第53話 俺とは一体なんなんだ

 巨大兵器ロボギアナギア完全体から少し離れた場所では、格上の二人の分身幹部ドローレアを相手に、エルフィンドールズが頑張っていた。

 俺は頑張っているエルフィンドールズの二人を見て、気合いを入れる。


 俺の周りには、俺レッド、俺ブラック、俺イエロー、俺ピンクがいる。全員、引き締まった良い表情だ。

 俺は四人の俺赤、黒、黄、桃を見て、より一層の力が湧く。


 ここまで後方で力を溜めていた五人の俺オレンジャーズ

 まずは目立たないように、ギアナギア完全体へエネルギー弾を当てることができる位置へ移動する。

 対怪人用クラスター爆弾により、ギアナギア完全体の周囲にパープルメタリックの怪人がいなくなったので、行動が容易になった。

 これならいける。


 エルフィンドールズとの特訓により、発射できるようになったエネルギー弾。少し距離がある位置からでも攻撃できるので、こんなときありがたい。


 五人の俺オレンジャーズはギアナギア完全体へ向けて、全方位からエネルギー弾を発射する。特訓により習得した羽根を出す技と組み合わせて、スピードアップしての移動攻撃。


 そして、エネルギー弾を全方位から放つことには、意味がある。それは戦車大隊の攻撃を見ているときに、俺ブラックが気がついたことを確認するため。


 五人の俺オレンジャーズが放ったエネルギー弾のひとつが、ギアナギア完全体の左胸の辺りに命中すると。


『痛ってぇな。チマチマとウゼェッッ!』


 やはりだ。

 左胸の辺りに命中しときだけ、グラニットが『痛い』と言う。

 グラニットは素直なお馬鹿さんなので、駆け引きではないだろう。

 ギアナギア完全体の弱点は、左胸ということで間違いない。


『ウッゼェェェェェッッ! さっさと死ねやッッ!』


 ギアナギア完全体も五人の俺オレンジャーズへ向けて、エネルギー弾を発射してくる。

 ただし、その威力は五人の俺オレンジャーズものとは桁違い。

 誰かに直撃してしまったら、一撃でリタイアしてしまうだろう。

 このままエネルギー弾の応酬を続けることは、得策ではない。


 その上、グラニットがイライラして、ギアナギア完全体から受ける圧力が上がってきている。

 これ以上、キレさせて、さらにパワーアップされると厄介だ。


 ここで五人の俺オレンジャーズのリーダーになった俺レッドから指示が出る。


「このままではヤバイですね。俺グリーンさんに力を集める技で決めましょう」


 俺に力を集約して一気に解放する技は、五人の俺オレンジャーズが持つ攻撃オプションの中で、最大の威力がある。

 これでしかギアナギア完全体を倒すことはできないだろう。


 ここは俺が覚悟を決めて、やるしかない。

 俺は答える。


「ですね。やってやりますよ」


 きっとできる。

 俺は自分の持つ能力を信じるだけだ。


 俺レッド。

 俺ブラック。

 俺イエロー。

 俺ピンク。


 それぞれから力をもらう。


 俺は四人の俺赤、黒、黄、桃からもらった力で、羽根を出して飛翔する。

 続けざまギアナギア完全体の左胸を目掛けて、渾身のパンチを繰り出した。


 ドッガァァァッッ!!!


 ありったけの力を込めた俺のパンチ。

 手ごたえありだ。


 ビキッビキビキッ!


 ギアナギア完全体の分厚い装甲にヒビが入る。

 今までどんな攻撃も跳ね返してきたギアナギア完全体に、初のダメージを与えることに成功した。


『ぐおおおお、痛えぇぇぇぇぇぇッッ!! クソがぁぁぁぁぁぁッッ!!』


 やったか!?


 俺のパンチにより、ギアナギア完全体であるグラニットが辛そうだ。

 ギアナギア完全体がヨロヨロと後退する。

 だが、それだけだった。ギアナギアを倒すまでには至らない。


 さらに少しの時間が経っただけで、ギアナギア完全体のダメージが完全に回復してしまう。


 その上、俺のパンチを食らい、グラニットの五人の俺オレンジャーズに対する殺意が増した。

 それと共にギアナギア完全体から受ける圧力が増す。


『この下等種がぁぁぁぁぁぁッッ! ぶっ殺す!!!』


 キレたグラニットにより、パワーアップしたギアナギア完全体が周囲にエネルギー弾を発射しまくる。

 猛烈に暴れるギアナギア完全体。もはや近くにいることすら困難だ。


 五人の俺オレンジャーズはエネルギー弾をギリギリでかわしながら、二度目の攻撃チャンスを窺った。

 しばらくして、再びチャンスがやってきた。


「俺グリーンさん、今です! もう一度、行きましょう!」


 俺がやるしか、手立てはない。

 俺レッドに促されて、もう一度、俺に四人の俺赤、黒、黄、桃の力を集約する。


 四人の俺赤、黒、黄、桃からの力を精一杯に集約した俺は、再び飛翔して、左胸を目掛けてパンチを繰り出す。


 ドッガァァァッッ!


 俺は再びギアナギア完全体の左胸に渾身のパンチを命中させた。

 しかし、ギアナギア完全体は倒れない。またダメだ。


『痛ってぇぇぇえッ! 下等種のクソがぁぁぁぁあッ! マジでウゼェェェェッッ!! 五人組ぃぃぃいッ! さっさと死ねやぁぁぁぁぁッッ!!!』


 この攻撃により、さらに殺意の増すグラニット。ギアナギア完全体から受ける圧力が異常なほどに増していく。

 ついには、その全身から不気味な紫色のオーラのようなものを放出し始めた。あまりの殺意により力が充満し、身体中からアストラルパワーが漏れ出ているようだ。

 ますます手に負えなくなってきた。


 紫色のオーラを纏ったギアナギア完全体が、手のひらに超巨大なエネルギー弾を発生させる。


 バリッバリバリッバリッ!


 そして、グラニットが絶叫する。


『下等種ぅぅぅッッ! いい加減、消滅しろやぁぁぁぁぁッッッ!!!』


 紫色のオーラを纏ったギアナギア完全体が超巨大なエネルギー弾を発射した。


 ズガアアアアアアンッッ!!

 ドッシャァァァァッッ!!


 超巨大なエネルギー弾は、辺り一面の建設物を吹き飛ばし、その背後にある木々の生い茂った山肌まで吹き飛ばす。

 紫色のオーラを纏ったギアナギア完全体は、周囲の地形を変えるほどのパワーになってしまった。


 グラニットの殺意と狂気、それによるギアナギア完全体のパワーは尋常ではない。

 俺はギリギリのところで超巨大なエネルギー弾をかわしたが、あまりの威力を目の当たりにして、怯んでしまう。


 俺が怯んでいる間にもギアナギア完全体は、その周囲を破壊している。

 高速道路やトンネルが崩壊し、瓦礫の山が築かれていく。

 至るところで火の手があがり、辺り一帯が荒れ果てていく。


『ギャハハハハハッ! 死ね死ね死ねぇぇぇッ! 皆殺しだぁぁぁッ!』


 グラニットの殺意と狂気により、ギアナギア完全体の侵攻する勢いが増していく。暴れ狂うギアナギア完全体の前に、いつの間にか次の市街地が迫っている。

 このままでは、すぐにも市街地が消滅してしまう。


 この異常な殺意と狂気を、俺が止めなければならないのか。

 なんの特徴もない、この俺に、そんなことができるのか。

 俺とは一体なんなんだ。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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