第25話 あぁ、魅惑の赤ですわ!

学校から屋敷に帰るとリビングのソファーにお父様が座っていた。


「あら?お父様こんな時間に家に居るなんて珍しいですわね」


「おぉ、エリカお帰り。今日はボジョレーヌーヴォーの解禁日だろ、早く飲みたくて仕事を早く終わらせて来たんだよ」


「あぁ、今日11月17日は第3木曜日ですから解禁日ですわね」


お父様はお酒好きで初物好き、毎年ワインの新酒であるボジョレーヌーヴォー、日本酒のあらばしりなどは欠かさず飲むようにしているのだ。

ボジョレーヌーヴォーはフランスのブルゴーニュ、ボージョレー地区の新酒、葡萄の種類はガメイ種でその赤かロゼの事を指す、白は新酒販売はしないのでラインアップには入ってない、渋味が少ないので軽やかで飲みやすいそうだ。

今年はウクライナ情勢の影響で、飛行機の運賃が上がった影響で値段が割高になっていると、お父様が機嫌良さげにペラペラと喋る。


キュポン


愛用のソムリエナイフでコルクを抜く。


「うん、今年のヨーロッパは記録的な猛暑だったから心配したが、酸味も少なく飲みやすいな」


「そうなんですの?」


まだ高校生でお酒を飲めないわたくしとしては11月6日 (立冬)に解禁されたズワイカニ漁のほうがよっぽど気になっている、あぁ、今年も金沢に香箱ガニ(ズワイガニのメス、オスは加能ガニと呼ぶ)を食べにいかなくてわぁ!


「あの、コクのあるカニ味噌にぷちぷちの外子、石川の冬限定グルメですわ!」


ズワイガニは地域によって呼び名が変わるのがまた面白い、福井では越前ガニ、京都や島根では松葉ガニやセコガニと呼ばれる、本当に名前だけが違うのかしら?棲んでる所によって味が変わるなんてことは……あぁ、駄目ですわ、考え出したら気になって気になって。




親子でブツブツ言っていると、お母様がリビングに入って来た。

私達を一目見て首を傾げると、眉間に皺を寄せボツリと呟く。


「親子で何をやってますの?気持ち悪い」

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