第42話 五人の俺と決戦の行方

 ついに巨大兵器ロボギアナギアの膝が地面に着いた。

 あのギアナギアが膝を折る。


 ギアナギアの両足は、ボロボロに傷ついている。

 あれならしばらく立ち上がることはできないだろう。


 それを見てとったエステラちゃんが最初に動いた。

 エステラちゃんがギアナギアの正面に立つ。


 正面に立ったエステラちゃん。

 一体、何をするのかと思えば、ギアナギアへ搭乗しているグラニットへ勧告する。


「グラニット! もう降参しなさい! そうでなければ、私はオレンジャーズさんと一緒にあなたを倒します! 私は星幽結社エルリンケイムに、地球の人々を皆殺しになんかさせません」


 エステラちゃん、よく言った。

 でも今、立っている場所は、どう見ても危ないだろう。


「エステラちゃん! そこは危ないって。少し下がって」

「いえ、大丈夫です。私はこんな巨大兵器ポンコツに負けませんから!」


 エステラちゃん、すごい自信だ。

 しかも素で煽ってるし。


『なんだとぉぉぉぉぉ、このクソ雑魚エステラァァァァァァァァ! 調子に乗るなぁぁぁぁっ!!!!」


 ギアナギアが巨大な拳をエステラちゃんに向かって振り下ろす。


 ズガァァァァッッンンン!!


 振り下ろされたギアナギアの巨大な拳により、富士山麓に爆音が鳴り響く。舞い上がった雪煙により周囲が真っ白になり、なにも見えなってしまう。


「あああああっ! エステラちゃんが!!!」


 巨大な拳により、エステラちゃんが押し潰されてしまったと思って、俺は焦りまくった。

 しかし、実際は違った。


 なんと、エステラちゃんは巨大な拳を受け止めていた。

 エステラちゃんは白銀に輝き、背中の羽根がいつもより大きく、そして力強くなっていた。


 そのエステラちゃんがナタリアちゃんを呼ぶ。


「ナタリアちゃん! ギアナギアの腕を引っ張るのを手伝って!」


 ナタリアちゃんはエステラちゃんの力を知っているのか、少しも動じていなかった。


「OK! 了解だよっ、エステラちゃん。エルフィンドールズの力を見せちゃおう!」


 ナタリアちゃんが頼もしい返事をする。


 エステラちゃんは、掴んでいるギアナギアの腕を力強く引っ張る。

 ナタリアちゃんもエステラちゃんと一緒に力を合わせる。

 異星人のエステラちゃんとナタリアちゃんが地球のために頑張っている。


 ギアナギアの巨大な腕がメリメリと音を立てる。

 二人の可愛いらしい少女に、ギアナギアの腕が前方へと引きずられていく。


 ズシャァァァァ!


 エステラちゃんとナタリアちゃんに、腕を引っ張られてバランスを崩したギアナギア。

 ついには両膝と両肘が雪の積もる地面につく。


 下等種の惑星だとバカにしていた地球上で、グラニットの駆るギアナギアが屈辱の四つん這い。

 四つん這いになったギアナギアの中からグラニットの絶叫が聞こえる。


『エステラァァァァァァッッ! この前の仕返しのつもりかぁぁぁぁぁ、クソビッチがぁぁぁぁぁぁ!!!』


 エステラちゃんとナタリアちゃんは、口の悪いグラニットの叫びをスルーして、必殺の熱殺蜂球でギアナギアの腕を黒焦げにする。


 今日のエステラちゃんとナタリアちゃん。

 ちょっと引くほど強いのだが。


 そうして両腕と両足がボロボロになったギアナギア。

 もう動くことなどできないだろう。


「はぁはぁ……やりました。あとはオレンジャーズさん、コアを破壊して下さい」

「了解だよ、エステラちゃん! ありがとう、エルフィンドールズ!」


 ギアナギアへのトドメをエステラちゃんに託された。


 みんなの頑張りによって、地面に這いつくばったギアナギア。

 その背中に飛び乗る五人の俺オレンジャーズ

 五人の俺オレンジャーズ、全員が揃ってギアナギアの背中に立つ。


 力が漲る。四人の俺赤、黒、黄、桃も同じだろう。


 五人の俺オレンジャーズは、全員の力で分厚い装甲をぶん殴り、ぶち破る。

 ぶち破った装甲の下には、虹色に輝く謎の物体。

 これがコアに違いない。


「これがコア! ぶっ壊しましょう!」


 俺レッド、俺ブラック、俺イエロー、俺ピンク。

 そして俺、俺グリーン。


 五人の俺オレンジャーズは、なんの合図もなく同時にコアへ向かってパンチを繰り出す。


 ズガァァァァンンンッッ!!!


 完全に同じタイミング。


 メキャメキャメキャッ!


 同時に五発、五人の俺オレンジャーズから渾身のパンチを受けたギアナギアのコア。

 コアは回復する間もなく砕け散る。


 コアが砕け散ったあと、そこに謎の黒い渦が発生した。

 その発生した黒い渦に、キラキラと粒子化したギアナギアが吸い込まれていく。

 中にいたグラニットも一緒に粒子化して、黒い渦の中へと消えていった。


 巨大兵器ロボギアナギアは消滅した。

 戦車大隊や市街地に被害が出てしまったが、それでも何とか巨大兵器ロボギアナギアの侵攻を食い止めた。


「いいぞ、オレンジャーズ!」


 周囲にいた対怪人SATや自衛隊の皆さんから、歓声が上がる。

 権藤部隊長からも声がかかる。


「良くやったな、オレンジャーズ。状況終了だ!」


 太陽が沈みかけ、冬茜の富士山麓。

 ついに巨大兵器ロボギアナギアvs 五人の俺オレンジャーズの戦いが決着した。


 ホッとした俺は、エステラちゃんの顔を見る。


 それに気づいたエステラちゃんがニコッと笑う。

 しゃがみ込んで疲れた様子だけれど、エステラちゃんが笑っている。

 笑顔のエステラちゃんが戻ってきた。


 そして、俺は思った。



 ――――やっぱり可愛い。



 油断している俺は危うくキュン死しそうになったが、今回はグッと堪えた。


 その後、エステラちゃんから星幽結社エルリンケイムで起こったことを聞いた。


 星幽結社エルリンケイムが乗っ取られて、悪の組織に変わってしまったことを。

 地球に対して、最大の敵になるであろう二人の分身幹部ドローレアの存在を。


 これで五人の俺オレンジャーズの戦いが終わったわけではない。


 エステラちゃんとナタリアちゃんの笑顔を奪った張本人。

 二人の分身幹部ドローレア、五人の俺オレンジャーズが戦うべき次の相手だ。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!






 ◇◇◇


 第二章の完結となります。

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