリヒトに戻って来て貰える、最後のチャンスなのよ…」
「どうして?」
「ミルカ、リヒトに恋人が出来たら、もうこの話は通じなくなるわ! 『好きな人がリヒトに居ない』それが前提なのよ。リヒトだってS級、何時までも恋人が出来ない訳ないわ!遅くなればなるほど、この話は出来なくなる可能性が高いから、やるなら今しかないわ」
「フリージア、一体どうすれば」
「リヒトが3人の中で誰が好きなのか考えないと駄目。その1人がカイトと別れリヒトを迎えに行く!それなら帰ってきてくれる可能性はあると思うの」
「背に腹は変えられないな、話し合おうか」
皆が好きだ。
誰一人手放したくはない。
だが、俺はこの話を即答で断る事が、どうしても出来なかった。
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