第10話 戦闘服、新調される
俺はエステラさんたち二人組の少女(怪人)に、ワンパン二秒で倒されてから、ずっと療養している。
俺が病室の天井を見上げるようになってから、早二週間が経つ。身体はすっかり回復したため、特にやることのない生活にも飽きてきた。
暇を持て余している俺、俺ブラック、俺イエローの三人。
俺たち三人のささやかな楽しみは、可愛い看護婦さんとたまにする会話ぐらいだ。
そんな三人を尻目に俺レッドと俺ピンクは、病室で時々イチャイチャしているようだ。病室でどこまで何をしているのかは知らないが、全く持ってけしからん。
禁断の恋を応援している身ではあるし、そんなことをする気は全くないのだが、もし仮に俺が俺ピンクに手を出して上手く行ったら、一体どういう状況になるのだろうか。
……うん、
俺ブラック、俺イエローまで、同じことを考えたかは分からない。
さて、そうして
今のところ大きな被害がないため、政府の対応としては、その様子を高い緊張感を持って注視するのみだった。
しかし、事態は急変した。
ある日、一夜にして富士山麓に巨大な基地が建っていた。
福岡ドームのような開閉式ドーム型の建造物が一晩のうちに建っていたのだ。
恐るべし星幽結社エルリンケイムの技術力。
エルリンケイム基地へ到着すると、そこには今まで見たことがないシルバーメタリックの怪人が二人で警備をしていた。
シルバーメタリックの怪人は、太陽の光を反射してキラキラと輝きを放ち、見るからに強そうだ。
そして、
バキッ! ドガッ!
「こ、このパンチとキックのパワーは!」
「黒メタリックの比ではない!」
「グェェッ」
俺はシルバーメタリックの怪人のパンチを腹部に受けて悶絶する。
シルバーメタリックの怪人は強かった。
しばらくの戦闘後、冷静に戦況を見極めた俺ブラックが本部へ確認を取り、今回は早々に撤退するということで話がまとまった。
怪人は
しかし現状、
本部に重苦しい空気が漂う。
そこへ朗報が入る。
以前から開発を進めていた対怪人用スーツがついに完成したのだ。
俺ブラックが黙々と研究開発へ協力していたアレだ。
ここで
今までの戦闘服は、対怪人SATの皆さんと同じものを着用していた。
黒っぽい色で、普通の防弾ヘルメットに防弾アーマーだ。
所詮は普通の防弾ヘルメットに防弾アーマーなので、多少の物理防御があったところで、特殊な波長のアストラルダメージを軽減することができるわけではない。
今までは怪人と戦う戦隊だからといって、機能も見た目も特別な戦闘服ではなかった。
しかし、新開発された対怪人用スーツは違う。
まさに対怪人用の戦闘服であり、戦隊ヒーローらしい仕上がりとなっていた。
新開発された対怪人用スーツを着用すると、体内のアストラルエナジーを効率よく発揮できるようになるらしい。
非着用時と比べて、アストラルパワーが300パーセント増しにはなるだろうとのこと。これは驚きだ。
さらに専用のヘルメットとセットで着用した場合、受けるアストラルダメージも半減できると言っていた。
素晴らしい。これならば対怪人用スーツ&ヘルメットと言える。
それにしても一体どうやって、この素晴らしいスーツを開発したのか。
俺の聞いた話によると――。
もともと国立科学研究所では未知のエネルギーとして、アストラルエナジーの研究をしていた。
そんな状況下で現れた星幽結社エルリンケイムの怪人。
怪人の強さの秘密はアストラルエナジーの利用にあると推測し、研究のために倒した怪人の装備品を
根本的な原理こそ解明はできないものの、星幽結社エルリンケイムの技術を一部応用することに成功し、対怪人スーツの完成へと繋がった。
ありがとう。日本、そして世界の研究者の皆さん。
さらに対怪人用スーツは、
しかも原色バリバリではなく、渋くて深みのある大人っぽい色だ。
さらにデザインはぴちぴちのタイツではなく、ミリタリー調のデザインでスタイリッシュに仕上がっている。とてもカッコイイ。
「このデザイン、渋くてカッコイイですね。すごい好みですよ!」
「ああ、俺の好みを伝えておきましたよ。どうせ全員の好み一緒だし」
「おお、そういうことですか。ありがとうございます」
やけに俺好みのデザインとカラーリングだなと思ったら、開発時に俺ブラックが好みを伝えてくれていた。
さすが俺ブラックだ。隙がない。
こうして
これなら強敵シルバーメタリックの怪人にも勝てるだろう。
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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