第23話 五人の俺、パワーアップする

 今日は新調された対怪人用スーツのお披露目会だ。

 星幽結社エルリンケイムによる技術提供のおかげで、対怪人用スーツがパワーアップした。


 もっとも敵と言える相手がいないので、対怪人用スーツをパワーアップする必要は本来ない。ただ現状、地球上で唯一、アストラルエナジーを利用している道具なので、教材として選ばれた。

『対怪人用スーツを教材にすれば良い』という提案は、星幽結社エルリンケイムの総統からあったらしい。

 五人の俺オレンジャーズなど弱すぎて、眼中にないということだろう。


 さらに星幽結社エルリンケイムから触媒をもらった。

 そのもらった触媒と、小根こずえコネコさんたち研究者が習得した基礎技術。今後はそれらによって、アストラルエナジーの利用が様々な方面に進んでいくだろう。

 研究者の皆さんに期待する。


 さて、今後のことはさておき、気になるのは今回の改良点だ。


 ひとつめ、装着時間が超短縮!

 まずは、新開発されたスマートウォッチのようなモノを腕に装着する。


 その状態で『俺グリーン変身!』と宣言する。

 すると、対怪人用スーツが0.01秒で装着できる。

 驚きの速さだ。


 脱ぎたいときは『俺グリーン解除!』と言うと、もともと着ていた服に一瞬で戻る。


 これまで本部の更衣室で、普通に自分で着たり脱いだりしていた状況は大違いだ。

 対怪人用スーツは着替えが大変で、今まで二十分ほどかかっていたのだが、それが僅か0.01秒。素晴らしい。


 俺はウキウキしながら、さっそく脱着を試してみる。


「俺グリーン変身!」


 シュンッ!!! 対怪人用スーツ姿になった。


「俺グリーン解除!」


 シュンッ!!! もともと着ていた服に戻る。

 五人の俺オレンジャーズはガヤガヤしながら、超高速になったスーツの脱着を喜ぶ。


「おお、これはすごいですね」

「どんな原理なんでしょうね」

「色々と親切に説明してもらいましたけど、俺はさっぱりでしたよ」

「ですよね。四次元空間がどうこうとか言われても分かりませんよね」

「まあオレンジャーズとしては、使い方さえ覚えておけば大丈夫ですよね」

「ですね。使い方と言っても『変身』『解除』というだけですけど」


 俺は難しいことはさっぱり分からないが、便利になってとても嬉しい。


 ふたつめ、出力アップ!

 現在、素の状態で俺が出せるアストラル値は110程度。

 これでも訓練によって最初より30だけ増えた。


 改良前の対怪人用スーツを着用した場合、その四倍である440程度まで引き上げられていた。

 今度の新型は、なんと十倍。1100程度まで数値が上がった。


「十倍ですよ、十倍。すっかりインフレですね」

「もう無敵じゃないですかね」


 五人の俺オレンジャーズはワイワイと無邪気に喜ぶ。

 それを近くで聞いていた小根こずえコネコさんが言った。


「私、エステラさんに聞いたのですが、今のエステラさん、ミツバチスタイルだとアストラルパワーが16000程度になるそうですよ」


「「「「「えっ、そ、そうなんですか。はははっ……」」」」」


 桁違い過ぎて、乾いた笑いが出た。

 どうりで前回の戦闘時、エステラちゃんたちの表情がキリッとなってから、一瞬で負けてしまうはずだ。むしろ前半だけとはいえ、よく互角の戦いをしたものだ。


 今回パワーアップしたのは、この二点だ。


 エステラちゃんに比べると、まだまだ弱いが、伸びしろが大きいと思っておこう。訓練などでアストラルパワーの数値は上がるので、頑張っていきたい。

 なんにしろ薄められて五分割されるほどの俺だ。まだ発揮できていない力があるかもしれない。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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