第58話 みんなの力と本当の笑顔
俺とエステラちゃんは、紫色の霧の中を突き進む。
歩みを進めると、徐々に紫色の霧が濃くなっていく。ドローレアだった何かに近づいているのだろう。
程なくして、俺とエステラちゃんは、濃くなった霧の中心部にドローレアだった何かを発見する。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……」
ドローレアだった何かは、未だに同じことをぶつぶつと言っている。
俺はそれを見て、
だが、それはそれとして、普通にぶっ飛ばす。容赦はしない。
「分身幹部ドローレア、お前は倒す。だが、運良く転生できたのならば、グラニットと一緒に地球へ遊びに来てもいい。オレンジャーズがいつでも相手をしよう」
どす黒い気持ちが消滅したドローレアなら問題ない。
仮に、どす黒い気持ちが残った
続いてエステラちゃんもドローレアだった何かに宣言する。
「ドローレアさん、あなたを倒して、地球の皆さんを守ります。お父さんとお母さんが大切にしてきた星幽結社エルリンケイムを取り戻します」
ドローレアだった何かに動きがあった。
俺とエステラちゃんの言葉を認識したのかは分からないが、ドローレアだった何かが、こちらに向かってにじり寄ってきた。
粘液化した物体が白目をむき、俺とエステラちゃんを狙っている。
ドローレアだった何かが発する紫色の霧が、より濃くなってくる。
俺とエステラちゃんでも、これ以上は耐えられない。もう一切の猶予はないだろう。
俺とエステラちゃんは、拳に力を溜める。
全ての力と気持ちを、拳に乗せる。
今から放つ、この一撃で、全てを終わらせ、勝利する。
俺とエステラちゃんは、顔を見合わせて、小さく頷く。
タイミングを合わせたところで、一気に力を解放する。
「うおおおおおおおっ!」
「やあああああああっ!」
俺とエステラちゃんは、渾身のパンチを繰り出した。
粘液化した物体、ドローレアだった何かに、全ての力を叩き込む。
色々な想いの詰まった二人の一撃が、ドローレアだった何かをぶっ飛ばす。圧倒的な力でぶっ飛ばす。
ドッガァァァッッ!!!
ドローレアだった何かは、渾身の一撃を正面から受け、爆散する。
俺とエステラちゃんの一撃により、爆散したドローレアだった何か。たくさんの欠片となり宙を舞う。
その欠片の全てが、俺とエステラちゃんの力によって、キラキラとした粒子になり消えていく。
俺とエステラちゃんは、その様子を黙って見つめる。
ドローレアだった何かは消滅した――――。
ついに倒した。
それから程なくして、放出元が消滅した紫色の霧が晴れてくる。
辺り一帯に、少しずつ冬の澄み切った空気が戻ってきた。
冬の柔らかな陽射しを受けて、周囲に見えるもの、その全てが優しくキラキラと輝き出した。
勝利の証だ。
「やったね、エステラちゃん。お疲れさま」
俺がそう言葉をかけると、エステラちゃんが俺の目の前に歩み寄ってきた。いい匂いがする。
ん? エステラちゃん、一体、俺に何をする気だ?
そう思う間もなく、エステラちゃんの白く柔らかな手が、俺の両手を取り、ギュッと握る。
「えへへ、やりましたね、俺グリーンさん。ありがとうございます♡」
エステラちゃんが上目遣いで、俺を見つめながら笑顔を見せる。
えっ、なにこの笑顔、可愛いすぎじゃない?
今までも可愛いと思っていたが、今回の笑顔はハンパではない。
間違いなく過去イチの笑顔と言っていい。
これがエステラちゃんの本当の笑顔とでも言うのだろうか。
俺はあまりのキラキラっぷりにクラクラする。
至近距離にいるエステラちゃんが俺の両手を握り満面の笑みで、俺のことを見つめている。この状況に俺が耐えられるはずはない。
俺の意識はそこで途絶える――――。
こうして俺は最後にキュン死したが、これまで地球を襲う数々の強敵を撃破してきた。
ゴールドメタリックの怪人軍団。
巨大
パープルメタリックの怪人軍団。
グラニットと一体化した巨大
俺一人の力だけでは到底、倒せない強敵だった。
分身戦隊オレンジャーズ。
五人揃った俺でなければ、強敵に打ち勝つことはできなかっただろう。
そして、
ミツバチ怪人エルフィンドールズ。
美少女ペア☆ホワイトシュシュ。
対怪人SATの皆さん。
自衛隊の皆さん。
第四課などサポート部隊の皆さん等々。
全ての人々が全力を出し、それぞれが持つ様々な力をひとつに結集できたからこそ、勝利をこの手に
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
◇◇◇
これで第三章が完結です。
ここまでお読み下さりありがとうございました!
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