第36話 地味な作業と俺の決意
先日の怪人軍団は、なんとか撃退することができた。
しかし、次はどうなるか分からない。
そのため、今の俺は、次の怪人による襲撃に備えて頑張っている。
一体、何を頑張っているかというと、アストラル砲弾作りだ。
俺はせっせと砲弾の弾頭部分に、アストラルエナジーを注入している。
今までは、星幽結社エルリンケイムからもらった触媒を使った装置で、弾頭にアストラルエナジーを注入していた。
しかし、触媒の絶対数が少ないため、アストラル砲弾の生産には限界があった。
そのせいで先日の怪人軍団との戦いでは攻撃力が不足した。
そこで
ということで
一見、戦隊ヒーローに見えない仕事ではあるのだが、これも大事な仕事だろう。
「これ、地味な作業ですね」
「ですね。でも俺、こういうの嫌いじゃないですよ」
「あ、やっぱりそう思ってました? 怪人と戦うより俺っぽい仕事ですよね」
「室内での作業は落ち着きますね」
「ただ、カッコイイ対怪人用スーツを着て、これっていうのがね」
「でも、この格好の方が、注入しやすいんですよね」
スタイリッシュな対怪人用スーツを着用しての砲弾作り。
絵的には、かなりシュールだ。
そして、このアストラル砲弾作りには、美少女ペア☆ホワイトシュシュの二人、なずなちゃんとかすみちゃんも参加している。
卒業間近の高校3年生ということで、休みが多いらしく、よく手伝いに来てくれる。
本来なら、遊びに行きたいだろうに、真面目な娘たちだ。
なずなちゃんとかすみちゃんは、魔法少女のような姿で、砲弾作りを行なっている。
見た目的には、ヒーロー戦隊と魔法少女ということで派手ではあるが、椅子に座って、作業机の上に置かれた砲弾へアストラルエナジーを注入するという地味な作業に精を出した。
せっせと手を動かしながら、なずなちゃんとかすみちゃんが話かけてくる。
「オレンジャーズさんは、アストラル体を五分割されたって、本当ですかっ?」
「えっ、うん。本当だけど……」
「すごーいっ!」
「えっ、そ、そうかな?」
「オレンジャーズさんの作っている砲弾、大きいですね?」
「これは戦車用の120mm砲弾だからね」
「すごーいっ!」
「えっ、そ、そうかな?」
なんだか知らないが、ニコニコしてよく褒めてくれるので、
二人とも、かなりの年上キラーっぷりを発揮している。
それにしても、なずなちゃんとかすみちゃんが来てくれるようになって、本当に良かった。
いつも元気でキラキラしている、なずなちゃんとかすみちゃん。ヒロインの素質しかない。そんな二人なので、自然と場を明るくしてくれる。
もし二人がいなければ、部隊内の空気はどんよりと、暗くなっていただろう。
こうして俺は、ほのぼのしながらも、忙しく頑張っていた。
というか、忙しくしていないと、色々なことが心配になって仕方がない。
ゴールドメタリックの怪人を中心とした怪人軍団。
そんなものが日本を襲ってくるとは、今までの星幽結社エルリンケイムからは考えられない。
一体、星幽結社エルリンケイムに何が起こったのか。
結局、姿を見せなかったエステラちゃんとナタリアちゃん。
笑顔を全く見せなかったクリスマスのとき以来、その姿を見せていない。二人は今、どうしているのか。
俺は心配で仕方がない。
前回の襲撃からしばらく経つが、今のところ星幽結社エルリンケイムから新たな侵攻はない。
ただ、日本国内の情勢は、徐々に星幽結社エルリンケイムが悪の組織だという論調になっていく。
未知への恐怖に怯えて、人々から笑顔が消えていく。
『星幽結社エルリンケイムは悪の組織。すぐに倒すべきだ』
『エステラとナタリアは嘘つきだ』
『あの笑顔に騙された。さっさと排除するしかない』
俺も弱い人間だから、理解の及ばない未知の存在を恐れて、排除したい気持ちはよく分かる。
自分たちが敵わない強い相手に対して、恐れる気持ちを持つのは当然だろう。
だが、俺は信じている。
エステラちゃんとナタリアちゃんの笑顔が嘘ではなかったことを。
俺自身に宿っているまだ見ぬ強い力があることを。
たとえ次にどんな強敵が現れようとも
そして、日本の皆さん、それにエステラちゃんとナタリアちゃんの笑顔を取り戻す。
他の
そんな決意を胸に秘めつつ、今の俺にできること、地味な砲弾作りに勤んだ。
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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