第50話 大軍勢、現わる

 バレンタインデー翌日。

 地球はいつもと変わらぬ平和な日常を迎えることはできなかった。


 地球は星幽結社エルリンケイムの怪人軍団により襲撃された。

 今回は同時に三箇所。


 アメリカ、ボイントンキャニオン。

 インド、アルナーチャラ。

 日本、富士山麓。


 いずれも星幽結社エルリンケイムの基地が建てられていた場所だ。


 富士山麓に、星幽結社エルリンケイムの軍勢が出現したとの一報を受け、緊急出動する五人の俺オレンジャーズ


 仲間にはホワイトシュシュちゃん、対怪人SATの皆さん、自衛隊。

 それに頼もしい助っ人エルフィンドールズ。


 相対あいたいするは、今回も強力そうな怪人の大軍勢。


 その先頭は巨大兵器ロボギアナギア。

 再び巨大兵器ロボギアナギアが現れた。ただし、その形状は、以前のそれと違っていた。

 そして、喋っていた。


『ギャハハハハハッッ! 俺は不死身で天才のグラニット! そして俺は最強の巨大兵器ロボギアナ完全体! 下等種は皆殺しだぁぁぁッッ! ヒャッハァァァッッ!!』


 俺には何を言っているのか、ちょっと意味が分からなかった。

 ただ、とにかくグラニットが生きていて、とてもヤバイことだけはよく分かる。


「えっ、またグラニット!?」

「アイツ、死んでなかったのか……」

「合体したんですかね?」

「完全体ってヤバそうですね」


 五人の俺オレンジャーズは、なぜか復活してきたグラニットと巨大兵器ロボギアナギア完全体とやらに動揺した。


 巨大兵器ロボギアナギア完全体の後には、パープルメタリックに輝く怪人の大軍団が続いてくる。


 最後に、それら軍勢の後方で、指揮を取る妖艶な女性二人組。

 青紫色と赤紫色という髪色以外は、そっくりな外見の女性二人組だ。


 俺は察した。

 これはエステラちゃんに確認するまでもない。

 あの女性二人組が二人の分身幹部ドローレアだと。


 そして俺は、非常時にも関わらず、素直に思った。



 ――――えっ、美人すぎない?



 ドローレアさん、二人とも妖艶なすごい美人さんなんですけど?

 星幽結社エルリンケイムの顔面偏差値どうなってるの?

 入社試験は顔だけで選んでるのかな?

 美人すぎて顔は殴り難いんだけど、腹パンでも倒せるかな?


 俺は一瞬だけ余計なことを考えた。


 しかしだ。

 今回ばかりは二人の分身幹部ドローレアがどんな美人さんでも、俺の覚悟は揺らがない。

 二人の分身幹部ドローレアは、エステラちゃんとナタリアちゃんの笑顔を奪い、地球人を皆殺しにしようとしているようなヤツなのだ。

 倒すしかない。


 俺は覚悟を持って戦いに臨んだ。

 だが、巨大兵器ロボギアナギア完全体は強すぎた。


 二人の分身幹部ドローレアを倒すどころか、近づくことすらできなかった。


 巨大兵器ロボギアナギア完全体が大暴れする。


『ギャハハハハハッッ! 俺、つえええええええ! 皆殺しぃぃぃいいいぃいッッ! ギャハハハハハッッ!』


 グラニットが俄然、調子に乗っている。

 確かに調子に乗るだけの圧倒的な力がある。


『カスの五人組、発見んんんッッ! 死ねやぁぁぁぁッ!』

『エェスゥテェラァァァアアァッッッ!!!! ぶっ殺す!!!』


 その上、五人の俺オレンジャーズとエステラちゃんを見ると、突如としてパワーアップする。

 とても厄介なヤツだ。


 巨大兵器ロボギアナギア完全体への攻撃に集中したいが、その周囲にいるパープルメタリックの怪人軍団も相当強い。

 両者の連携攻撃により、五人の俺オレンジャーズもエルフィンドールズも苦戦する。


 この状況にこのまま戦いを続けても自軍の損害が増えるのみだと司令部が判断。

 一度、撤退して体勢を立て直すことになった。


『ギャハハハハハッッ! どうした、どうした? もう終わりかぁ? クソ雑魚下等種どもがぁ、消滅しろやぁぁッッ! ヒャッハァァァッッ!』


 結局、星幽結社エルリンケイムの軍勢に、富士山麓周辺の東部市街地を占拠されてしまう。

 さらに近郊にあった自衛隊富士駐屯地までもが壊滅した。

 あっさりと富士山東部地域が星幽結社エルリンケイムの手に落ちた。


「アイツら、強すぎる……」


 ここまで手も足も出ないとは思わず、俺は愕然とした。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じだろう。


 エルフィンドールズの二人、エステラちゃんとナタリアちゃん。

 ホワイトシュシュの二人、なずなちゃんとかすみちゃん。


 彼女たち四人は若い女の子たちなので、五人の俺オレンジャーズ以上にショックを受けている。


 五人の俺オレンジャーズ、エルフィンドールズ、ホワイトシュシュ。

 特別な力を持ってはいたが、所詮は素人に毛が生えた程度の戦歴なので、必要以上に動揺してしまう。


 しかし、対怪人SATや自衛隊の皆さんは違った。

 国を守るという覚悟、敵を殲滅するとう決意、それらは微塵も揺らいでいなかった。


 俺はその姿を見て勇気づけられる。


 対怪人SATと自衛隊は、前回の戦闘を踏まえて様々な状況を想定し、防衛作戦を考えていた。


「オレンジャーズ、ホワイトシュシュ、エルフィンドールズさん。今から怪人殲滅作戦のブリーフィングを行う。参加してくれ」



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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