第4話 俺は少女(怪人)に襲いかかる

 五人の俺オレンジャーズは、富士山麓に出現した、謎に包まれた二人組の少女(怪人)と対峙している。


 俺は敵を知るため、二人組の少女(怪人)を観察した。

 ただ俺には、眼前にいる二人が怪人という存在でありながら、可愛い普通の少女にしか見えなかった。


 俺はさらに一人ずつ凝視する。

 周りにいる四人の俺赤、黒、黄、桃も、食い入るように少女(怪人)を凝視している。

 正義の戦隊とは思えない光景だが、仕方がない。


 まずは左側にいる少女(怪人)。

 明るいオレンジベージュの髪色で外ハネボブ。

 目がくりっとしていてニコニコしている。

 元気で活発そうな娘だ。

 そして少し小柄で幼い感じが残るのに、へそ出しルック。

 ほどよく引き締まった腹筋がたまらない。

 まるで小悪魔。


 次に右側にいる少女(怪人)。

 上品なピンクブラウンの髪色に、ひしがたシルエットのふんわりとしたミディアムヘア。

 この娘は清楚系に見えるのに、思い切りのよい肩出しだ。

 その上、露出の多いコスチュームを着ておいて、少し恥ずかしそうにするとか反則だろう。

 まるで妖精。


 五人の俺オレンジャーズは、無言で二人組の少女(怪人)を見つめていた。いつになっても戦闘は始まらず、ただ時間だけが過ぎていく。

 五人の俺オレンジャーズは、全く飽きることもなく二人組の少女(怪人)を眺めていた。


 五分ほど経った頃、その膠着を打ち破るように、右側の清楚系少女(怪人)が大きな声を張り上げた。


「もう見過ぎですよっ!」

「えっ、あっ、すみませんっ!」


 右側の清楚系少女(怪人)に注意された五人の俺オレンジャーズは、即座に同じタイミングで謝った。

 我に返った五人の俺オレンジャーズは、二人組の少女(怪人)に襲いかかる。


「あっ、襲ってきた。それならっ! やあっ!」

「えっ、急になんですか! えいっ!」


 二人組の少女(怪人)は、そう言うと同時に反撃してきた。


 ドガッ!

 バキッ!

 ズガッ!

 ゴスッ!

 パチッ!


 五人の俺オレンジャーズは一人当たり二秒ほどで倒された。


 一体、なにが起こった!?

 な、なんだ? 身体が動かない?

 ま、まさかこんな可愛いらしい少女(怪人)に、あっさりと倒されるとは……。


 二人組の少女(怪人)は驚異的に強かった。

 今まで倒してきた黒メタリックの怪人の比ではなかった。


 仰向けに倒れた俺に、右側にいた清楚系少女(怪人)が、ゆっくりと歩み寄ってくる。俺にトドメを刺す気だろう。


 まだ転生して約三ヶ月なのに。

 短い戦隊人生だった。

 だが、これも勝負の結果だ、仕方がない。

 そうだ、最期に名前ぐらいは聞いておこう。


「……俺の名前は緑川みどりかわタカシ、通称、俺グリーン。最期に俺を倒したきみの名前を教えてもらえないかな?」

「えっ、わ、私の名前ですか!? え、えっと、私の名前はエステラです。これから地球で活動させてもらいますね」


 自らをエステラと名乗った少女(怪人)は、俺に顔を近づけてきた。

 俺は最期だと思い覚悟を決めたが、その必要はなかった。


「もう私たちに逆らったらダメですよー♡」


 そう耳元でささやいた清楚系少女(怪人)の言葉に威圧感などはなく、純粋な労わりの気持ちが伝わってきた。

 清楚系少女(怪人)はその言葉のあと、去り際にウインクをして、優しく微笑み、宙を舞い異次元空間へと帰っていった。


 な、なんだ!?

 帰っていったぞ!?

 俺を殺さないのか!?


 それにあの天使のような笑顔はなんだ?

 悪の組織の戦闘員ではないのか?

 名前も言っていったし。


 エステラさんか、怪人なのに可愛いが過ぎるだろう。


 ……ああ、そうだ、この出会いは、きっと運命に違いない。


 若干ストーカー気質がある俺なので、エステラさんをライバルとして認定させてもらうことにした。

 ただ俺には、エステラさんたちは敵ではない、そんな気もした。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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