第15話 五人の俺、成長していた
『富士山麓にミツバチ怪人エルフィンドールズが現れました!』
ついに来た!
俺は、この日を待っていた。
『可愛いエステラさんを倒さなければならない』という悲劇のヒーロー的な考えが頭をよぎったこともあった。
だが、今は違う。
エステラさんをキュンとさせたあと、エルフィンドールズに地球侵略を諦めさせる。
そして、自分の世界へ帰ってもらうのだ。
俺はエルフィンドールズと向き合い、そして思った。
――――あらためて見ると、とても可愛い。
えっ、なにこの娘たち、こんなキラキラしてましたっけ?
超可愛いじゃん。
俺が戦う相手って怪人ですよね。
でも今、目の前にいるのは天使なんですけど?
なんかもうキュンキュンしてきちゃってるんですけど?
俺、全く勝てる気がしないんですけど?
覚悟ガンギマリだったはずなのに、一瞬にして、その覚悟が揺らぎ始めている。
あまりのキラキラっぷりに動揺を隠せない
すると、エステラさんが声をあげた。
「なんでまたそんなに見るんですか!?」
「えっ、あっ、すみません」
揃いも揃って、キュンキュンしている場合ではない。
準備した名乗りを上げて、名前と年齢を聞く。
できるだけ戦闘を長引かせて、エルフィンドールズの能力を把握するというノルマをこなす。
そして、俺はノルマをこなすだけではなく、エステラさんを倒すのだ。
俺レッドから順番に名乗りをあげる。
「灼熱の炎!
「新緑の風!
「漆黒の闇!
「
「癒しの光!
決まった。
突然の名乗り口上に、エルフィンドールズの二人が動揺している。
その気持ちは分かるが、俺はお構いなしに質問をする。
「五人揃って分身戦隊オレンジャーズというものなんですけど、お名前と年齢を、お聞かせ願えますか?」
果たして俺の質問に答えてくれるのだろうか。
エルフィンドールズの二人は、明らかに動揺しながらも、左側の少女(怪人)から答えてくれた。
「名前はナタリア。年齢は十六歳だよ」
ほぅ、左側にいる外ハネボブの元気そうな娘は、ナタリアさんというのか。
十六歳とは、ずいぶんと若いな。
「エステラです。年齢は十六歳です」
エステラさんも同じく十六歳か。
若いのに、しっかり仕事をしているな。
俺はエルフィンドールズの名前と年齢を聞き出せて満足した。
しかし、これで終わりではない。
ここからが本当の勝負だ。素直ないい娘でも容赦はしない。
エルフィンドールズは、
強いと言っても所詮は十六歳。
これしきのことで動揺するとは、まだまだ甘い。
図らずもチャンス到来、
素直ないい娘だとしても、地球から撤退してもらう。
タイミングを合わせた
「あっ、また襲いかかってきた! やあっ!」
「逆らわないで下さいって言ったのにっ! えいっ!」
前回は、ここで無様に負けてしまったが、今回は違う。
「見える、見えるぞ。俺にもエルフィンドールズの動きが見える!」
エルフィンドールズは、動揺したせいで力が出せないのか、動きが鈍い。
対して
バキッ!
ガキッ!
ドガッ!
それを見て、後方に控えている対怪人SATの皆さんから歓声が上がる。
前回、手も足も出なかったエルフィンドールズに
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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