第29話 生い立ち
これまで地球に対して、友好的な対応をとってきた星幽結社エルリンケイム。
ただ、現在の星幽結社エルリンケイムには、不穏な空気が漂っていた。
――――その理由は過去の出来事が起因する。
星幽結社エルリンケイムを創設した者は、ブシ・アストリア。現総統アデリナ・アストリアの夫である。
結社の設立後、ブシとアデリナは結ばれ、愛娘エステラが誕生する。
星幽結社エルリンケイムは、アストラルエナジーを利用していない人種が住む惑星を対象に、できる限り危害を加えずアストラルエナジーを収集し、母星へ提供する穏やかな結社であった。
創設以来、星幽結社エルリンケイムは、順調に活動を続けていた。
だが、数年前のこと、初代総統であるブシ・アストリアが天の川銀河の中心部への遠征中に行方不明となってしまう。
総統が不在という問題は、結社内に大きな混乱を招いた。
結社解散という危機でもあった。実際に解散するという選択肢もあっただろう。
結社内の混乱はしばらくの間、続くことになった。
しかし最終的には、初代総統の意志を引き継いだアデリナ・アストリアが多数の支持を集めて二代目総統となり、表面上の混乱は収束した。
しかし水面下では、二代目総統アデリナに不満を持つ者たちがいた。
その筆頭が幹部である二人のドローレアであった。
――――さらに話は遡る。
元々ドローレアの存在は一人であった。そのドローレアは、アデリナを格下に見て疎んでいた。
若き日のドローレアは、ブシ・アストリアに恋焦がれていた。
ドローレアが格下と見下しているアデリナ。
そのアデリナこそが、ドローレアにとって、初代総統ブシ・アストリアを巡っての恋敵であった。
ただ結果は、格下だと見下しているアデリナとブシ・アストリアが結ばれることになり、ドローレアの恋が実ることはなかった。
子供の頃から圧倒的なアストラルパワーを誇り、才能に満ちていたドローレア。
艶やかな紫の髪色、目鼻がくっきりとした端正な顔立ち、その容姿についても非の打ち所がないドローレア。
それまで全ての事柄が自分の思い通りになっていた。
そんなドローレアにとって初の挫折だった。惨めな気持ちになり、アデリナを激しく憎悪する。
初の挫折を受け入れることができず、憎悪を一人で募らせていくドローレア。
そんなある日のこと、ドローレアは、幼いエステラを連れたアデリナとブシの三人が幸せそうに過ごしている姿を見て発狂し、発作的に暴れて転落死する。
転落死によりドローレアの肉体は滅ぶ。
しかし、ドローレアのアストラル体は、怨恨の力により、さらに濃密に強大に成長して消滅はしなかった。
アストラル体となったドローレアは、転落死によってより一層、強大になった自身の力に希望を感じ復活を期す。
その禍々しく強大となったドローレアのアストラル体がアストラル神の目に止まる。
安寧を求めるアストラル神は、強大で禍々しいドローレアのアストラル体を手元に回収し、力を弱めるため二つに分割して転生させた。
ドローレアのアストラル体、その心に安らぎが訪れることを期待して。
アストラル体を二つに分割されたドローレアは、青紫色の髪と赤紫色の髪、二人のドローレアとなって復活した。
復活した時空は、ドローレアの断固たる意志により、転落死した時空と同じであった。
同じ場所、同じ時刻に復活したため、ドローレアが転落死したことは誰も知らない。
ドローレアが二人になった要因については色々と噂されたが、この世界では稀に起きることがあるため、いつしか自然と受け入れられていく。
復活した二人のドローレアは思う。
自分が死ぬ羽目になったのはアデリナのせい。
二人に分割させられたのはアデリナのせい。
自分はアデリナに殺されて二分割されたのだと。
二人のドローレアは、生涯を賭けてアデリナへの復讐を誓う。
最愛の娘であるエステラを殺し、アデリナお気に入りの惑星である地球を死の星に変え、アデリナに絶望や苦しみを与えたあと、最後に殺す。
二人のドローレアの心には、それしかなかった。
それから二人のドローレアは機会をうかがった。
そして、初代総統から二代目総統アデリナへの代替わりの混乱を、チャンスと捉えた。
二人のドローレアは代替わりの混乱に乗じ、弱体化した結社の補強と称して、ゴルゴスを引き入れる。
二人のドローレアとゴルゴスは、結社内で武闘派を形成し、その存在感を高めていった。
それから短期間のうちに、ゴルゴスはその強大な戦闘力により他者を圧倒し、副総統となった。
二人のドローレアも謀略を駆使し、分身幹部ドローレアとして、その地位を確立した。
アデリナに関わって以来、思いのままの行動ができなかったドローレア。
だが、ついにアデリナへの怨恨を晴らすため、その牙を剥くときがやってきた。
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます