第35話 幹部と博士と巨大ロボ

 星幽結社エルリンケイムの本拠地。

 二人の分身幹部ドローレアが総統室に陣取っていた。

 新総統となったゴルゴスが銀河の中心へ遠征に行っている間、二人の分身幹部ドローレアが本拠地を取り仕切ることになったためだ。


 現在の地球上には、星幽結社エルリンケイムの拠点が三ヶ所に存在している。

 アメリカ、ボイントンキャニオン。

 インド、アルナーチャラ。

 日本、富士山麓。


 二人の分身幹部ドローレアは、その中で日本へ戦闘団を送り込んだ。


 地球、その中の日本が担当だったエステラ。

 そのエステラに、五人の俺オレンジャーズをはじめとする見知った地球人が大量に死んだと教えて、絶望させるためだ。


 地球へ送り込んだ戦闘団の状況を確認しながら、青紫色の髪のドローレアが赤紫色の髪のドローレアへ話しかける。


「下等種が慌てふためいている姿を見るのは楽しいわぁ」

「あら、でも意外に頑張るわね。すぐ死んでも面白くはないから良いけれど」


 二人の分身幹部ドローレアは、地球での戦闘を見て楽しんでいた。

 しかし、地球へ送り込んだ怪人軍団は、五人の俺オレンジャーズたちによって、全て倒される。


「あら? 下等種がゴールド戦闘団を倒した?」

「ゴールド戦闘団を倒すなんて信じられない。下等種なのに」


 二人の分身幹部ドローレアは、下等種と考えている地球人が多少パワーアップしようと、気にもとめていなかった。


「小娘に下等種が大量に死んだことを教えて、絶望させようと思ったのに」

「残念ね。これはもっと強い戦闘員が必要かしらね」


「そうね。でもしばらくはアデリナ派の監視も必要だし、少し面倒ね」

「それにゴルゴス様への補給部隊と物資も手配しないと」


 二人の分身幹部ドローレアは、最終的に自分たちが下等種に負けることなど、万が一にもあり得ないと思っていた。

 ただ、戦力には限りがあるため、多少のやりくりが必要だと考えた。


「それなら地球には巨大兵器ロボギアナギアを出撃させようかしら」

「ふふ、私も今、それが良いと思ったわ」


 巨大兵器ロボギアナギアは、現在ラゾワール博士が開発中の惑星を侵略するための兵器だ。


「ギアナギアが地球人を虐殺するところを、あの小娘にも見せつけたいわね」

「そしたらギアナギア出撃時までに、小娘を独居房から出さないといけないわねぇ」


 エステラは、地球での行為が星幽結社エルリンケイムの利益に反するとして、二人の分身幹部ドローレアから私的な懲罰を受けていた。

 現在のエステラは独居房に入れられて、ナタリアは自室で謹慎中だ。


「それであの小娘が、のこのこと下等種を助けに行って、一緒に死ぬところを見たいわねぇ」

「あの小娘、かなり地球に入れ込んでいたから、きっと助けに行くわよ。なんの力もないくせに」


 二人の分身幹部ドローレアといえども、結社内でエステラを殺してしまっては問題がある。そのため、何らかの手段を講じて地球へ行かせ、そこで殺す気でいた。


「自ら希望を持って助けに行って、絶望して死ぬとか最高ね。うふふ」

「そうね。でもあの小娘はバカだから、情報を流してあげないといけないわねぇ」


「それに警備を緩めて、地球へ行き易くしてあげないと」

「世話が焼ける小娘ねぇ。カスだから仕方ないけど」


 二人の分身幹部ドローレアは、エステラを散々にバカにする。


「小娘が地球で死ぬところを見て、アデリナが自害したら面白いわね」

「本当、楽しみね。あの母娘が苦しんで死ぬところを見たいわぁ」


「ま、アデリナ程度が死んでも私たちのように分割されることなんてないでしょうけど」

「そうね。あの程度のカスではね」


 二人の分身幹部ドローレアにとって、もっとも憎いのは、あくまでもアデリナだ。アデリナを苦しめた上で殺したい。それだけだった。



 ◇◇◇



 星幽結社エルリンケイムの研究所。

 研究所で最高責任者のラゾワール博士のところへ青紫色の髪をしたドローレアがやってきた。

 ラゾワール博士へ巨大兵器ロボギアナギアの地球への派遣を依頼するためだ。


 ドローレアとラゾワール博士は、巨大な格納庫を一望できる高所に並ぶ。


 並んだ二人。スラっとした高身長のドローレアに対して、隣のラゾワール博士はとても小柄だ。

 ラゾワール博士が小柄というのは当然で、ラゾワール博士の見た目は幼女であった。

 中身のアストラル体は軽く百歳を超えるが、自身の実験により別の肉体に転生している。

 危険な実験だった。しかし、ラゾワール博士は、仮に失敗して死んだとしても一片の悔いなしという覚悟を持って、幼女に転生した。

『幼女になりたい』というラゾワール博士の本気が実験を成功させたと言っても過言ではない。


 ラゾワール博士は自身の命、他人の命などより、研究開発が好きだった。そんな研究開発の鬼、ラゾワール博士が巨大兵器ロボギアナギアの開発を行っている。


「ドローレアよ。急げ急げと、無茶を言うのう」

「ラゾワール博士なら大丈夫でしょう。死ぬ気でやれば」


「死ぬ気でじゃと? お主は酷いことを言うのう。まあゴルゴス様への補給物資を揃えたあと、すぐやるから少し待つのじゃ」

「はぁ、仕方ないわね。期間はどのぐらいかかるのかしら?」


「そうじゃな、一ヶ月ぐらいは欲しいかのう」

「そんなに? もっともっと死ぬ気でやればどうかしら?」


「いや、ワシが死ぬ気でやったところで、アストラルエナジーが足りないから無理じゃ」

「あらそう、まあいいわ。それなら地球からの収集量を最大にするからできるだけ早く頼むわよ」


「了解じゃ、ドローレア。まあ期待して待っておれ。完成した巨大兵器ロボギアナギアは、下等種の惑星で使うレベルではない強さの予定じゃからのう」

「ふぅん、以前、侵略した惑星で、下等種を勝手に虐殺した兵器も相当だったけれど、あれよりも強いのかしら?」


「当然なのじゃ。ゴルゴス様が新総統になって、遠慮がいらなくなったからのう。グフッ、グフフフフッ」

「あら、それは楽しみね。ふふっ、ふふふふふふっ」


 ドローレアは地球人の皆殺しを想像し愉悦した。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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