第37話 巨大ロボ、現わる

 五人の俺オレンジャーズがアストラル砲弾作り職人になった頃、それは起こった。


 突如として、エルリンケイム基地が白いモヤに包まれる。

 その白いモヤの中で、稲妻が煌めき、轟音が鳴り響く。


 しばらくして白いモヤが晴れると、エルリンケイム基地の特徴的な開閉式の天井が開いていた。

 そして、中には異形の存在が直立していた。


 異形の存在は、身長二十メートルぐらいだろうか。

 ずんぐりとした人型をしている。


 人型ではあるが、昆虫をイメージさせる頭部。

 パープルメタリックを基調とした装甲。

 巨大な怪人のようにも見えるが、基本的には機械メカのようだ。

 胸の上部に操縦士の姿が見える。


 そして、異形の存在は、エルリンケイム基地から東部の市街地へ向けて、ゆっくりと進撃を開始した。

 さらにその異形の存在の前方には、怪人の大軍勢が先駆けしていた。



 ◇◇◇



 富士山麓にある警視庁公安機動特別部隊の本部にて。

 未知の敵が出現した状況を受けて、権藤部隊長から命令が発せられる。


「オレンジャーズ、ホワイトシュシュ、対怪人SATに告ぐ。星幽結社エルリンケイム基地から出現した敵を撃退しろ。今回は自衛隊も戦闘に加わる。各員、最善を尽くせ!」


「了解です。権藤部隊長!」


 五人の俺オレンジャーズ、ホワイトシュシュ、対怪人SATが緊急出動する。


 すぐに現場に到着した五人の俺オレンジャーズ

 そこで俺は、迫ってくる巨大な敵を間近で見る。


 俺は敵を見て、覚悟ガンギマリではあるのだが、素直にこう思った。


 今度のコイツは、人間が戦うサイズではないでしょ?

 今までの怪人は、人間サイズだったじゃん。

 さっきモニターでチラッと見たときは、周りに比較物がなくて、サイズ感が分からなかったんだよね。ちょっとデカすぎじゃない?

 これに一体どうやって勝つの?

 俺、素手だよ?


 そんなことを思いながら眺めていると、異形の存在の中に怪人が乗っていることに気がついた。


 俺は、中にいる怪人を見て考えた。

 まずは敵に対して名乗りをあげて、そのあと対話ができないかと。


 はじめに言葉ありき。まずは対話だ。

 エルフィンドールズのときには、それで上手くいった。

 今回はあまり期待できそうにないが、少しの可能性にかけてみたい。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じことを考えており、すぐさま権藤部隊長に話を通す。


「名乗り口上いきますよ!」


 俺レッドが最初に声をあげてくれる。


「ですね。さっそくいきましょう」


 他の四人の俺緑、黒、黄、桃も同意する。

 五人の俺オレンジャーズは、市街地へ向かう異形の存在に乗る怪人に向けて、宣言をする。


「灼熱の炎! オレレッド!」

「新緑の風! オレグリーン!」

「漆黒の闇! オレブラック!」

きらめく稲妻! オレイエロー!」

「癒しの光! ワタシピンク!」


「五人揃って分身戦隊オレンジャーズ! あなたは何者で何をしに来たのですか?」


 異形の存在の動きが止まる。

 続けて、搭乗者が反応した。


『なんだ、お前ら? 下等種のくせに名乗るとは良い度胸だ。オレは星幽結社エルリンケイム、分身幹部ドローレア様の右腕グラニット。お前らは、この巨大兵器ロボギアナギアで皆殺し、オレらのエネルギーにしてやんよ。ギャハハハハハッッ!』


 なるほど、乗り物は巨大兵器ロボギアナギア、搭乗者はグラニットさんというのか。

 質問に対してきちんと返事をしてきたところは高評価だが、内容は全くダメだ。

 話し合いができそうな気がしない。

 エステラちゃんのときとは、まるで違う。

 ずいぶんとガラが悪いけれど、本当にエステラちゃんと同じ結社の人なのだろうか?

 星幽結社エルリンケイムには入社試験がないのかな?


 とにかく地球人を皆殺しにするとか言っているし、コイツは絶対にヤバい。

 だいたい下品な笑い方が聞いていて、ムカつく。

 エステラちゃんとナタリアちゃんの笑顔は見たいけど、コイツの下品な笑い声はもう聞きたくない。


「あの下品な笑い方で皆殺しにするとか、ムカつくな。黙らせたい」


 俺レッドが呟いた。

 やはり他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じ気持ちなのだろう。


「よし、やってやりましょう!

「あんなヤツの好きにはさせない!」

「ぶっ飛ばしましょう!」

「気合いです!」

「みんなを守りましょう!」


 五人の俺オレンジャーズは気合いを入れて全力で巨大兵器ロボギアナギアへ攻撃する。

 しかし、パワーの差は歴然だった。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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