第32話 大ピンチ、そのとき

 富士山麓に出現した怪人軍団が市街地へ向けて進軍している。それに対抗すべく、五人の俺オレンジャーズは現場へと急行する。


 そんな五人の俺オレンジャーズのところへ、第三課から情報が入った。出現した怪人軍団の全容が分かったとのことだ。


 今回、出現した怪人軍団は、合計十個の分隊があり、それぞれの分隊のリーダーをシルバーメタリックの怪人が務めているらしい。

 各分隊のメンバーは、黒メタリックの怪人が五人ずつ。

 そして、軍団の全てを取りまとめる指揮官として、ゴールドメタリックの怪人が一人。

 総勢六十一名の怪人軍団だ。


 今までの五人の俺オレンジャーズは、一度に五人までの怪人しか戦ったことがない。

 今回は一挙に十倍以上だ。


 現在、その十個の分隊が個々に、市街地へ向けてダッシュしている。障害物の少ない富士山麓を相当な勢いで下り坂を駆け下りている。


 五人の俺オレンジャーズが現場へ到着すると、怪人軍団vs第三課対怪人SATの皆さんとの戦闘が始まっていた。

 対怪人SATの皆さんが、怪人軍団の進軍を止めるべく、新開発のアストラル砲弾を装填した22mmライフルグレネードで砲撃する。


 ドシュッ!

 ドオオオンッッ!


 ドシュッ!

 ドオオオンッッ!


 アストラル砲弾が全力で走る黒メタリックの怪人に着弾する。


「やったか!?」


 対怪人SATの皆さんは、その効果に期待する。

 しかし、ダメージを与えた様子は確認できるものの、黒メタリックの怪人を倒しきるまでには至らない。

 プロテクター付き黒メタリックの怪人は強かった。


 怪人軍団は、対怪人SATの攻撃を気にせずに、市街地へ向けて進軍する。


 そこに到着した五人の俺オレンジャーズ

 対怪人SATの皆さんが五人の俺オレンジャーズに声をかける。


「オレンジャーズ、よく来てくれた! お前たちが頼みだ!」


 アストラル砲弾は、まだ数が少なくて貴重だ。むやみに撃つことができない。ここは五人の俺オレンジャーズの出番ということだ。

 対怪人SATの皆さんからの期待を一身に感じる。


「オレンジャーズに対する期待感、久しぶりですね」

「そうですね。初戦のときもこんな感じでしたね」


 俺は俺レッドと言葉をかわす。

 俺は初めて怪人に遭遇したとき、通常の銃火器では倒せない未知の存在に対して、五人の俺オレンジャーズが期待されていたことを思い出した。


 プロテクターを装着して、いつもより強そうな黒メタリックとシルバーメタリック怪人。

 さらには、強さが未知数のゴールドメタリックの怪人まで控えている。


「初めて怪人を見たときの怖さを感じますよ」

「確かに怖いですね」


 未知の怪人軍団を前に、久しぶりに恐ろしさを感じた。


 しかし。

 今の五人の俺オレンジャーズは、初戦のときの五人の俺オレンジャーズとは違う。

 第三課対怪人SATの皆さんと共に特訓し、心身を鍛錬した。

 その上、多くの人々の叡智が結集した対怪人用スーツを装着して、パワーアップしている。


「オレンジャーズだってパワーアップしましたし、やってやりましょう!」


 五人の俺オレンジャーズは怪人軍団の正面に立ちはだかり、その進撃を食い止める。


 パンチ、キック、掌底、前蹴り、往復ビンタ。

 五人の俺オレンジャーズは、様々な打撃技で黒メタリックの怪人を攻撃する。アストラル砲弾でも倒せない黒メタリックの怪人をボコボコにして消滅させていく。

 五人の俺オレンジャーズは強かった。


 しかし、プロテクターを装着したシルバーメタリックの怪人は、さすがに手強い。

 一方的に攻撃するだけとはいかず、反撃を受けてしまう。

 しかし、エルフィンドールズほどの強さはない。

 俺は力の限りを出して、シルバーメタリックの怪人を消滅させる。


 そうして五人の俺オレンジャーズは奮闘するのだが、今回の怪人軍団は総勢六十一名。

 五対六十一だ。いくらなんでも多すぎる。


 それでも五人の俺オレンジャーズは懸命に頑張り、七つの分隊を消滅させた。

 全力を出し戦い続けて、疲れが溜まり弱ってきた五人の俺オレンジャーズ。そのとき、静観していたゴールドメタリックの怪人が動いた。


 俺に向かってゴールドメタリックの怪人が走り寄ってくる。


 「ぐぇぇぇぇぇぇっ」


 動きが鈍くなっていた俺は、ゴールドメタリックの怪人にタックルでぶっ飛ばれる。

 トゲトゲの付いた甲冑で背後からタックルするとか、殺人タックルすぎるだろう。


 しかも、ものすごいパワーだ。


 このパワーはエルフィンドールズ並みかもしれない。

 これは五人の俺オレンジャーズが全員で対処しないと、勝負にすらならないだろう。

 ただそうすると、残っているシルバーメタリックの怪人が率いる三つの分隊に市街地への侵入を許してしまう。


 どうすべきか考えたいが、落ち着いて考えている間もなく、ゴールドメタリックの怪人が次々と攻撃を仕掛けてくる。

 余裕はない。


「ひとまずシルバーメタリックの怪人は、対怪人SATの皆さんに任せましょう!」

「ですね。ここはゴールドメタリックの怪人に集中しましょう」


 五人の俺オレンジャーズは、ゴールドメタリックの怪人に、一斉攻撃を開始する。だが五人がかりでも、すぐには倒せそうにない。


 対怪人SATの皆さんはシルバーメタリックの怪人には歯が立たず、その進撃を止めることができそうにない。


 このままでは市街地や一般人に被害が出てしまう。

 大ピンチだ。


 と、そのときだった。


 市街地まで、あと一歩のところに迫ったシルバーメタリックの怪人。

 そのシルバーメタリックの怪人が後方へ吹っ飛ばされる。


 一体、誰が!?


 そこにはキラキラと輝く二人の少女が立っていた。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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