第13話 過半数が俺の親睦会
立派な基地が完成したにも関わらず、星幽結社エルリンケイムは新たな怪人を送り込んでくることはなかった。
内部で何か作業をしているのかもしれないが、現状では何をしているのか全く不明だ。
その動向を確認をしたいところだが、
そのために膠着状態が続いている。
そんなある日のこと。
頑張っている
今回の親睦会は、警視庁公安機動特別部隊第四課で、部内の庶務を担当してくれている女性陣とご一緒だ。合コン要素のある飲み会と言っても良いだろう。
いつもイチャイチャしている俺レッドと俺ピンクが気を利かせて、話をまとめてくれていた。
第四課は庶務課とされているが、業務内容は一般的な事務作業だけではない。
怪我の治療や医療機関への護送、健康管理をしてくれる衛生班。
対怪人用スーツのメンテナンスを行ってくれる技術班。
公安機動特別部隊専属で、
様々な組織の垣根を越えて、日本中から優秀な人材が集まっている。
親睦会には、そんな第四課から三人の女性が来てくれた。
一人目は、対怪人用スーツの開発やメンテナンスでお世話になっている小根こずえさん。
国立科学研究所の小根博士のお孫さんで家柄も良く、自身も素晴らしく優秀な女性研究員だ。
だからと言って、それを鼻にかけることもなく『コネコさん』と呼ばれて、みんなに親しまれている。
眼鏡っ子。
二人目は、衛生班の看護師である新庄えみこさん。
部内には『怪我をしても新庄さんに会えるから幸せ』というファンも多い。
『別に心配はしていない』と言いつつ、自身の休日まで様子を確認しに来てくれるというツンデレさん。
おまけにセクシー。
三人目は、公安機動特別部隊のアイドルとも言われる川田ともみさん。通称ともちゃん。
男女問わず、部内でともちゃんのことを嫌う人はいないと言っても過言ではない。
一般事務を担当してくれているのだが、いつでも愛想良く対応してくれる。笑顔が眩しい。
俺ピンクが張り切って、選りすぐりの三人に声をかけてきてくれた。
俺ピンクも含めて可愛い女性が四人。部内の懇親会という名目ではあるが、合コンとしてみると男性四人に女性四人。
ベストバランスと言っても良いだろう。
だが、俺はあることが気になった。
計八人中、五人が俺だ。
過半数が俺。
バランスが悪い。
いやいや、過半数が俺っておかしくない?
俺は一瞬だけ疑問を抱いたが、気にしないことにした。
せっかくの機会なので、十分にこの場を楽しみたい。
「好きな食べ物あります? 注文しますよー」
よく気が利く公安機動特別部隊のアイドルともちゃんが注文をとってくれる。
「唐揚げで」
「唐揚げで」
「唐揚げで」
「居酒屋だしカレーはないか、じゃあ唐揚げで」
全員俺なので、同じ答えだ。
「休日は何をしてるんですか?」
今度は
「休日は寝てますね」
「休日は寝てますね」
「休日は寝てますね」
「休日はカレーを作るか、寝てますね」
どんな質問だろうが、全員俺なので、全員同じ答えになってしまう。
こんな合コン、盛り上がらない。
「あはははー、全員同じじゃないですかー」
かと思いきや、ともちゃんを中心に気が利く女性陣が分身ネタとして、盛り上げてくれた。
酒が入っているためか、しょうもない分身ネタでも受けるようだ。
俺はこのとき、初めてアストラル神に感謝した。
「ともちゃんの作ってくれた資料、いつも図解があって分かりやすいですよ。怪人の絵が可愛いし」
「へへ、ありがとうございます! 私、絵を描くのが好きなんですよー。漫画も描けますよ」
「そうなんだ、見たい」
「あ、そうそう。今日の訓練のとき、簡易計測器でアストラルパワーを測ったんですけど、以前の四倍ぐらい出てましたよ。
「それは良かったです! 祖父と相談しているところですけど、まだ改良できるかもしれませんし、期待して下さいね」
「本当ですか。それは楽しみです」
「対怪人用スーツのおかげで強くなったと言っても、敵もすごく強いので、また療養することになったらお願いしますね。新庄さん」
「言われなくても看護しますよ。仕事ですし。ただ私も忙しいので、なるべく怪我をしないで下さいね」
「ありがとうございます。今日も良い感じにツンデレですね」
そうして、なんだかんだで楽しい時間は過ぎていった。
さらに怪我をしても新庄さんが看護してくれる。
俺はみんなの期待を背負った戦隊として、この笑顔を守りたい。
次の戦いも全力で頑張ろう、そう思った。
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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