第四章 その先

第59話 勇気と俺と最後の戦い

 俺は病室にいた。

 今、俺が目にしているものは、最初にエルフィンドールズにぶっ飛ばれたあと、見上げていたときと同じ天井だ。


 今回の病院送りもエステラちゃんのせいという気がしないでもないが、そうではない。

 二人の分身幹部ドローレアと巨大兵器ロボギアナギア完全体との連戦により、力を使い果たしたからだ。

 その証拠に、他の四人の俺赤、黒、黄、桃も別室で療養している。


 俺は目覚めてから、アメリカとインドにも現れた怪人軍団がどうなったかを聞いた。

 もしかしたら五人の俺オレンジャーズが出動する事態になるかもしれないと思ったからだ。それは俺の取り越し苦労だった。自意識過剰と言っても良いかもしれない。


 まずはアメリカのボイントンキャニオンに出現した怪人軍団。

 これはUSAが誇る個性的で派手なヒーロー軍団が殲滅したらしい。


 次にインドのアルナーチャラに出現した怪人軍団。

 これはインドが誇る真っ赤なアストラルパワーを操るヨガの達人集団が殲滅したらしい。


 聞いた限りではあるが、どちらも相当に強そうだ。

 世界は広い。

 ということで、地球を強襲してきた怪人軍団は全滅、一安心だ。


 残る問題は、二人の分身幹部ドローレアがいなくなった星幽結社エルリンケイムが今後どうなるかだ。

 これについては、星幽結社エルリンケイムに戻っているエステラちゃんとナタリアちゃんからの報告を待つのみだ。


 俺がヤキモキしながら待っていると、数日後、エステラちゃんとナタリアちゃんが地球へやってきた。

 二人とも満面の笑みだ。


 これは聞くまでもないだろう。

 星幽結社エルリンケイムを取り戻したに違いない。


 それでも一応、エステラちゃんに話を聞くと。


 二人の分身幹部ドローレアがいなくなったことにより、武闘派の勢力が減衰。

 エステラちゃんのお母さん、アデリナさんが穏健派を取りまとめて、星幽結社エルリンケイムの総統に返り咲いた。


 ただラゾワール博士など一部の者が星幽結社エルリンケイムを抜けてゴルゴスの元へ行った。

 その際、ある程度の物資について持ち出しを見逃したので、ゴルゴスが星幽結社エルリンケイムにこだわる理由はないだろうとの推測だ。


 これにより星幽結社エルリンケイムは、元々の穏やかな結社に戻ったと考えて良いだろう。


 さっそく俺イエローがお祝いと言って、ナタリアちゃんと一緒にスイーツを買いに行った。

 そして、エステラちゃんは本部に残り、今、俺の目の前にいる。そのエステラちゃんがニコニコしながら俺に言う。


「俺グリーンさんには、色々たくさん助けてもらいました。ありがとうございます。やっぱり平和は良いですね。えへへ」


 エステラちゃんが本当に嬉しそうで、俺も嬉しい。

 問題は全て解決、一件落着と言って良い。


 だが、俺にはひとつだけ、やり残したことがある。


 俺がやり残したこと。

 それは、今、俺の目の前にいるエステラちゃんだ。

 俺はエステラちゃんに、無様に連敗している。


 俺はエステラちゃんに勝ちたい。エステラちゃんに勝った上で、伝えたいことがある。


 俺はエステラちゃんに『好きだ』と伝えたい。


 以前、俺レッドの勇気を見たときから、次に機会があったら勇気を出したいと思っていたが、それは今だ。

 俺は勇気を出して、エステラちゃんに勝負をお願いした。


「エステラちゃん、俺と勝負して欲しい。そして、俺はエステラちゃんに勝って伝えたいことがある」


 俺の真剣な言葉を聞いて、エステラちゃんは、戸惑いながらも了承してくれた。


「えっ、私と勝負ですか? 勝負するのはいいですけど……、私に伝えたいこと? それって……」


 俺は地球を襲う様々な強敵に勝利してきた。

 俺は最後にエステラちゃんからも勝利する。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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