第31話 初詣と怪人軍団
初詣に来ている。
正月三が日、
こんなにダラダラとした正月を過ごすことができるのは、怪人の警備を第三課対怪人SATの皆さんが当番で担当してくれているからだ。
この度、第四課技術班の
そのアストラル砲弾を使えば、怪人にダメージを与えることができる。まだ威力は不十分ではあるが、黒メタリックの怪人ぐらいなら十分に対応可能。
おかげで
そんなわけで、
それなりに人で賑わう境内。
俺は真冬の空気を感じながら参拝する。
「今年も良い年になりますように」
俺は何の気なしに、そう口にした。
「俺も同じことを言いましたよ」
「俺もですよ」
「あ、俺も」
「私もですよ」
全員、俺なので全員、同じだ。
そして、同時に全員、あることに気づく。
「今年も良い年に」とか言ってしまったけれど、去年の俺、ナイフで刺されて死んで、五分割されたんだった。
すっかり忘れていたが、去年は全く良い年ではなかった。
そうして、のんびりとした正月を満喫していた、そのときだった。
ピリリリリリッ! ピリリリリリッ!
突然、対怪人用スーツへの変身用に装着しているスマートウォッチのような装備が鳴り出した。
この音は緊急招集の合図だ。
「あれ? 緊急招集?」
「なにかあったんですかね?」
「正月はよっぽどのことがないと、連絡しないと言ってましたよね」
「ですね。急いで行きましょう」
「ちょうど全員揃ってますしね」
本部へ到着すると、緊迫した空気が漂っていた。
「権藤部隊長、何かあったんですか?」
俺は権藤部隊長へ問いかける。
「オレンジャーズ、よく来てくれた。休暇中にすまない。緊急事態だ。これを見てくれ」
そう言って権藤部隊長は、ドローンが撮影しているエルリンケイム基地周辺のライブ映像を見せてきた。
ライブ映像には、怪人の軍勢が映っていた。
今までに見たことがないほどの軍勢だ。
その中には、見たことがない金ピカに輝く怪人がいた。
ゴールドメタリックの怪人だ。
「あっ、ゴールドメタリックの怪人……」
俺と俺イエローは、勤務中にフラグのような会話をしたことを思い出して、気まずくなった。
俺レッドと俺ブラック、それに俺ピンクも気まずそうにしているので、それぞれどこかで同じような会話をしたのだろう。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
とにかくゴールドメタリックの怪人を中心とした怪人軍団が富士山麓に出現したのだ。
そして、いつものアホな怪人とは違って、何やら隊列を組んでいる。組織だって行動しているようだ。
しかもよく見ると、今回の怪人は、いつもの怪人と見た目が違う。
黒メタリックの怪人とシルバーメタリックの怪人は、丈夫そうなプロテクターを装着している。
さらにゴールドメタリックの怪人に至っては、肩からトゲトゲが生えている甲冑を装着している。
一目で怖い。
理由は分からないが、いつもより充実の装備で、強そうな怪人軍団が市街地へ向かって進軍している。
えっ、これはどういうこと!?
星幽結社エルリンケイムが地球へ攻撃しようとしている!?
今までそんな気配は全然なかったのに!?
いやいや、一体どういうことだ!?
俺は頭を巡らす。
そこで俺はハッとする。
クリスマスの日、エステラちゃんとナタリアちゃんに元気がなかったことだ。
「あ、もしかして!」
隣にいる俺イエローも同じタイミングで気がついた。
「エステラちゃんとナタリアちゃんの姿が見えない?」
「もしかして二人に何かあった?」
「星幽結社エルリンケイムで何かが起きている?」
真相は分からないが、この怪人軍団は絶対にヤバイ!
市街地へ侵入される前に食い止めないと!
当然、この状況なので権藤部隊長は、
「あの怪人軍団を市街地へ侵入させてはならない! オレンジャーズ、頼むぞ!」
「了解です。権藤部隊長!」
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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