第18話 五人の俺、前戦を振り返る

 初戦より良い勝負をしたものの、五人の俺オレンジャーズはエルフィンドールズに再び敗れた。


 新開発の対怪人用スーツを着用し、様々な訓練を経て、かなりパワーアップして臨んだ再戦だった。

 しかし、エルフィンドールズの壁は厚かった。

 本気になってからのエルフィンドールズには、歯が立たなかった。

 悔しいが、これが現実。


 それでも五人の俺オレンジャーズの心は折れてはいない。

 五人の俺オレンジャーズはへこみつつも、ガヤガヤとエルフィンドールズとの再戦を振り返っていた。


「また負けてしまいましたね」

「ですねぇ。やっぱり悔しいですね」

「俺、途中でエルフィンドールズが相談したとき、撤退かと思って少し気が抜けてしまいましたよ」

「ああ、やっぱり。俺も少し気が抜けてました」

「まあ全員、俺ですし、あの瞬間は五人揃って、気が抜けてましたね」

「オレンジャーズの弱点ですよね」

「それにエルフィンドールズは、オレンジャーズの天敵ですよ。見た目的に」

「そうなんですよねー」


 そう、見た目が可愛い。

 これは五人の俺オレンジャーズにとって、かなり不利となる要因だ。黒メタリックやシルバーメタリックの怪人の時のように、顔面をぶん殴ることなどできるはずがない。

 今になって思うと、無意識のうちに躊躇してしまい、もう一つパワーが出ていなかった気がする。


 エルフィンドールズは完全に五人の俺オレンジャーズの好み、どストライクだ。

 俺ピンクまでもが、あの娘たちは可愛いと発言している。このあたり女性になっても、俺は俺だ。


 さらに今回、エルフィンドールズが繰り出してきた必殺技。

 あれは反則だろう。完全に俺の本能に訴えてくる技だ。抗えるはずがない。

 むしろ抗うどころか、もう一度、食らいたいと思っているほどだ。

 あの必殺技への対処法を早急に検討すべきだろう。


 そんなわけで、エルフィンドールズは五人の俺オレンジャーズの天敵ということだ。


 だが、それでも名前と年齢を聞く、できるだけ戦闘を長引かせてエルフィンドールズの能力を把握するというノルマはこなせた。


 さらに敗れはしたものの、今回は対怪人用スーツのおかげでダメージも少なく、体調もすっかり元に戻っている。

 これならば、すぐ復帰できる。初戦より全てにおいて、成長したと言っていいだろう。


 さて、気になる星幽結社エルリンケイムの動向だが、富士山麓に基地を建設したにも関わらず、積極的に侵略してくる気配はない。


 そのため日本国内では『星幽結社エルリンケイムは本当に地球を侵略する気があるのか?』という疑問が警視庁や日本政府などの上層部で湧いていた。

 エルフィンドールズと戦っている俺も、あまりに殺意を感じないため、不思議に思っている。


 上層部は、その疑問を解消すべく、直接、戦っている五人の俺オレンジャーズに意見を求め、俺は自由に感想を述べた。

 以下、俺のコメント。


「そうですね、戦っていても全く殺意は感じませんね。いつも可愛いなと思うぐらいです」

「エステラと名乗る怪人に至っては、冷却シートを貼ってくれましたし、むしろ優しい人です」

「もちろんオレンジャーズとして、日本のために頑張りますが、エルフィンドールズの二人が悪人とは思えませんね」


 現在、世界の数箇所で怪人との戦闘が行われている。

 その中で、お互い友好的に名前を聞き合ったのは五人の俺オレンジャーズだけ。

 ということで、次にエルフィンドールズが現れた際には、五人の俺オレンジャーズが詳しく侵略の目的を聞くことになった。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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