第3話 俺は少女(怪人)を観察する
五人の俺が転生してくる少し前のこと。
突如として人類に対し『我々は
そして、世界各地へ戦闘員と思しき異形の人を送り込んできた。
人類は、世界各地に現れた異形の人により蹂躙、虐殺され、地球を乗っ取られてしまうのではないかと恐れ慄く。
それに対し日本を含め世界各国の政府は、異次元空間から出現した謎の組織を、その名乗りの通り『星幽結社エルリンケイム』、戦闘員と思しき異形の人を『怪人』と呼称し、最大限に警戒、対抗するための組織を整備した。
五人の俺が転生してきたのはこの頃だ。
世界各地に怪人が現れる中、日本も例外ではなく、何度となく怪人に襲撃されることになる。
しかしその都度、分身戦隊オレンジャーズを中心とした対怪人用臨時編成組織である警視庁公安機動特別部隊がそれに対抗、撃退に成功した。
そして、今回七度目となる怪人による襲撃。
七度目の襲撃で日本に現れた怪人は、のちにミツバチ怪人エルフィンドールズと呼称されることになる最強クラスの怪人だった。
◇◇◇
俺レッド。
俺グリーン。
俺ブラック。
俺イエロー。
俺ピンク。
五人揃って分身戦隊オレンジャーズ。
それぞれ完全に別人ではあるが、五人とも素材は俺。
俺レッド、俺グリーン、俺ブラック、俺イエローの四人は転生前と変わらずに男性だ。
しかし、俺ピンクだけは女性。
黒髪ショートが似合う可愛い女性だ。しかも巨乳。
そして今の俺は、怪人が現れたという現場へ急行している。
いつのまにか今回の出動で早七度目となる。
俺は七度目の出動ということで、すっかり油断していた。
油断しているのは、俺だけではない。
こんなとき全員が同じ性質というのは、かなりのデメリットだ。
俺が油断するのにはわけがある。
すっかり憧れの強い戦隊ヒーローになった気でいた。
敵となる相手は、昆虫顔で黒メタリックのコスチュームに身を包んだ怪人だった。
『キィキィ』としか言葉を発せず、知能があまり高くはないようで、近づくと本能的に攻撃をしてくる野生動物といった雰囲気だ。
ただ、怪人は知能が低くても、通常の銃火器では倒せない強敵だ。
初戦は忘れもしない、
そのときの
そんな初戦の結果に、怪人をそれほど恐れることはないと悟った
そうした経験を経て、今回七度目の出動。
そんなわけで、俺は今回も余裕だろうと思いながら、怪人が現れたという現場へ向かっている。
しかし、現場に到着した俺は困惑した。
隣にいる俺ブラックも困惑している。
俺は予想もしない、その怪人の姿に目が釘付けになった。
隣にいる俺イエローも目が釘付けになっている。
なぜなら俺が目にした怪人は、どことなくミツバチをイメージさせるコスチュームを着た普通の女性にしか見えなかったからだ。
しかも年頃が十代半ばぐらいの可愛らしい少女二人組。
「えっ、あれが今回の怪人ですか」
俺は困惑しながらも隣にいる俺ブラックに確認をする。
現状、人見知りの俺同士の会話なので、お互いにまだ丁寧語だ。
「今までと全く違いますね。念のため本部に確認してみましょう」
俺と俺ブラックが会話をするその横で、俺レッドと俺イエローも全く同じ会話をしている。
なんだかんだで俺ピンクが本部へ確認を取ってくれ、目の前にいる二人の少女は、新種の怪人ということで確定した。
見た目が可愛らしい少女でも怪人であるならば、地球を守る戦隊として倒さなければならない。
それにはまず敵のことを知る必要がある。
兵法の基本だ。
ということで、俺は少女(怪人)を観察した。
とりあえず一見した感想は、二人とも露出が多い。
黒を基調とした丈の短いトップスに短いスカート。
薄手の生地でヒラヒラしているし、どう見ても戦闘には向かない格好だ。
胸開きトップスからチラッと見える白い素肌が悪魔的に美しい。
膝上まであるタイツは、オレンジと黒の横縞模様。
ミニスカートとタイツの間に見える健康的な太ももが、とても眩しい。
それから注目すべき点として、彼女たちの背中には小さな羽根が生えている。
羽根は本物なのか?
パタパタと小さく羽ばたいている。
と、ここまでは共通、二人とも異次元レベルの美少女だ。
ふぅ、眼福、眼福。
エロくて可愛い娘たちだな……。
俺はすっかり満足した。
って、違う! そうではない。
俺は敵の情報を収集しているのだ。
ということで俺は、さらに少女(怪人)を一人ずつ観察した。
◇◇◇
次回のオレンジャーズはいよいよ少女(怪人)と対決する。
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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