第2話 能力がわかるやつ、ほらあの、あれだよ、儀式。
王子というのも大変だ。
毎日勉強をさせられ、稽古をさせられ、たまに他国まで行かないとならない。
だらだらと楽に過ごすとは行かないものだな。
こんなに忙しいのに、ましてや父は体調を悪化させるほど頑張っているのに、ここの民ときたら大したこともしていないのに文句ばかり垂れる。
と、愚痴を言おうとすると父に怒られるから思っているだけにしよう。それに世論が動いて忙しくなるのは父だからな。
あの髭まみれで皴ばかりの見た目で僕よりも年下な父だ。転生前を足せばだけど。
さて、僕は今日で14歳になります。国中があげて祭り騒ぎになっております。あまりに騒がしすぎてその描写を細かく書こうものなら簡単に一万文字を越えてしまうので、書きません。
だいたい14歳になったら――――――――そうです。能力のやつがあります。
この世界では能力判明の儀式は車の免許を取るのと同じくらい当たり前のことらしいです。実年齢足すと30を超えるのでちょっと恥ずかしい部分もあります。
国で一番大きな教会まで遥々馬車に揺られ、三回ほど吐いた。でも草原や青空などの景色が良かったので四回目は我慢できました。なんとか。
しかし教会のある都市、ヲルヲルンドについても馬車は止まらず、なんと都市を通り抜けた外れに教会があるので、結局吐きました。
僕が酔っているのを無視されて真っ赤なカーペットを歩かされ、偉そうで豪華な衣装のおじいさんが万歳して待ってます。ただよう加齢臭に嗚咽を我慢するので必死ですよ、こっちは。あ、貴族の暮らしのせいで口が悪くなっただけです。
それからなんやかんや能力判明前の変な儀式があって、それが終わって今、変な帽子を被されてる。しゃべる変な帽子。僕の能力を言ってくれるそうだ。
「…………」
でもなんか小一時間くらいなんも言わないんだよね。
父も周りを囲う側近も記者もなんかざわついてるし、そもそも重いから早くしてほしいのだが。そんなに僕の頭って居心地いいの? また今度僕も座ってみようかな。
それにしても、ざわついている横で教父のおじさんがなんか青ざめてるんだよな。すっごく目が泳いでるし、その周りにいる教会のお偉いがたも顔色悪い。なんか嫌な予感がするな。
さらに一時間。父の顔はだんだんと険しくなり出した。持病の痔が。
側近たちも焦り出している。汗がだくだくだ。教会の偉い人たちはそれを見て、いよいよ何か紙に書いて、なんかそれを渡すかで揉めているように見える。
もうそういうのいいから、さっさとしてくれないか。こっちは首がへし折れそうなんだよ。なんなのこの帽子?
教会の人が父の元前で行って手紙を渡した。父はそれを読むなり、さらに険しい顔になった。なんだ、痔を悪化させる手紙なんてあるのか。いや、違うか。
だったら一体何なんだろうね、僕はなんとなく帽子クソ野郎に視線を送った――――、
「……こいつ、能力ないっす」
は? 今なんて? てか喋れたのかよ。なんで喋らなかったんだよ。
あまりの驚きに僕はクソ帽子を窓の向こうに飛ばしたよ、イチローびっくりのレーザービームで飛んで行ったよ。
「あれ?」
なんか王国兵たちが僕を掴んできた。え? え? ふざけんなよ? 粛正するぞ?
やっちまえよ父! と僕は視線を飛ばしたが、なんか父の様子がおかしい。というかすごい顰め面。皴が破れるくらい皴になっている。
「お前、王族失格な」
「え?」
そうして僕は兵に引っ張られ、牢獄へ入れられた。
暗いし、寒いし、暗いし、凄く寒い。くしゃみが通りこして、しゃっくりが止まらないよ。
しかもなんか同室なんだけど。ありえなくね?
髭まみれのマッチョハゲムキムキがいるのだが。なんかニヤニヤしてるし、あれ? セミの鳴き声が聞こえてきた。もしかしてこの漢は――――、
「おう、なんで捕まったんだ?」
「いや、こっちが知りたい」
「おう、なんで捕まったんだ?」
「だからこっちが知りたい」
「……おう、なんで捕まったんだ?」
古いゲームのNPCか。話が通じないのだが。
とりあえず答えなければいけないルールという異世界特有のやつです。なんだよそれって、こっちが聞きたい。
「能力のやつやったら無能って言われて入れられた」
「能力のやつ? 儀式か! それは災難だっ――――ちょっと待てよ、今日捕まったってことはまさか!?」
「そうだよ。世の中はお金なのよ国、通称ヨキン帝国の王子だよ」
僕が正直に云うと脳筋は目を飛び出して牢獄の壁をぶっ壊した。月が綺麗ですね、違った、これハゲの頭だった。
「おいおい、ってことはお前を人質にすればガッポリじゃねえか!」
「そうだな。ここが牢獄じゃなければな」
「何言ってんだ? 風が鳴いてるだろ?」
「ウホ!?」
なんやかんやあって脳筋と脱獄した。
文字数長くなりそうだし、ここで一旦切ろう。
あっ、本当はチートな能力が発揮される場面やるの忘れてた。
まぁいいか、別にいいよな?
「まぁいいんじゃね? それよりもあそこに赤いパンツ吐いたでかいネズミがいるぞ」
「え? マジだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます