第11話 五人の俺、力を感じる

 五人の俺オレンジャーズのために開発された対怪人用スーツを着用する。


 きた! なんかきた!


 身体の奥底から熱を感じる。

 肉体の力とは違う、心というか魂というか、身体の内側に湧き上がってくる力を感じる。

 テンションが上がる。


 俺は嬉しくなり、周りにいる四人の俺赤、黒、黄、桃を見る。

 研究開発に参加した俺ブラックも満足気な表情だ。

 これは期待ができるだろう。


 対怪人用スーツを着用した五人の俺オレンジャーズは、一気に戦隊ヒーローのようになった。

 素晴らしい戦闘服だが、あえて難点を言うならば、一人で着るのが面倒ということぐらいか。着用に二十分かかった。


 そんなこんなで、意気揚々とシルバーメタリック怪人を倒しに行こうとした五人の俺オレンジャーズ

 だったのだが、一気にテンションが下がった。

 なぜならシルバーメタリックの怪人が増えているからだ。


 なんということだ。

 人数が増えるとかズルいじゃん。

 せっかく対怪人用スーツセットでパワーアップしたというのに。


 俺はそう思ったが、ぐずぐず言っても仕方ないので、エルリンケイム基地へと向かう。

 基地に到着した五人の俺オレンジャーズは、あらためてシルバーメタリックの怪人を正面に見据える。


「五人に増えちゃいましたね」

「前回は二人だったのに」

「ちょうど五対五だし、ひとり一体ずつを相手にする感じですかね」

「ですね。パワーアップした五人の俺オレンジャーズの力を見せてやりましょう」


 五人の俺オレンジャーズは、そんな会話をしながら、五人のシルバーメタリックの怪人と対峙する。


 曇天の空、富士山麓にごうごうと強い風が吹く。

 強敵を相手にピリリとした緊迫感が漂ってくる。


 今回は過去の戦闘にないほどの緊迫感だ。


 俺はわりと見た目から入る方だ。

 なので対怪人用スーツセットで戦隊ヒーロー感がマシマシになったことにより、もう負けられないというプレッシャーを無意識のうちに感じていた。


 目の前にいる強いシルバーメタリックの怪人は、五人の俺オレンジャーズにしか倒せない。日本、いや世界中からの期待を背中に感じる。


 俺は地球を守る戦隊の一員として、みんなの期待に応えたい。

 このプレッシャーすらを力に変えて、ここはガツンと行くしかない。


 俺は気合いを入れた。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じく気合いを入れただろう。

 

 五人の俺オレンジャーズは目配せをしてタイミングを合わせ、五人同時にシルバーメタリックの怪人に殴りかかった。


 俺は渾身の力でぶん殴る。


 バッキイイイイイィィィ!!!


 俺の右フックがシルバーメタリックの怪人にクリーンヒット。

 俺はワンパンでシルバーメタリックの怪人をぶっ飛ばした。


 対怪人用スーツによるパワーアップは予想以上だった。

 会心の一撃により、俺の不安やプレッシャーは吹き飛んだ。


 俺は周りにいる四人の俺赤、黒、黄、桃を見る。


 バギィッ!

 ゴスッ!

 ドガァッ!

 ズガンッ!


 俺レッド、俺ブラック、俺イエロー、俺ピンク。

 周りで戦っている四人の俺赤、黒、黄、桃も、それぞれシルバーメタリックの怪人を圧倒している。


 その姿を見て俺は、さらなる力が湧いてくる。


 た、たぎる!

 負ける気がしない!


 俺は悠々とシルバーメタリックの怪人に歩みよる。

 すでにシルバーメタリックの怪人は、よろよろと立っているのみ。


「……喰らえッ!」


 俺は渾身の右ミドルキックを繰り出した。


 ドッガアアアア! シュワワワワワッ!


 俺の渾身の右ミドルキックにより、シルバーメタリックの怪人は消滅した。


 対怪人用スーツ着用前は、五対二でも勝てる気がしなかったシルバーメタリックの怪人。それが五対五の対戦になったにも関わらず、全く苦戦もせずに殲滅できた。

 こうして五人の俺オレンジャーズは最強のスーツを手に入れた。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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