第15話 五人の俺、成長していた

『富士山麓にミツバチ怪人エルフィンドールズが現れました!』


 ついに来た!


 五人の俺オレンジャーズを秒殺したエルフィンドールズが再び日本へやってきた。


 俺は、この日を待っていた。

『可愛いエステラさんを倒さなければならない』という悲劇のヒーロー的な考えが頭をよぎったこともあった。


 だが、今は違う。


 エステラさんをキュンとさせたあと、エルフィンドールズに地球侵略を諦めさせる。

 そして、自分の世界へ帰ってもらうのだ。


 五人の俺オレンジャーズは、エルフィンドールズが出現したエルリンケイム基地へと向かう。エルフィンドールズは、基地の出来映えを確認していた。


 五人の俺オレンジャーズが現れたことに、エルフィンドールズが気がつく。

 俺はエルフィンドールズと向き合い、そして思った。



 ――――あらためて見ると、とても可愛い。



 えっ、なにこの娘たち、こんなキラキラしてましたっけ?

 超可愛いじゃん。

 俺が戦う相手って怪人ですよね。

 でも今、目の前にいるのは天使なんですけど?

 なんかもうキュンキュンしてきちゃってるんですけど?

 俺、全く勝てる気がしないんですけど?


 覚悟ガンギマリだったはずなのに、一瞬にして、その覚悟が揺らぎ始めている。


 あまりのキラキラっぷりに動揺を隠せない五人の俺オレンジャーズは、今回も五分ほどエルフィンドールズを眺めていた。


 すると、エステラさんが声をあげた。


「なんでまたそんなに見るんですか!?」

「えっ、あっ、すみません」


 五人の俺オレンジャーズは我に返った。

 揃いも揃って、キュンキュンしている場合ではない。

 準備した名乗りを上げて、名前と年齢を聞く。

 できるだけ戦闘を長引かせて、エルフィンドールズの能力を把握するというノルマをこなす。

 そして、俺はノルマをこなすだけではなく、エステラさんを倒すのだ。


 俺レッドから順番に名乗りをあげる。


「灼熱の炎! オレレッド!」

「新緑の風! オレグリーン!」

「漆黒の闇! オレブラック!」

きらめく稲妻! オレイエロー!」

「癒しの光! ワタシピンク!」


 決まった。五人の俺オレンジャーズは練習通りに名乗りをあげた。

 突然の名乗り口上に、エルフィンドールズの二人が動揺している。

 その気持ちは分かるが、俺はお構いなしに質問をする。


「五人揃って分身戦隊オレンジャーズというものなんですけど、お名前と年齢を、お聞かせ願えますか?」


 果たして俺の質問に答えてくれるのだろうか。

 エルフィンドールズの二人は、明らかに動揺しながらも、左側の少女(怪人)から答えてくれた。


「名前はナタリア。年齢は十六歳だよ」


 ほぅ、左側にいる外ハネボブの元気そうな娘は、ナタリアさんというのか。

 十六歳とは、ずいぶんと若いな。

 

「エステラです。年齢は十六歳です」


 エステラさんも同じく十六歳か。

 若いのに、しっかり仕事をしているな。


 五人の俺オレンジャーズの質問に、エルフィンドールズの二人はしっかりと答えてくれた。素直ないい娘たちだ。


 俺はエルフィンドールズの名前と年齢を聞き出せて満足した。

 しかし、これで終わりではない。

 ここからが本当の勝負だ。素直ないい娘でも容赦はしない。


 エルフィンドールズは、五人の俺オレンジャーズが突如として名乗りを上げ、そのあとなぜか名前と年齢を聞かれたことに動揺している。


 強いと言っても所詮は十六歳。

 これしきのことで動揺するとは、まだまだ甘い。


 図らずもチャンス到来、五人の俺オレンジャーズに流れがきている。

 素直ないい娘だとしても、地球から撤退してもらう。


 五人の俺オレンジャーズは、目配せをしてタイミングを合わせる。

 タイミングを合わせた五人の俺オレンジャーズは、エルフィンドールズへ一斉に襲いかかった。


「あっ、また襲いかかってきた! やあっ!」

「逆らわないで下さいって言ったのにっ! えいっ!」


 五人の俺オレンジャーズからの攻撃に、エルフィンドールズが反撃してきた。

 前回は、ここで無様に負けてしまったが、今回は違う。


「見える、見えるぞ。俺にもエルフィンドールズの動きが見える!」


 エルフィンドールズは、動揺したせいで力が出せないのか、動きが鈍い。

 対して五人の俺オレンジャーズは、対怪人用スーツでパワーアップしたおかげか、日々の特訓の成果か、五人揃って鋭い動きだ。


 バキッ!

 ガキッ!

 ドガッ!


 五人の俺オレンジャーズは、前回秒殺負けしたエルフィンドールズと互角に渡りあった。


 それを見て、後方に控えている対怪人SATの皆さんから歓声が上がる。

 前回、手も足も出なかったエルフィンドールズに五人の俺オレンジャーズは、五分五分の勝負ができるほどに成長していた。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!


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