第7話 勇気と俺と俺の恋

 俺は病院の天井を見上げながら、約一ヶ月と二週間ぐらい前に起きた俺ピンクをめぐる出来事を思い出している。



 ◇◇◇



【約一ヶ月と三週間ぐらい前のこと】


 座学でアストラルパワーについて学んでいる最中に怪人が出現した。またしても富士山麓だった。

 富士山麓に何かあるのか? そう思いながら、五人の俺オレンジャーズは富士山麓へ向かう。


 現場へ到着すると、いつもの黒メタリックの怪人がいた。

 ただいつもに比べて数が多い。

 過去三回は、測量をする怪人二人に護衛をする怪人一人の計三人チームだったのに、今回は測量する怪人四人に護衛をする怪人三人の計七人チームになっている。


「今回の怪人は人数が多いですね」

「ですね。ちょっと怖いですよね」


 俺は軽く動揺する。隣にいる俺イエローも軽く動揺している。


 怪人一人と俺一人はだいたい互角の戦闘力だ。

 少しでもビビると負けてしまうかもしれない。

 ただ怪人一人に対して、俺二人ならまず負けることはない。


 そこで俺は作戦を考えた。


 俺はごちゃごちゃと混戦になって訳がわからなくなるより、まずは怪人一人を五人の俺オレンジャーズのうちの誰かが一人で食い止める。

 その間に五人の俺オレンジャーズの中で二人組みを作り、残る怪人に対して、二対一の状況を作って攻撃する。

 そして二人組は担当した怪人を倒したら、すぐに一人で怪人を食い止めているところへ助っ人に入る。

 そんな作戦だ。


 問題は、どの俺が一人で怪人を食い止めるという、重要で怖い役回りをやるかということだ。


 俺が思い付いた作戦は、他の四人の俺赤、黒、黄、桃も思いついているはず。

 俺が相談しようと思ったそのとき、俺レッドが先に提案してきた。


「俺が真ん中の怪人を一人で食い止めます。その間に俺グリーンさんと俺ピンクさんは左側の怪人。俺ブラックさんと俺イエローさんは右側の怪人を倒してください」


 俺レッドが、重要で怖い役回りを買って出てくれた。

 俺は『同じ俺なのに、この人かっこいい。キュンとしちゃう』そう思った。


 俺レッドは転生してから日が経つにつれ、どの俺よりも勇気を見せるようになってきた。今の俺レッドは、俺に比べて勇気の力50パーセント増しといったところだろうか。

 もっとも俺レッドは最初から勇気の片鱗(堂々としたセクハラ行為)を見せていたわけだが。


「作戦開始します!」


 俺レッドが勇気を出して、一人で真ん中の怪人に立ち向かっていく。

 俺も俺レッドに負けられない。

 全力で担当である左側の怪人に、俺ピンクと共にパンチやキックを浴びせて攻撃する。


 バギッ! ドガッ!


 作戦は上手くいった。

 俺レッドの踏ん張りにより、作戦通り順番に怪人を倒して消滅させた。

 今回も五人の俺オレンジャーズの快勝だ。


 その後、怪人を倒した五人の俺オレンジャーズは本部まで戻り、その日は早々に解散となった。

 今日も頑張ったことだし、さっさと帰ろうかと思ったときだった。


 ん? 俺レッドと俺ピンクが何やら二人で話をしている?


 俺レッドと俺ピンクは何か少し会話をしたあと、二人揃ってどこかへ消えて行った。


 翌日、俺は俺レッドと俺ピンクから付き合うことになったと聞いた。


 なんということだ。

 俺が近親レベルとか悩んでいるうちに、俺レッドは勇気を出して告白したようだ。


 もしかしたら俺レッドは、俺よりも巨乳が特別に好きなだけかもしれないが、そうだとしても俺は俺レッドの勇気を見習いたい。


 昨日の戦いで見せた俺レッドの勇気には、男の俺でもキュンとしてしまったぐらいなので、女性の俺ピンクはもっとキュンキュンしていたことだろう。

 俺ピンクが俺レッドからの告白を受け入れるのも当然だ。


 俺も次に何かの機会があったら、あと少しの勇気を出したいと思う。

 今回、俺が俺レッドに学んだことだ。


 俺は、勇気がある俺レッドを尊敬している。

 俺レッドには、心優しい俺ピンクを幸せにしてあげてもらいたい。

 俺は二人の禁断の恋を応援したい。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る