第48話 幹部と博士と新兵器

 星幽結社エルリンケイムの研究所。

 研究所で最高責任者のラゾワール博士のところへ青紫色の髪をしたドローレアが再びやってきた。


 ラゾワール博士に、地球侵略へ向けての新たな戦闘団を準備するよう依頼をするためだ。さらにドローレアは、巨大兵器ロボギアナギアが弱すぎるとクレームをつける気でいた。


 ラゾワール博士を見つけたドローレアがさっそく文句を言い始める。


「ラゾワール博士! ギアナギア弱すぎじゃないかしら? 下等種に負けるなんて開発者として恥ずかしくないの?」


 ラゾワール博士は、ドローレアの言葉など気にせず返事をする。


「おお、やっと来よったか、ドローレア。今日もキレまくっておるようじゃな」

「は? キレてないわよ。私をキレさせたら大したものよ」


「ん、そうかね。まあそれはどうでもいいのじゃ。これを見るがよい」


 ラゾワール博士が格納庫へドローレアを案内する。

 ドローレアが案内された先、その格納庫にはパープルメタリックに輝く巨大兵器ロボが立っていた。

 ドローレアは、その巨大兵器ロボを見て呟く。


「また巨大兵器ロボギアナギア? ギアナギアは弱いから無駄……いや、これは以前とは見た目も威圧感も違うような……?」


 ドローレアの眼前に立つ巨大兵器ロボギアナギアは、以前のずんぐりした体型より少しスリムになり、強大な威圧感を発していた。

 ドローレアの呟きを聞き、ラゾワール博士が満足気な表情で発言する。


「そうじゃ。これは巨大兵器ロボギアナギア完全体なのじゃ」

「巨大兵器ロボギアナギア完全体!?」


 その巨大兵器ロボギアナギア完全体から声がする。


『ドローレア様、グラニットであります。ギャハハハハハッッ!』


 巨大兵器ロボギアナギア完全体から聞こえる声は、グラニットのものだった。


「その下品な笑い方と声は間違いなくグラニット! 生きていたの!? でも声だけ……? 姿を見せなさい!」


 ドローレアは驚きながらも、グラニットに姿を見せるよう命令した。


『ドローレア様、俺は目の前にいますよ。俺は不死身! 不死身の天才グラニット、そしてギアナギア完全体! ギャハハハハハッ!』


 ドローレアは、巨大兵器ロボギアナギア完全体から聞こえてくるグラニットの発言に困惑する。

 困惑しているドローレアの様子を見て、ラゾワール博士が補足する。


「うむ、グラニット君が何を言っておるか分からないと思うので補足するが、グラニット君はギアナギア完全体の素材となったのじゃ。今はギアナギアと一体化している。これはワシの想定していた通りなのじゃ。まあ誰にも言ってなかったがのう」

「は? グラニットとギアナギアが一体化? 何を言ってるの? どういうこと?」


「まあ落ち着いて聞くがよい。前回のギアナギアじゃが、仮にコアが破壊されるほどの攻撃を受けた場合、その時点でギアナギアの負けは確定じゃ」

「まあ、それはそうでしょうね」


「そこでじゃ、ワシは、もしそのような事態になった場合、その膨大なエネルギーを、ギアナギアと搭乗者を粒子化させるエネルギーに転用するよう仕組んでいたのじゃ」

「……あなた、勝手にそんなことをしていたの? それで?」


「でじゃ、その粒子化したギアナギアとグラニット君を再生するつもりだったわけじゃが、再生時に二つを一体化させたのじゃ。計算上ではギアナギアの真の姿、ギアナギア完全体が完成するはずじゃったのでな。まあ失敗する可能性もあったのじゃが、成功して良かったのじゃ」

「は? じゃあ最初からグラニットを実験台として犠牲にするつもりだったわけ?」


「犠牲? ワシにとっては実験用の素材じゃが、犠牲と言ってもいいのじゃ」


 ラゾワール博士は、味方であるはずの搭乗者グラニットを素材として考えていた。

 勝手に素材にされたグラニットではあったが、グラニットは元気いっぱいだった。


『ギャハハハハハッッ! 俺、でけえええええ! 俺、つえぇぇぇぇぇぇ! これならゴルゴス様にすら勝てそうな気がするぅぅぅッ! ヒャッハァッッ! エステラァァァァ、ぶっ殺してぇぇぇぇぇ! ムカつく五人組もぶっ殺してぇぇぇぇぇぇッッ! ギャハハハハハッッ!』


 大きくて強くなったグラニットの殺意とテンションは最高潮だった。

 グラニットの発言を聞いたラゾワール博士とドローレアの会話が続く。


「そして幸いなことに、グラニット君は自分が素材になったとも犠牲になったとも思ってはおらん。パワーアップしたと喜んでくれておるのじゃ」

「グラニットが超のつくバカ、鋼のメンタルで良かったわね」


「うむ、グラニット君は最高の素材じゃった。グラニット君と一体化した巨大兵器ロボギアナギア完全体、そのパワーはグラニット君の殺意に応じて上がるのじゃ」

「な!? そうなの? そうだとすると……」


「そうじゃ、今のグラニット君が抱いている下等種への殺意は測りしれん。その凄まじい殺意こそがギアナギア完全体のパワーになる。それこそがギアナギアが目指した真の姿であり、真の力というわけなのじゃ」


 巨大兵器ロボギアナギアは、殺意の塊であるグラニットを得て覚醒した。


「勝手にグラニットを素材にしてそんなものを……。ラゾワール博士、あなた、やっぱりイカれてるわね。でも最高にイカしてるわ。まさしく下等種殺戮マシーンじゃない。ふふ、ふふふふふっ」


「喜んでもらえたようじゃな。お主のためにパープルメタリックの戦闘員など色々と用意しておるので、もう少し待つのじゃ。最初から次が本番のつもりなのじゃ。グフ、グフフフフフフッ、楽しみじゃのう」



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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