第34話 五人の俺と頼もしい仲間

 色々な心配事を抱えながら、俺は本部へ戻った。

 本部には対怪人SATの皆さんがすでに戻っていた。


 幸いなことに対怪人SATの皆さんは、軽症者が数名でただけで大きな被害はなかったようだ。

 基本はライフルグレネードでの遠距離攻撃なので、当然といえば当然だ。


 それに比べて至近距離でぶん殴る五人の俺オレンジャーズは、怪人の自爆攻撃によりボロボロだ。

 むしろ真っ黒こげになった五人の俺オレンジャーズの方がよほど心配されている。

 確かに少し休みたい。


 それから心配といえば、美少女ペア☆ホワイトシュシュさんだ。

 五人の俺オレンジャーズと同じように、至近距離で戦っていただろうから心配だ。


「お疲れ様ですっ!」


 と思ったら、ホワイトシュシュさんが元気に戻ってきた。

 多少、爆風を受けた感じはあるが、見たところは大丈夫そうだ。


 あらためてホワイトシュシュさんを間近で見る。

 そして、俺は思った。



 ――――可愛い。



 えっ、この娘たち美少女すぎじゃない?

 笑顔が眩し過ぎるんですけど?


 二人揃って透き通るような白い肌、ダークブラウンの美しい髪を白色のシュシュで束ねている。一人はポニーテール、もう一人はハーフツインテール、それぞれとても似合っている。

 二人とも正統派の美少女だ。


 それに二人の魔法少女感はなに?

 絶対に五人の俺オレンジャーズより人気でるやつじゃん。

 ステッキのようなものを持っているけど、もしかしてアレで遠距離攻撃ができるのかな。

 いいなあ、俺も欲しい。


 それより最も気になるのは、二人とも見た目がそっくりなんだけど?

 髪型以外の違いが分からない。

 もしかしてアストラル神に分割されてしまったのだろうか。

 俺と同じで可哀想に。


 俺は色々と気になり、ホワイトシュシュさんに話を聞いてみた―――。



 ◇◇◇



 白石なずなと白石かすみ。

 二人は双子の姉妹で、姉なずな、妹かすみ。

 のちに美少女ペア☆ホワイトシュシュを名乗ることになる。


 現在、なずなとかすみは高校生。

 二人とも学校一の美少女と言われる存在だった。


 なずなとかすみは、毎日二人揃って通学している。

 そんなある日のことだった。


 通学路で、なずなとかすみは、保育園児の集団とすれ違う。

 なずなとかすみ、保育園児たちは、元気に明るく挨拶をする。


「おはよー」

「おはよー」


 そんなほのぼのしたところへ、ブラック会社勤めで疲れた暴走トラックが突っ込んできた。


 ゴギャアアアアアアッッ!


 なずなとかすみは、すぐに暴走トラックが向かって来ていることに気がついた。

 二人だけなら避けることもできただろう。


 しかし、なずなとかすみは迷わず保育園児の集団を守ろうとする。

 なずなとかすみは、保育園児の集団を暴走トラックの正面から逃したものの、自身は二人とも暴走トラックに轢かれてしまう。

 そうして、保育園児の命を救い、なずなとかすみは死んでしまう……はずだった。



 ――――異次元空間にある、とある場所。


『地球で死んだあなたたち、二人とも大きくて立派なアストラル体をしていますね。それにとてもキュートで優しいアストラル体です』


 死んでしまったなずなとかすみは、アストラル体となって、アストラル神の前にいた。

 なずなとかすみは、動揺しながらもアストラル神へ話かけようとする。

 しかし、二人とも喋れない。


『キュートで優しいアストラル体のお嬢さんたち。喋れるようにして差し上げましょう』


 アストラル神は、なずなとかすみを喋れるようにした。

 積極的な姉なずながアストラル神へ質問をする。


「えっと、園児たちはみんな無事ですか?」

『はい。全員、無事ですよ』


「はぁ、良かった。でも私たちはやっぱり死んじゃったんだ。もっと生きたかったな……」

『なるほど。キュートで優しいアストラル体のお嬢さんたち。もっと生きたいのですか?』


「はい。もちろんですっ!」

『……分かりました。あなたたちのアストラル体を少し濃くした上で元の肉体に戻しましょう。あなたたちは生き返ります』


 アストラル神は、二人の少女の願いを聞き入れた。


「えっ、本当ですか!? やったぁ、嬉しいっ! ありがとうございますっ!」

『あなたたちはキュートで優しい大きな力を持っています。これからも世のため人のために、その力を役立て下さい』


「はい。分かりました! 頑張りますっ!」


 そうして、アストラル神によって同じ時空に戻った、なずなとかすみ。

 完全に同じ時空に戻ったため、なずなとかすみが一度死んだことは誰も知らない。

 なずなとかすみは、保育園児の集団を守り、暴走トラックに轢かれても傷ひとつなかった奇跡の美少女姉妹として有名になる。


 そんな二人の活躍が国立科学研究所の目に止まった。

 そして、その推薦を受けて、警視庁公安機動特別部隊に所属することになる。



 ◇◇◇



 なるほどねー。

 なずなちゃんとかすみちゃん、良い娘たちだな。

 こんなの完全に主役のヒロインじゃん。


 二人がそっくりなのは双子だからか。

 五人の俺オレンジャーズみたいに分割されたわけじゃないんだな。

 良かった、良かった。

 うん、本当に良かったと思う。


 で、アストラル神さんさぁ。

 神様なんでしょ、俺の心の声、聞いてるかなぁ。

 キュートなアストラル体とやらを優遇しすぎじゃないですかね?

 そもそもなんですかね、キュートなアストラル体って。

 よく分からないけど、キュートなら喋れるようにしてあげるのかな?

 俺のときは無視だったけど。

 その上、キュートだと濃くして元の時空に戻すとか、優遇しすぎで笑える。

 俺のときは薄められて五分割ですよ、覚えてますか?

 完全に差別じゃん。

 まあ五分割けっこう気に入ってるし、それほどまで俺の力はすごいってことだと思ってますけどね。


 俺はホワイトシュシュさんの話を聞いて、やさぐれた。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じだろう。


 アストラル神には納得がいかないところもあるが、ともあれ怪人と戦う素敵な仲間が増えたことは喜ばしい。

 今日はたまたま顔見せに来ただけで、正式に所属するのは三ヶ月先の卒業後だが、これから学校が休みの日には来てくれるとのことだ。


 なずなちゃんとかすみちゃん、二人揃って美少女ペア☆ホワイトシュシュ。

 五人の俺オレンジャーズに可愛くて頼もしい仲間が増えたのだった。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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