第10話 戦闘服、新調される

 俺はエステラさんたち二人組の少女(怪人)に、ワンパン二秒で倒されてから、ずっと療養している。

 俺が病室の天井を見上げるようになってから、早二週間が経つ。身体はすっかり回復したため、特にやることのない生活にも飽きてきた。


 暇を持て余している俺、俺ブラック、俺イエローの三人。

 俺たち三人のささやかな楽しみは、可愛い看護婦さんとたまにする会話ぐらいだ。


 そんな三人を尻目に俺レッドと俺ピンクは、病室で時々イチャイチャしているようだ。病室でどこまで何をしているのかは知らないが、全く持ってけしからん。


 禁断の恋を応援している身ではあるし、そんなことをする気は全くないのだが、もし仮に俺が俺ピンクに手を出して上手く行ったら、一体どういう状況になるのだろうか。


 ……うん、グリーンレッドからピンクをNTRとか哲学の領域だな、俺はあまりに暇すぎたため、病室で一人しょうもないことを考えていた。

 俺ブラック、俺イエローまで、同じことを考えたかは分からない。


 さて、そうして五人の俺オレンジャーズが療養している間、怪人はずっと富士山麓で測量のようなことを続けているらしい。


 今のところ大きな被害がないため、政府の対応としては、その様子を高い緊張感を持って注視するのみだった。


 しかし、事態は急変した。

 ある日、一夜にして富士山麓に巨大な基地が建っていた。

 福岡ドームのような開閉式ドーム型の建造物が一晩のうちに建っていたのだ。

 恐るべし星幽結社エルリンケイムの技術力。


 5人の俺オレンジャーズは状況に対応するため、療養を終了して、さっそく富士山麓にできたエルリンケイム基地の偵察へ向かった。

 エルリンケイム基地へ到着すると、そこには今まで見たことがないシルバーメタリックの怪人が二人で警備をしていた。


 シルバーメタリックの怪人は、太陽の光を反射してキラキラと輝きを放ち、見るからに強そうだ。

 そして、五人の俺オレンジャーズが少しエルリンケイム基地に近づくと、そのシルバーメタリックの怪人がいきなり襲いかかってきた。


 バキッ! ドガッ!


「こ、このパンチとキックのパワーは!」

「黒メタリックの比ではない!」


 五人の俺オレンジャーズは、次第にシルバーメタリックの怪人に押され始める。


 「グェェッ」


 俺はシルバーメタリックの怪人のパンチを腹部に受けて悶絶する。

 シルバーメタリックの怪人は強かった。


 五人の俺オレンジャーズは俺レッドを先頭に対抗したのだが、五対二の状況でも勝てそうな気がしない。

 しばらくの戦闘後、冷静に戦況を見極めた俺ブラックが本部へ確認を取り、今回は早々に撤退するということで話がまとまった。


 五人の俺オレンジャーズは、富士山麓に移転した本部へ撤退。シルバーメタリックの怪人への対策を練ることにした。


 怪人は五人の俺オレンジャーズでなければ倒すことができない。

 しかし現状、五人の俺オレンジャーズに勝算はなさそうだ。

 本部に重苦しい空気が漂う。


 そこへ朗報が入る。

 以前から開発を進めていた対怪人用スーツがついに完成したのだ。

 俺ブラックが黙々と研究開発へ協力していただ。


 ここで五人の俺オレンジャーズの戦闘服について、少し振り返ってみる。


 今までの戦闘服は、対怪人SATの皆さんと同じものを着用していた。

 黒っぽい色で、普通の防弾ヘルメットに防弾アーマーだ。


 所詮は普通の防弾ヘルメットに防弾アーマーなので、多少の物理防御があったところで、特殊な波長のアストラルダメージを軽減することができるわけではない。

 今までは怪人と戦う戦隊だからといって、機能も見た目も特別な戦闘服ではなかった。


 しかし、新開発された対怪人用スーツは違う。

 まさに対怪人用の戦闘服であり、戦隊ヒーローらしい仕上がりとなっていた。


 新開発された対怪人用スーツを着用すると、体内のアストラルエナジーを効率よく発揮できるようになるらしい。

 非着用時と比べて、アストラルパワーが300パーセント増しにはなるだろうとのこと。これは驚きだ。

 さらに専用のヘルメットとセットで着用した場合、受けるアストラルダメージも半減できると言っていた。


 素晴らしい。これならば対怪人用スーツ&ヘルメットと言える。

 

 それにしても一体どうやって、この素晴らしいスーツを開発したのか。

 俺の聞いた話によると――。


 もともと国立科学研究所では未知のエネルギーとして、アストラルエナジーの研究をしていた。

 そんな状況下で現れた星幽結社エルリンケイムの怪人。


 怪人の強さの秘密はアストラルエナジーの利用にあると推測し、研究のために倒した怪人の装備品を鹵獲ろかくした。その鹵獲ろかくした装備品により、アストラルエナジーの研究が劇的に進展。

 根本的な原理こそ解明はできないものの、星幽結社エルリンケイムの技術を一部応用することに成功し、対怪人スーツの完成へと繋がった。


 ありがとう。日本、そして世界の研究者の皆さん。


 さらに対怪人用スーツは、五人の俺オレンジャーズ、それぞれの名前に合わせたカラーリングにしてくれた。

 しかも原色バリバリではなく、渋くて深みのある大人っぽい色だ。


 さらにデザインはぴちぴちのタイツではなく、ミリタリー調のデザインでスタイリッシュに仕上がっている。とてもカッコイイ。


「このデザイン、渋くてカッコイイですね。すごい好みですよ!」

「ああ、俺の好みを伝えておきましたよ。どうせ全員の好み一緒だし」

「おお、そういうことですか。ありがとうございます」


 やけに俺好みのデザインとカラーリングだなと思ったら、開発時に俺ブラックが好みを伝えてくれていた。

 さすが俺ブラックだ。隙がない。


 こうして五人の俺オレンジャーズは、対怪人用スーツセットを着用することにより、パワーアップした。


 これなら強敵シルバーメタリックの怪人にも勝てるだろう。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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