第二章 波乱

第20話 五人の俺、警備員になる

 星幽結社エルリンケイムが脅威ではないと全世界へ伝わった。


 実質的な被害は無いに等しい。

 ただ、異次元から出現した謎の組織への恐怖による精神的な苦痛、生活の混乱は、相当なものだった。

 世界は、それら未知の恐怖から解放されて、平穏な日常を取り戻していった。


 俺も微力ながら、世界の平和に貢献したと自負している。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も、そう思っているだろう。


 そんな世界の平和に貢献した五人の俺オレンジャーズの現状はというと。

 相変わらず富士山麓にある星幽結社エルリンケイムの基地を見張っていた。

 今後は星幽結社エルリンケイムと友好的な関係を築いていけそうではある。ただ現状では、警備員&整備員としての怪人がいるからだ。


 今日の監視当番は、俺と俺イエローの二人。

 怪人を監視しながら、俺イエローが俺に話かけてくる。


「今日も黒メタリックの怪人がウロウロしてますねー」

「ですねー」

「あの黒メタリックの怪人、アホなんですよねー」

「なんか賢くし過ぎると自爆すると言ってましたよね」


 星幽結社エルリンケイムが派遣してくる怪人は人工物だ。その人工物である怪人は、個々に人工知能を搭載しているらしい。


 そして、賢い怪人の思考回路はこうだったとか。


 はぁ、今日も警備か。

 毎日毎日、同じ場所の警備だよ。

 報酬もないし、やってられないよね、実際。

 もういいや、自爆しよっと。

 ドーンッッ!!!


 という感じに賢い怪人だと自爆してしまうため、最近の怪人は自分の立場に疑問を持たないよう知能を低く設定していると言っていた。

 ただ、今の設定はアホ過ぎて、自分の持ち場を離れてしまう。


「あ、またあの黒い怪人、ふらふらと街の方へ行きますよ」

「仕方ない。倒しますかね」


 バキッ! ドガッ! ドッガアアアア!

 シュワワワワワッ!


 俺と俺イエローは、黒メタリックの怪人をぶん殴って消滅させた。


 そんな理由で五人の俺オレンジャーズは、ふらふらと街の方へ歩いて行く黒メタリックの怪人を撃退している。

 以前のように、日本の期待を背負っている感じは、全くない。


「平和で良いですけど、単調でうんざりしてきますね」

「ですね。今やってるこれ、意味あるんですかね?」


「うーん、意味があるとしたら、オレンジャーズが解散にならないってことぐらいですかね」

「ああ、まあ確かに。今、リストラされても困りますしね。そう思うと贅沢は言えませんね」


 やりがいは感じないが、強敵と戦って死んでしまうよりは、ずっとマシと言えるだろう。


「でも、もしかしたら急に強い怪人が来るなんてことがあるかもしれないですよ」

「えっ、そんなことありますかね。そうだなぁ、例えば……黒、シルバーときたので、今度はゴールドあたりとか?」


「あり得ますね。ゴールドメタリックの怪人で、めっちゃ強いヤツ」

「ははっ、エルフィンドールズ並みに強いヤツだったりして?」


「そうそう、……って、ちょっとやめときましょうか。フラグみたいし」

「あっ、そうですね。ははっ」


 俺は俺イエローと談笑しながら、気楽な警備を満喫していた。


 

 ◇◇◇



 その頃、星幽結社エルリンケイム本拠地では。


 今から私は、三回目の地球遠征について、お母さんでもある総統のところへ報告に行くところ。

 落ち着いて報告をするために、いつものように少し思い出しておこうかな。


 三回目の地球遠征では、オレンジャーズさんと戦闘にはならなかった。

 その代わりに私たちは、色々なお話をした。


 オレンジャーズさんの話によると、私たち星幽結社エルリンケイムは地球人を皆殺しにする組織、そう思われているようだった。

 私たちはアストラルエナジーが必要なだけなので、皆殺しとか怖いことをするつもりはない。

 かなり慌ててしまったけれど「皆殺しになんかしませんよ」と伝えることができて良かったと思う。


 それにしても地球の皆さんには、私たちが皆殺しをするような怖い人に見えていたのかな。そう思うと少しショックだ。

 威圧感を与えない可愛いコスチュームのはずなんだけれど。


 でも確かに、知らない異星人が自分の星に来たら、怖いと思われても仕方がない。

 私たちの方から、もっとお話すれば良かったのかもしれないけれど、私たちも怖かったから、できないでいた。

 もう少し勇気を出して、お話してみれば良かったと反省している。


 ともあれ今回、オレンジャーズさんからお話をしてくれて、本当に良かった。皆さん優しそうだったし、これからは友好的に接することができると思う。



 ――――よし、こんなところかな。



「……ということで、地球の皆さんと友好的な関係になれそうです。以上です」

「ご苦労さま。無意味に戦闘を拡大させず、双方に大きな被害もなく、よくやりました」


 総統であるお母さんに褒められて、私は嬉しい。


「はい、ありがとうございます。地球の皆さんのおかげです」

「そうですね、では、これから地球の皆さんもアストラルエナジーが利用できるよう、基礎技術を教えてあげなさい」


 地球の皆さんへ基礎技術の提供!?

 私は嬉しいけれど、少しお話しただけの相手なのにそんなことをして良いのかな?


「えっ、そんなことをして良いんですか!?」

「問題ありません。収集したアストラルエナジーの対価、友好の証としてです。今後オレンジャーズさんたちが我々の敵になるとは思えませんので」


「はい! 地球の皆さんも喜んでくれると思います。ありがとうございます」

「次回は技術班と一緒に遠征するように。それと親交を深めてくるのも良いでしょう」


 きっとお母さんも地球のことがすごく好きなんだと思う。

 昔、お父さんと一緒に行ったことがあるって言っていたし、地球は思い出の惑星と言っていた。

 綺麗で気持ちの良い地球という惑星は、私も好きだ。


 最初、オレンジャーズさんにじーっと見られた時は、気持ちの悪い人が住む惑星だと思ったけれど。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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