第9話 俺は前向きで二課が気になる

 今日の俺は、病院の天井を見上げながら、約二週間ぐらい前の警視庁公安機動特別部隊第三課との訓練を思い出していた。



 ◇◇◇



【約一ヶ月ぐらい前のこと】


 午前の座学が終わり午後からは、対怪人SATである第三課の皆さんと一緒に訓練だ。


 俺は運動音痴ではないが、かと言って運動が得意と言えるほどでもない。いたって平均的な運動能力だ。


 それに比べて第三課の皆さんは凄い。


 警視庁にある全ての組織の中から特別部隊に抜粋されてきただけのことはある。ときどき一緒に訓練をするのだが、動きが違う。

 アストラルパワーとやらが第三課の皆さんにあれば、もっと楽に怪人と戦えそうなのに、と思ってしまう。


 動きがハイレベルな第三課の皆さんとの訓練なので、俺は少し憂鬱だった。他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じだろう、と思ったのだが、俺イエローだけは少し違って元気だった。


 俺は午後から始まる訓練の前に、俺イエローと一緒にランチに行く。


「俺イエローさん、今日の昼は何にします? やっぱりカレーですか?」

「俺グリーンさんは失礼だなぁ。俺だって毎日カレーではないですよ。今日はそうだなぁ……うーん、カレーにしよう。やっぱり食堂のカレー美味いですよね」


 結局、カレーになった。

 俺も俺イエローと一緒にカレーにした。

 俺イエローはカレーが好きだ。


「お、俺イエローさんは今日もカレーっすか。ほんとカレー好きっすね」


 俺イエローが第三課の皆さんから気軽に声をかけられて談笑している。

 俺イエローは、俺よりも前向きで明るい。

 そんな俺イエローなので、第三課の皆さんと仲が良い。


 午後になり訓練が始まった。

 今日は徒手格闘の訓練だ。


 怪人に対して今のところ有効な武器がなく、素手でダメージを与える必要があるため、五人の俺オレンジャーズが覚えるべき格闘術だ。

 必要な格闘術ではあるのだが、素手でガチムチの第三課の皆さんを相手にするため、かなり怖い。

 それにアストラルパワーの使用は禁止なので、全く勝てない。


「ぐぇぇぇぇぇ」

「俺グリーンさん、相手の動きをよく見て!」

「は、はいっ!」


 本気の訓練なので、談笑していたときの第三課の皆さんとは全く違う。

 生死に関わるので当然だ。


 もっとも俺は、薄められた上に五分割されているので、若干、生死感がおかしくなってはいるのだが。

 とはいえ、当然、怪人と戦って死にたくはないし、この日本のために頑張りたい。


 しかし、長時間の訓練で、いよいよ苦しくなってくる。


「ぜぇぜぇ、ちょ、ちょっと休憩を……」


 俺はさすがに体力の限界を感じ、少し休憩をさせてもらおうと思った。

 俺レッド、俺ブラック、俺ピンクの動きも止まっている。

 同じような体力レベルなので当然だろう。


 しかし、俺イエローは違った。


 俺と同じぐらい限界のはずなのに、諦めずに前を向き立ち上がり、第三課のガチムチさんに組み掛かっていく。


 俺はその姿を見て『同じ俺なのに、諦めず前向きに取り組む姿勢がとても素敵』そう思った。


 俺イエローの前を向き諦めない力は、俺の50パーセント増しといったところだろうか。

 俺は前向きで諦めない俺イエローを尊敬している。


 訓練が終わり、警視庁公安機動特別部隊長の権藤さんが訓練の総括をする。


「オレンジャーズの動きは素人丸出しで、まだまだどうしようもないが、それでもよく頑張っていた。特に俺イエローのやる気は良かった。俺はこの部隊から殉職者を一人も出す気はない。お前たちを含めて怪人による日本人の被害者はゼロがノルマだ。忘れるなよ」


 五人の俺オレンジャーズは日々訓練を重ね、頼りになる警視庁公安機動特別部隊の皆さんと共に、日本を襲う怪人に立ち向かう。


 それはそれとして、最近の俺は、警視庁公安機動特別部隊について、ひとつ気になっていることがある。


《警視庁公安機動特別部隊組織図》

 第一課

 分身戦隊オレンジャーズ


 第二課

 美少女ペア☆ホワイトシュシュ  ←なにこれ? 誰?


 第三課

 対怪人SAT


 第四課

 部隊内庶務


 俺は来年度の新卒で配属されると噂されている第二課が気になって仕方がない。

 他の四人の俺赤、黒、黄、桃も同じだろう。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。

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