第19話 五人の俺と新たなる紛争
『富士山麓にエルフィンドールズが現れました!』
今日の目的は戦闘ではない。
戦闘に発展する可能性はあるが、まずは話を聞く。
そして、話を聞くにあたっては、今回も順番に名乗りをあげる必要があるだろう。
「灼熱の炎!
「新緑の風!
「
「漆黒の闇!
「癒しの光!
名乗りのあと、俺はエルフィンドールズに問いかける。
「五人揃って分身戦隊オレンジャーズですけど、質問をしてもよろしいでしょうか?」
俺の質問に対して、恐る恐るといった感じで、エステラさんが口を開いた。
「わ、私たちの趣味とかですか?」
確かに聞いてみたいけど、そうではない。
「あなたたちは地球を侵略する気らしいですが、そのわりに殺意を感じません。本当に侵略をする気があるのでしょうか?」
「??? 侵略なら終わってますよ?」
「えっ、お、終わってる!?」
「はい。侵略してごめんなさい」ペコリ。
どういうことだ。
特に被害はでていないし、犠牲者も誰一人でていない。
「まだ基地みたいのが一つできただけですけど? これからが本番はなくて?」
「いえ、それで完了です」ペコリ。
勝手に日本の領土へ基地を建てたので、確かに侵略ではあるだろう。
だが、はるばる異次元空間を越えてやって来たのに、それで終わりでいいのだろうか。
さっぱり分からないので、
※星幽結社エルリンケイムが地球に来た理由は、エステラさんの母星で生活に必要なアストラルエナジーという物質を収集するため。
※星幽結社エルリンケイムの母星では、アストラルエナジーが枯渇した。地球はアストラルエナジーが駄々余り。
※アストラルエナジーを収集するための基地を建設する=地球侵略。
※建設した基地では、すでにアストラルエナジーの収集を行なっている。
※最初にアメリカ大統領や日本首相などに書簡を出したが、廃棄されたのか無反応なので、やむを得ず侵略を開始した。
※黒やシルバーの怪人は作業員&警備員。人型容器に汎用アストラルエナジーを注入して作った人工物。
エルフィンドールズの二人から話を聞いて分かったことは、こんなところだろうか。
俺は会話をしながらも気づかれないように、エステラさんをチラチラと見る。見た目も声も可愛いくて癒される。
そうして、座り込んで話をしているうちに、人見知りの俺にも関わらず、すっかり和んだ雰囲気になり砕けた口調で喋っていた。
「そうなんだー。じゃあエステラちゃんたちは、地球人を皆殺しにはしないの?」
「えっ、な、なにを怖いこと言ってるんですか!? 皆殺しになんかしませんよっ!?」
結局、これまでの星幽結社エルリンケイムからの被害といえば。
富士山麓に基地を建てられた。
→ 空き地といえば空き地なので許容できる?
アストラルエナジーを収集されている。
→ 現在の地球人では、アストラルエナジーとやらの利用ができないので問題はない?
→ 治ったからヨシ?
俺としては、こんな感じだと思う。
やはりファーストコンタクトのときに感じた、エステラさんたちが敵ではないという感覚は間違ってはいなかった。
実際にエルフィンドールズの二人と話をした俺としては、二人の話を完全に信用している。
俺にはエルフィンドールズの行動を見て、星幽結社エルリンケイムがこれ以上、地球を侵略してくるとは思えない。
日本や世界の上層部は、どう判断するだろうか。
このあと、権藤部隊長を通じて、日本の上層部に情報が伝わる。
上層部は星幽結社エルリンケイムを完全に信用することはできないが、様子を見ても大丈夫だと判断した。
もっともエルフィンドールズの話を疑ったところで、星幽結社エルリンケイムをどうにかできるわけでもない。
つまり当面は、現状維持が得策ということだろう。
俺としてはエルフィンドールズと戦わなくて良くなり、とても嬉しい。
そして俺は、これから日本の皆さんにも、エルフィンドールズの優しさと可愛いが伝わって欲しいと思う。
そうすれば星幽結社エルリンケイムが地球の平和を壊す存在だとは思えないだろうから。
◇◇◇
こうして数ヶ月間に及ぶ星幽結社エルリンケイムとの紛争は、一旦、幕を閉じた。
ここまで実質的には、被害のなかった紛争。
これまでの紛争は、のちに第一次エルリンケイム紛争と呼ばれることになる。
だが、第一次エルリンケイム紛争は、序章でしかなかった。
この時点で、新たなる紛争の兆しに気づいている者は、地球上に誰一人としていなかった。
このあと始まる星幽結社エルリンケイムによる本当の地球侵略、それに伴う紛争。
――――第二次エルリンケイム紛争。
それこそが
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
◇◇◇◇◇◇
第一章完結です。お読みいただきありがとうございました。
ここまでは序章ということでキャラ紹介などふんわりした感じでした。第二章からは若干のシリアス要素を挟みつつ本格的な抗争となります。
引き続きお読みいただけると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます