第35話 ナボナはお菓子のホームラン王ですわ!
梅田のとあるバッティングセンター、そこで周りの客からチラチラと注目されている2人の女子高生が居た。
バッターボックスに立つのは我らが西園寺エリカお嬢様、その後で百円玉をジャラジャラ持って立っているのがおなじみの戸田である。
ヒュッ
カッ!キーーーーーーーーーーーーン
「ふむ、もうちょっと掬い上げるように振らないと駄目ですわ」
エリカのローファーがバッターボックスでキュキュッと音を立てる。
名門三つ星の制服は意外とスカート丈が短い、腰の入ったフルスイングでフワリと舞うスカートから覗く美脚は否が応にもギャラリーの男どものエロい視線を集めていた。
「それにしても、なんで突然バッティングセンターなんです?」
バットを構えて次の球を待つお嬢様に話しかける、初めてのくせに妙に構え方が様になってる。
授業が終わって放課後にいきなりバッティングセンターに誘われたのだ。なぜにこんな学院から離れた所までと思っていたら「バッティングセンターは初めてなので打てなかったら恥ずかしいですわ」とオホホと照れていた、ようは知り合いにはその姿を見られたくはないらしい、案外普通の神経も持っているじゃないかとこの時の私は思っていた。
考えて見たらあの学校でバッティングセンターに行くような庶民はいない事に気づいた、伊集院様あたりならお嬢様に誘われたらホイホイついて来そうだが。
「なんでと言われましても、阪神もオリックスもリーグ優勝しましたし、ここは熱いうちに野球ネタで攻めるべきかと思いまして」
「?、と言うか、エリカお嬢様って左バッターだったんですね」
「へっ、昨日TVで見た大谷翔平さんはこっちに立ってましたけど、確かイチローも」
「は?」
「もともとテニスをやっていたので
昨日の夜リビングの大きなTVで、大谷のホームラン王を記念した特集を見ていたのに感化されたらしいが。
「それ普通やない…」
エリカの相変わらずの規格外ぶりに呆れる戸田。
カッ!キーーーーーーーーーーーーン
テッテレ〜♪ホームラン!
「良し!今の角度ですわね」
明らかなホームラン狙いのアッパースイング、普通の人なら内野フライの所をエリカは看板を壊さんばかりにライナーで直撃させる。
カッ!キーーーーーーーーーーーーン
テッテレ~♪ホームラン!
「何やあの娘、凄えスイングなんだけど、稲村亜美かよ」
「いや、あのフォームは大谷翔平やろ」
「あそこって時速140kmのレーンだよな、それを女の子がホームラン連発って」
「舞い上がるスカートが可憐だ」
「縦ロールも揺れてるけどな」
「〜ほあ〜んきょ〜〜かい♪」ブン
カッ!キーーーーーーーーーーーーン
テッテレ~♪ホームラン!
場内に響き渡るホームランを知らせる音楽に、満足気に笑みを浮かべる。
「ふう、やっぱり関西電気保安協会のリズムですわ、戸田もやって見ます?意外と面白いですわよ」
「昨日大谷さんのホームラン映像集を見ただけで、よくそこまで簡単に打てますね、ちなみに関西電気保安協会のリズムって絶対打ちずらいです」
「あら、チャーシューメーンの方が良かったかしら」
「お嬢様ぽいですけど、それはゴルフの時の掛け声です」
エリカお嬢様はワンタンメン、ギョーザとブツブツ言いながらバットを素振りすると私に振り返る。
「あと人間は想像力が大事ですわ、想像出来る事は大抵なんとかなるものですわ。それにしても大谷さんのホームランの数が44本と言うのは日本人的には不吉ですわね、もしかしてそれで右ひじを壊したのでは?」
「まぁ4で死をイメージするのは日本だけですからね、てか阪神、オリックス、もう全然関係ないじゃないですか!」
私が文句を言うとエリカお嬢様がニヤリと笑う、綺麗すぎてちょっと悪役令嬢みたいですよ。
「実は野球選手なら大阪PL学園出身の桑田真澄さんのほうが
「桑田は巨人軍ですよ!お嬢様歳いくつでしたっけ?」
桑田真澄って、お父ちゃんがよく野球好きだから私はかろうじて知ってるけど年代違わない?それに大谷さんのほうがよっぽどイケメンじゃないですか。
エリカお嬢様はその後もパカンスカンとホームランを打ちまくった、この人やっぱりおかしい。
「ふむ、飽きましたわ」
「飽きっぽいな!!」
梅田駅に戻る道すがら途中ファミマにスタスタ入って行くエリカお嬢様、近くにドトールもあったのになぜコンビニなの、お嬢様のくせに。そして迷わずラムネって、あ、ごちになります。
キュポン
ゴクゴクゴク
「ぷはぁ、運動の後はラムネに限りますわ!」
イートインスペースでラムネを一気に飲み干すと笑顔を見せるお嬢様、本当にこの人はいつも幸せそうだな。
「そう言えば、奥様と行かれた枚方パークはどうだったんですか?」
「……お母様がはしゃいじゃって、恥ずかしかったですわ」
「えっ、あの奥様が。それは想像出来ませんね」
奥様よっぽどエリカお嬢様と遊びに行くの楽しみにしてたんだろうな。
「…でも、
恥ずかしそうに耳を赤くしながらそう呟くエリカお嬢様はとても可愛かったです。
後日お土産にノームの仲間たちのぬいぐるみを頂いた。お嬢様にしては食べ物でないのは珍しいな。
そう言えばジャニーズの岡田准一は園長さん続投するらしいな、奥様も一安心だろう。
なんだかんだでお屋敷に到着。
「戸田には今日のお供のご褒美として極上カップヌードルを差し上げますわ、先日イオンで優勝セールをやっていてイチキュッパだったんですの」
「あぁ、ここでようやく阪神優勝セールに戻るんですね、極上カップヌードルですか、気にはなってたんですよね…トリュフオイルって美味しいんですか?」
「くっそ不味いですわ!途中で味変に投入したんですが入れた途端にくっそ不味かったですわ!トリュフは日本人には向いてませんわ、まだパクチーの方が紫蘇みたいで馴染めますわ」
「不味いんですか。はぁ、まぁ日本人には松茸の方が美味しいですよね、知らんけど」
「外人さんは松茸の匂い嫌いの人多いですわよ」
「「日本人の味覚って…」」
2人で首をコテンと傾げる。
夜食で食べた極上カップヌードルは、なんか普通の方が美味しい気がしてガッカリした。
付属のトリュフオイルはお嬢様の忠告通り入れなかった、私は冒険はしないのだ。
「戸田、極上カップヌードルはどうでした?」
「普通の方が美味しいですね」
「やっぱり、シーフードは極上の方が格段に美味しかったんですけどね」
「なんで微妙な方を寄越したんですか?」
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