第30話 計画遂行、そして絶頂へ

 星幽結社エルリンケイムの総統室。


 総統であるアデリナの眼前に、副総統のゴルゴス、それに複数の幹部たちが集まっていた。

 その集まった幹部の中には、二人の分身幹部ドローレアの姿も見える。

 普段は滅多に集まることのない面々が揃い、総統室にただならない緊張感が漂う。


 そんな中、ゴルゴスが威圧的にアデリナへ問いかける。


「アデリナ総統閣下、ここ最近の銀河中心部における戦況報告書に目を通してもらえましたかな?」

「ええ、一通り確認しました。銀河中心部はゴルゴス副総統をもってしても苦戦しているようですね」


 ゴルゴスは武闘派の集団を引き連れて、天の川銀河中心部を攻略しようと考えていた。

 成果は上がっているものの、攻略完了というには程遠い状況だった。


「フハハッ、手厳しいお言葉ですな。今現在、銀河の中心部は、複数の組織が勢力争いをしていますからな。現有戦力では如何ともしがたいのですよ」


 ゴルゴスは戦力不足をアピールする。


「そうですか、それでしたら銀河中心部にこだわる必要はありません。勢力範囲を拡大することが目的ではありませんから」


 それに対して、アデリナは勢力範囲の縮小を提案する。


「総統閣下とあろう者が、そんな軟弱なことを言わないでもらいたいですな。星幽結社エルリンケイムを大きくし、銀河の覇権を目指しましょうぞ」


 ゴルゴスは天の川銀河での覇権を目指していた。

 そのために星幽結社エルリンケイムに所属していると言っていい。


 しかし、当然アデリナは反発する。

 元々、星幽結社エルリンケイムは銀河を制圧するための組織ではないからだ。


「目的を果たすために強い力が必要なことはあります。ただ星幽結社エルリンケイムは、現在この星に住む多くの方々にアストラルエナジーを提供して、この星で不幸な争いが起きないようにすることが目的です。戦いが目的はありません」


 その発言を聞き、ゴルゴスはアデリナに対して、うんざりとした表情を隠さない。

 首を大きく横に振りながらアデリナに問う。


「ふう、アデリナよ。このオレと手を取り、勢力範囲を拡大する気はないわけか?」


 ゴルゴスは、これが最後の確認だと言わんばかりに、アデリナを問い詰める。

 そして、言葉を発すると同時に、圧倒的なアストラルパワーをその身体から放出させる。

 先日、エステラとナタリアが死にそうになったゴルゴスの得意技だ。

 しかしアデリナは、平然としたまま譲らない。


「当たり前です、ゴルゴス。そもそもあなたは、それほどまで勢力範囲を広げてどうするつもりです?」


「ん? どうするだと? なんだ、そこまでバカなのか。そんなものは決まっている。多くの惑星をオレの元に服従させたら気持ちが良いだろう! オレに逆らうヤツを殺すのは気持ちがいい!」


 ゴルゴスは恍惚の表情を浮かべながら、なおも言葉を続ける。


「その上、人を殺せば殺すほどアストラルエナジーが手に入るのだ。惑星一つ皆殺しにしたら、どれだけのアストラルエナジーになることか。それで結社の目的も達成できるのではないか、どうだ?」


 快楽で人を殺して、その上、アストラルエナジーまで収集できる。ゴルゴスにとってはいいことづくめだ。

 しかし、星幽結社エルリンケイムの理念からはほど遠い。アデリナが認めるわけがない。


「ゴルゴス、そんなことが許されると思っているのですか? それではただの悪の組織です」


 悪の組織と聞き、ゴルゴスは満足気な表情を見せる。


「おお、そうだな。それはいいな。悪の組織、星幽結社エルリンケイム。殺しまくった上での称号として最高だな。オレの目指すところだ。たぎるッ!」

「ゴルゴス、お黙りなさい!」


 アデリナは聞くに耐えなかった。


「ふぅぅ、黙るのはアデリナ、お前の方だ。総統だったお前の時間は今をもって終了する。そして今、このときからオレがッ! このゴルゴスが星幽結社エルリンケイムの総統である!」

「ゴルゴス、なにを勝手なことを言うか!」


 ここで満を持して、青紫色の髪のドローレアが口を挟む。


「すでに私を含め幹部の多くはゴルゴス様が総統になることに同意しております。アデリナ


 そう言って、青紫色の髪のドローレアはニヤリと笑う。

 それに対して、アデリナは呟く。


「コソコソと動いているとは思ったが……」


 ゴルゴスが言葉を続ける。


「まあアデリナよ、お前もこうなることは薄々わかっていただろう。大人しくしていれば、オレは直接お前に手出しはしない」

「くっ……」


 アデリナは結社を二分しての内紛など望まないため、何も言えなかった。


 実際にゴルゴスは、アデリナに興味はなく、直接手をかける気はない。

 ただし、二人の分身幹部ドローレアの考えは別だ。権力を失ったアデリナを殺す気でいる。

 ゴルゴスは当然それを分かっているが、二人の分身幹部ドローレアとアデリナの関係など、どうでも良かった。


「オレは総統として、銀河中心部の攻略を星幽結社エルリンケイムの第一目標と掲げる。そのために戦力の増強を行う」


 ゴルゴスは、二人の分身幹部ドローレアと、幹部であり科学者でもあるラゾワールを見る。


「現時刻をもって現在の地球担当は解任。二人のドローレア、そしてラゾワール博士、諸君らを新たな指揮官とする。地球に有り余るアストラルエナジーを収集し、それをもって戦闘団を拡充するのだ」


 こうして二人の分身幹部ドローレアは、計画していたクーデターを成功させて地球の担当に収まる。


 二人の分身幹部ドローレアは思う。

 これで思い通り地球人を皆殺しにできる。

 アデリナとエステラが地球人の皆殺しを阻もうとすれば、それを理由に二人を始末することもできる。二人を苦しめた上で、なぶり殺す。

 二人の分身幹部ドローレアは、笑いを堪えるのに必死なほどの喜びを感じていた。


「はっ、ゴルゴス様。お任せ下さい」


 二人の分身幹部ドローレアは揃って答える。

 そして、地球担当のもう一人、幹部ラゾワール博士。


「承知したのじゃ、ゴルゴス新総統。地球産のアストラルエナジーで研究、開発とは実に楽しみですのじゃ。グフッ、グフフフフフッ」


 ラゾワール博士は、人の命などどうでも良かった。興味があることは研究開発だけだった。

 最後にゴルゴスがアデリナへ伝える。


「ということでアデリナ元総統、今までご苦労。もう下がって良いぞ」


 アデリナは何も反論をせず、静かにその場を去る。

 失意のアデリナを見て、二人の分身幹部ドローレアは喜びを抑えるのに必死だ。


 ゴルゴスはアデリナが去るのを見届けたあと、二人の分身幹部ドローレアとラゾワール博士へ指示を伝える。


「オレは銀河中心部の拠点に戻り指揮を取っている。早急に戦闘団を整備して、こちらに派遣してこい。地球でのアストラルエナジー収集方法は問わん。皆殺しにすれば、どれほどのアストラルエナジーになるのか。フハハハッ!」


 ゴルゴスは最後にそう言い、取り巻きの部下を引き連れて去っていった。


 最後に二人の分身幹部ドローレアだけが残った総統室。


「ふひっふひっふふひひひっ。あぁぁぁ鬱陶しいアデリナがやっと失脚したぁぁあぁ。これで地球を好きなようにできるぅぅぅう。あぁぁ楽しみぃぃぃいぃ。あのウザい母娘、どうやって殺そうかしらぁぁあぁ。ああぁぁ想像するだけでもたまらないぃいいぃ」


 二人の分身幹部ドローレアは絶頂した。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!







 ◇◇◇◇◇


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