第54話 もともと全員、俺なんだからな

 異常なまでのグラニットの殺意と狂気。

 暴れ狂う巨大兵器ロボギアナギア完全体の前に、いつの間にか次の市街地が迫っている。

 このままでは、すぐにも市街地が消滅してしまう。


「くそっ、このままでは……」


 俺に力を集約する技にしか、ギアナギア完全体を倒せる可能性はないだろう。


 この異常な殺意と狂気を、俺が止めなければならないのか。

 しかし、俺なんかには無理ではないのか。

 いや、それでも俺がやるしかない。


 だがしかし、この大事な場面で、俺頼みとは無理がある。

 俺とは一体なんなんだ……?


 俺が一人で葛藤している、そのときだった。


「俺グリーンさん……いや、俺グリーン!」


 ん? 俺レッドが俺を呼び捨て?

 一体、どうした?


「しっかりしろ! お前ならできる!」


 俺レッドが丁寧語をやめて、俺に発破はっぱをかけてきた。

 一人でうだうだと葛藤している俺に、気合いを入れるためだろう。


 俺は今までにないほどの熱い気持ちを、俺レッドから受け取った。

 それは、俺ブラック、俺イエロー、俺ピンクからも同様だった。


 俺レッドに続いて、俺ブラックも俺に発破はっぱをかけてくる。

 俺ブラックが真剣な表情で、俺に言う。


「そうだ、俺グリーン、五人の力を集約できるのはお前だけだ」


 さらに俺イエローが必死の形相で、俺に言う。


「俺グリーン! お前こそが中心だ。全力をぶつけてきてくれ!」


 最後に俺ピンクが巨乳を揺らして、俺に言う。


「みんなの笑顔を取り戻して、俺グリーン! あなたしかいない!」


 俺を中心にして、四人の俺赤、黒、黄、桃が俺を見つめる。

 俺に次々と言葉をかけてくる。


「勇気を出せ、俺グリーン!」

「落ち着いていけ、俺グリーン!」

「諦めるな、俺グリーン!」

「大丈夫だから、俺グリーン!」


 俺はグラニットの持つ殺意と狂気、ギアナギア完全体の持つパワーに圧倒されて、視野が狭くなっていた。


 ギアナギア完全体に立ち向かうのは、俺一人だけではない。俺の周りには、頼りになる四人の俺赤、黒、黄、桃がいる。


 俺は四人の俺赤、黒、黄、桃による心からの励ましにより、気がついた。

 俺を見つめる四人の俺赤、黒、黄、桃をあらためて見て、気がついた。


 勇気と熱い気持ちを持った俺、俺レッド。

 いつも冷静でいぶし銀の俺、俺ブラック。

 どんなときでも前向きで元気な俺、俺イエロー。

 優しい気持ちを持った俺、俺ピンク。


 俺自身、俺一人では気がつかなかったが、もともと俺が持っていたものなのだろう。


 そして、俺だけは今も突出したものを持っていない。

 そんな俺がこの大事な場面で、五人の俺オレンジャーズの中心にいる。


 その理由を今、感じた。

 俺が中心にいる理由、それは俺が五人の俺オレンジャーズの根幹、芯だからだ。


 思えば特徴のない俺こそが、怪人との初戦からセンターだった。

 今までずっと、それは偶然だと思っていたが、それは違った。

 偶然ではなく、必然だった。


 そんな俺だからこそ、俺レッド、俺ブラック、俺イエロー、俺ピンクが持つ様々な力を集約できる。


 もともとの俺が持っていた力。

 そこから五人に分割されて芽を出し、一人ひとり成長した力。

 その五人の俺の力を、今、ひとつに合わせて昇華させる。


 今、このときのために、俺がここに存在するに違いない。


 俺はすでに確信した。


 そう、俺が五人揃って分身戦隊オレンジャーズ。

 全員の力を合わせるぐらいできて当然、できるに決まっているだろう。


 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだからな!


 そして、五分割されるほどの濃密な俺の力が成長しているのだ。

 それをひとつに集約する以上、一撃でギアナギア完全体を粉砕することぐらい容易いだろう。


 俺は気持ちを込めて、五人の俺オレンジャーズが持つ全ての力を、右拳に集中させる。今までと力のノリ方が段違いだ。


 周りにいる四人の俺赤、黒、黄、桃が、立ち位置センターの俺を見る。


「「「「行け! 俺グリーン!!!」」」

「任せろ! みんな!!!」


 俺は巨大兵器ロボギアナギア完全体の正面に立つ。


「俺が五人揃って分身戦隊オレンジャーズ! 五人の力を全て集約した次の一撃で貴様を倒す!」


 それを聞いたグラニットがキレまくる。

 それによりギアナギア完全体が紫色をした凄まじいオーラを放ってくる。


『なんだ、ゴラァァッッ! 倒すのは俺の方だぁぁぁッッ!! 死ねやぁぁぁぁあッ、このカスがぁぁぁぁぁぁッッ!!!』


 しかし、俺はギアナギア完全体のオーラをものともしない。

 俺はギアナギア完全体の左胸を目掛けて、渾身のパンチを繰り出した。


 ドッガアアアアァァッッ!!!


 俺のパンチにより生じた衝撃がギアナギア完全体を貫通する。

 ギアナギア完全体の左胸に、ポッカリと大きな穴があく。


『はぁぁぁ!? なんじゃあ、こりゃぁぁぁあッッ!? クソ雑魚下等種のくせにぃぃぃいッッ!!!』


 そして、その衝撃により、ギアナギア完全体の虹色のコアが砕け散る。


 バリバリバリッッ、バリンッッ!!


 同時に聞こえてくる、グラニットの断末魔。


『こ、コアが砕けただとぉぉぉッ!? マジで一撃!? く、クソがぁぁぁぁッッ……』


 虹色のコアが粉々に砕けた巨大兵器ロボギアナギア完全体、その巨体がキラキラと蒸発するように消えていく。


 あとにはなにも残らなかった。

 グラニットと巨大兵器ロボギアナギア完全体は消滅した。


 異常なほどの殺意の塊となったグラニット。

 そのグラニットを取り込み覚醒した巨大兵器ロボギアナギア完全体。


 最強の敵だったが、ひとつに合わせた五人の俺オレンジャーズの力が上回り、この戦いに勝利した。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!





◇◇◇

新作短編を公開しました。

お時間がありましたら、宜しくお願い致します。

108回目の運命の恋〜今度の私は本気だぞ♡

https://kakuyomu.jp/works/16817330668627006163

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