第17話 私と幹部と幹部の呟き
ここは星幽結社エルリンケイムの本拠地。
エルフィンドールズが必殺技を繰り出して、
「エステラちゃん、先に総統へ報告してきたよ」
私に話かけてきたのは、エルフィンドールズの仲間でもあり、お友達でもあるナタリアちゃん。
ナタリアちゃんは、私より先に総統へ報告を済ませてきたみたい。
報告を済ませたナタリアちゃんは、いつものようにニコニコしている。
私は明るいナタリアちゃんから、いつも元気をもらっている。
怖がりの私だけれど、地球への遠征もナタリアちゃんと一緒だから不安は少ない。
「私は今から報告に行ってくるよ。総統への報告は緊張するよねー」
「ええっ、エステラちゃん、お母さんなのに緊張するの?」
そう、星幽結社エルリンケイムの総統は、私のお母さんだ。
「するよー、お母さんじゃなくて総統だし。それにお母さんって言うと怒られるし」
「だよねー。ナタリアも前に、エステラちゃんのお母さんって呼んで怒られた。えへ」
ナタリアちゃんとお話していると、緊張していた気持ちがほぐれていく。いつもこんな感じだ。
「じゃ、行ってくるねー」
「頑張ってー」
私は総統への報告前に、二回目の地球遠征を振り返る―――。
強いはずのシルバーメタリックの作業員さんが倒されてしまったので、私とナタリアちゃんは地球へ向かった。
私たちが到着すると、今回もすぐに五人組の皆さんがやってきた。
五人組の皆さんは、前回のダメージはなさそうで、全員とても元気そうだった。
私は少しホッとした。
そして、五人組の皆さんは、私たちをじーっと見たあと、なぜか唐突に名乗りをあげて、名前と年齢を聞いてきた。
あの人たちは一体、何を考えているのかな。私にはさっぱり分からない。
でも今思うと、お互いに自己紹介ができて良かったと思う。
そのあと、今回も戦いになった。
前回のオレンジャーズさんは、すごく弱くて驚いたけれど、今回はとても強くなっていて驚いた。
でも私は、それでも負けることはないと感じていた。
私たちは、強くなったオレンジャーズさんなら、ちょうど良い相手かなと思って、練習していた必殺技を出すことにした。
あの必殺技は、ちょっと恥ずかしいのだけれど、ナタリアちゃんと二人で頑張った。
二人で頑張ったかいもあり、必殺技の効果は絶大だった。
ただ、私もナタリアちゃんも必殺技を決めたあと、嬉しくなって、ドヤ顔を決めすぎた。恥ずかしいので、オレンジャーズさんには、忘れてほしい。
今回、私たちが使った必殺技は、力加減が難しくて危険かもしれないと思っていた。だから私は、気休めかもしれないけれど、冷却シートを所持していった。
必殺技を使った結果だけれど、私の想像以上にオレンジャーズさんへダメージを与えてしまった。
私は心配になって、一番ダメージの大きそうな俺グリーンさんに、冷却シートを貼ってみた。
私は回復して欲しいと思って貼ったのだけど、結果的に俺グリーンさんは気絶した。ごめんなさい。
◇◇◇
私は総統への報告を終えて、総統室から続く長くて広い通路を歩いていた。
そこへ前方から、女性幹部の一人であるドローレア様がやってきた。
以前、一度だけ遠くから見たことしかないけれど、あの長く美しい青紫色の髪は、ドローレア様に違いない。
ドローレア様は、副総統ゴルゴス様たちと天の川銀河の別の惑星群に行っていたはず。
確か四十七個の惑星が攻略対象だと聞いていたけれど、もう攻略が終わって一人で報告しに来たのかな?
ドローレア様は、武闘派を代表する怖そうな幹部だ。
星幽結社エルリンケイムは穏健派が主だったけど、最近は武闘派が台頭している。
私は邪魔にならないよう、通路の脇に避けて恐縮する。
ドローレア様、近くに来るとすごい迫力。
そう思って下を向いていたら、ドローレア様が私に話しかけてきた。
えっ、なんで? 私なんかに。
「あら? あなた、エステラさんよね?」
「は、はい。エステラです」
な、なんで新人の私なんかを気にしてるのかな。
「ちょうど良いところに来たわねぇ。ふぅん、なるほど、これが総統のねぇ……」
初めて間近で会ったドローレア様が、私を上から下まで舐めるように見てくる。
「で、あなたはクソ雑魚しかいない地球の担当で間違いないわよね?」
「はい、私、地球が担当ですけど……。えっ、く、クソ雑魚??」
「あら、違ったかしら? 地球はアストラルエナジーも使えない下等種し
かいないと聞いていたけれど?」
「はい。確かにアストラルエナジーは、ほとんど使えないようですけど」
「やっぱりクソ雑魚の下等種であってるじゃない。あなた、地球でずいぶんと甘っちょろい戦いをしているようだけど、侵略は順調なのかしら?」
「あ、甘っちょろいですか、す、すみません。あの、でも拠点は完成したんです。ですので、これから収集に入ります」
「ふーん、そう。まあ直属の上司ではない私に、そんなに謝ることはないわ。あなたなりに頑張っているのでしょう?」
「はい、ありがとうございます」
「次の遠征も好きなように頑張りなさい」
「は、はいっ! 頑張ります!」
ドローレア様はそう言って、総統室の方へ向かい歩いていった。
はぁ、ドローレア様、怖かった。
だけど、最後は励ましてくれたし、厳しいけれど意外と優しい人なのかも。
私は遠ざかっていくドローレア様の後ろ姿を眺めていた。
◇◇◇
――――エステラから遠ざかっていくドローレア。
そのドローレアは、青紫色の髪をかき上げながら、ニヤリと笑い呟いた。
「あれが成長したエステラね。どうせ殺すつもりだし、しばらくは好きにしているといいわ。そのためには、早いところ計画を進めないといけないわねぇ。計画通りにいけば、地球に住む下等種どもを皆殺しにして、あの小娘もなぶり殺せる……あぁ楽しみねぇ」
エステラには、ドローレアが呟いた、恐ろしい言葉は聞こえなかった。
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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