第41話 地球人の意地

 星幽結社エルリンケイム内の複数箇所に設置されている転移装置。

 そのうちの一つ、小型の転移装置は警備が薄く、エネルギーが充填され、すぐに地球へ転移できる状態になっていた。


 お母さんの部屋から出た私は、それを発見する。


「ナタリアちゃん、これ見て! これなら今すぐに地球へ行けるよ!」

「本当だ! そんなことがあるんだ! やったね、エステラちゃん!」


 私はナタリアちゃんと一緒に地球へと転移した―――。



 ◇◇◇



 前日までの大雪により白く染まる富士山麓。

 雪飛沫を舞い上げて、巨大兵器ロボギアナギアと五人の俺オレンジャーズが激突する。

 雪中決戦だ。


 「喰らえっ!」


 俺は全力でパンチを繰り出す。


 ドガアアアッ!


 スピードもパワーもアップした俺はギアナギアを翻弄する。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同様に、ギアナギアをボコボコにする。


 ドガアアア!

 バキィ!


 五人の俺オレンジャーズの総攻撃だ。

 それによりギアナギアが傷ついていく。


 コツコツとギアナギアへ傷をつけて、ダメージを与える。

 しかし、しばらくすると、その傷が修復していく。


『ギャハハハハハッッ! 無駄無駄無駄! その程度の攻撃では、このギアナギアは倒されねぇッッ!』


 コイツは一体なんなんだ!?

 このまま戦っていて勝てるのか!?


 戦況は思わしくない。


 だが、そうだとしても、この戦いは絶対に負けられない。

 前を向き諦めずに戦うしかない。

 道はきっと開ける、希望はきっとある。

 そう信じて俺は戦う、他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じだろう。


 五人の俺オレンジャーズは懸命に戦い続ける。

 戦い続けたその先に希望の光が現れた。

 



 ――――オレンジャーズさん!




 最初、俺は幻聴が聞こえたのかと思った。

 しかし、再び声が聞こえる。


「オレンジャーズさん!」


 それは優しくて可愛いらしいエステラちゃんの声。

 声のするを向くと、太陽を背に、天使のように輝く二人の少女がそこにいた。


「エステラちゃん! それにナタリアちゃんも!」

「オレンジャーズさん! 大丈夫ですか!? あと……こんなことになって、ごめんなさい」


「うん、俺は大丈夫。それに今、起きてることはエステラちゃんのせいじゃないでしょ」


 そう、こんな酷いことをエステラちゃんが望んだはずはない。

 色々と聞きたいことはあるけれど、その前にギアナギアを倒さなくては。


「何があったのかも聞きたいけど、その前にアイツを倒したい! 協力して欲しい!」

「はい、そのために来ました!」


 やっぱり俺が信じていたエステラちゃんだ。

 星幽結社エルリンケイムに所属しているエステラちゃんならギアナギアの倒し方を知ってるだろうか。


「さっきから回復されて倒せないんだけど、エステラちゃんはアイツの弱点とか知ってる?」

「はい、知ってます。ギアナギアは首の後ろ、うなじの辺りにあるコアが弱点です!」


 失礼ながらエステラちゃんは兵器に疎そうなので、知らなくても仕方ないかなと思ったのだが、エステラちゃんは弱点を知っていた。


「おおお! そうなんだ」

「はい! カカリーナさんが『独り言だけど』って言いながら、教えてくれたんです!」


 技術班長で銀髪セクシー美人のカカリーナさん!

 さすが様々なフェチを満足させるエルフィンドールズのコスチュームを考えた一人、俺の崇拝するカカリーナさんだ。


 しかし、攻撃目標であるギアナギアのうなじまでは、高さ十五メートル以上はありそうだ。

 どう見ても俺の打撃は届かない。

 しかも分厚い装甲で守られている。


 分厚い装甲を破り、コアを破壊するためには、ギアナギアを寝転がすしかないだろう。

 寝転がしたところで、弱点であるうなじへ直接パンチを叩き込む。

 これしかない。


 しかし問題は、どうやってギアナギアを寝転がすかだ。

 ちょっとやそっとの攻撃で、ギアナギアを寝転がすことはできないだろう。


 そのとき、インカムで俺とエステラちゃんの会話を聞いていた権藤部隊長から命令がくる。


「オレンジャーズは、少し下がって力を溜めていろ。先ほど戦闘体制に入った自衛隊一個大隊と対怪人SATが連携して、今からギアナギアにありったけのアストラル砲弾を叩き込む。お前たちがアストラル砲弾を作り過ぎたせいで、まだ大量に余っているからな。異次元から来たお客さんへ、在庫一掃セールの開催だ!」


 戦車大隊を中心とした自衛隊によるアストラル砲弾の一斉射撃が始まる。


 ギアナギアはその攻撃を受けるが、先ほどと同様にエネルギー弾で反撃に出る。

 ギアナギアの発射したエネルギー弾が戦車大隊へ一直線に向かっていく。


 俺は、このギアナギアからのエネルギー弾による反撃を心配していた。

 再び戦車大隊が犠牲になるのかと思った、そのときだった。


 戦車大隊の前方に大きな白い光の盾が出現し、エネルギー弾から戦車大隊をガードする。

 それと同時にインカムから、明るい声が聞こえてくる。

 声の主は、美少女ペア☆ホワイトシュシュのなずなちゃんとかすみちゃん。


「ここは私たちが守ります!」

「攻撃は苦手だけど、守るのは得意みたいです!」


 大きな白い光の盾は、復活した美少女ペア☆ホワイトシュシュちゃんたちだった。

 守りたい気持ちの強い二人のことだ。

 五人の俺オレンジャーズと同様に新たな力を得たのだろう。


 ホワイトシュシュちゃんたちがギアナギアのエネルギー弾から戦車大隊を守り続ける。

 白い光の盾に守られた戦車大隊が圧倒的な火力で120mmアストラル砲弾を撃ち込み続ける。

 さらに物陰から隙を突いて、対怪人SATが22mmアストラル砲弾を装填したライフルグレネードを膝関節に撃ち込んでいく。


 三者が連携してアストラル砲弾をギアナギアに叩き込む。

 その執拗な攻撃に、ギアナギアを駆るグラニットが絶叫する。


『ウゼェェェェェェェェェェッッ! このクソ雑魚下等種どもがぁぁぁぁぁ!』


 グラニットの叫びも虚しく、三者の攻撃は続く。

 そして、いよいよその効果が現れた。


 ついにギアナギアの膝がボロボロなり、折れ曲がる。


 ガクンッ!!!

 ドッシャァァァァッッ!!!


 二人の分身幹部ドローレア、その右腕であるグラニットから、クソ雑魚下等種と散々バカにされた地球人。

 だが、その地球人の猛攻により、巨大兵器ロボギアナギアの膝が地面に着いた。


 それを見届けた権藤部隊長から、五人の俺オレンジャーズに最後の命令がくる。


「在庫一掃セールにお客さんは満足したようだ! あとはオレンジャーズ、お前たちに任せたぞ!」



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る