第2話 俺が俺にセクハラする
少女を庇って死んだ俺は、なぜか五人に分割されて、パラレルワールドの地球で転生していた。
俺レッド。
俺グリーン。
俺ブラック。
俺イエロー。
俺ピンク。
五人揃って分身戦隊オレンジャーズ。
これが今の俺だ。五人とも俺。
見た目はちょっとずつ違うけど、全員、俺だ。
確かに俺はヒーローが好きだったけれど、これは何かが違うだろう。
で、五人いると言っても実際のところは、俺一人分のことしか分からない。でも周りにいるヤツも俺だなって感じがする。
きっとこの感覚は俺にしか分からない。
周りにいる俺もそう感じているだろう。
俺同士だから楽かと言うと、そんなことはない。
結構、気を遣ってしまうのだ。
なぜなら俺は、かなりの人見知り。
全員、俺だから全員、かなりの人見知りということだ。
俺は俺と初対面だから、緊張して気を遣うのも当然だ。
隣にいる俺レッドからも緊張感が伝わってくる。
五人の俺は、転生してすぐに分身戦隊オレンジャーズを名乗るはめになった。
確かに俺は、戦隊ヒーローが好きだった。
ただそれは、自分にないものを持つ存在に、憧れていただけだ。
実際の俺は、戦隊を名乗って目立ちたくはない。
現状、わりと困っている。
隣にいる俺ブラックも困っているはずだ。
それならば戦隊を名乗らなければ良いのだろう。
だが、転生したばかりで動揺しているところへ、国家権力から命令されてしまっては仕方がない。
理不尽だと思いはしたが、憧れていた戦隊ヒーローになるのも悪くない。そう思い込み、自分で自分を納得させた。
後ろにいる俺イエローもそうやって自分を納得させているだろう。
転生してすぐ戦隊を名乗ることになった俺は、これから悪の組織と戦わないといけないらしい。
とはいっても、俺は争いごとは嫌いだし、喧嘩など一度もしたことはない。だからあっさりとナイフで刺されたわけだし、悪の組織と戦える気はしない。
それでも俺は、戦隊になった以上は全力で頑張りたい。
後ろにいる俺ピンクもそう思っているはずだ。
俺がそんなことを考えながら、ぼんやりしていると。
「……俺グリーンさん、ちょっと俺グリーンさん、どうしたんですか?」
「あ、俺レッドさんか。すみません。ぼーっとしちゃって。俺グリーンって呼び名、まだ慣れないんですよね。ははっ」
「ですよね。俺も俺レッドに全然、慣れてないですよ。ははっ」
俺は俺レッドに呼びかけられたが、すぐに反応ができなかった。
早いところ『俺グリーン』になったことに、馴染んでいった方が良いだろう。
それに俺の所属する組織や、敵対する悪の組織などについても、これから詳しく知っていきたい。
ともあれ色々と問題はあるが、戦隊になったことは、まあ良いだろう。
とにかくできることを順番に頑張っていくだけだ。
そんなことより、もっと重要なことがある。
最初『見た目はちょっとずつ違う』と思ったが、あれは間違いだった。
いや、全てが間違いではないのだが、なんというか、俺ピンクは女性だ。
俺レッド、俺ブラック、俺イエロー、そして俺グリーンは、転生前と変わらずに男性だ。
四人の見た目は、まあ似ている。
しかし、俺ピンクだけは違う。
俺なのに女性。
黒髪のショートが似合う可愛い女性だ。
俺なのに可愛い。俺が可愛い。
しかも巨乳。
俺なのに巨乳。俺が巨乳。
俺がたゆん、たゆんしているとは、どういうことだ。
どうしても俺は、可愛い巨乳ちゃんの俺ピンクが気になって、チラチラと見てしまう。
隣にいる俺レッドも間違いなく気になっているだろう。
だって俺だし。
いや、俺レッドはチラ見どころではない。
ガン見している。
いやいや、俺レッド、巨乳を見たい気持ちは分かるのだが、さすがにそれは見過ぎだろう。
ビィィィィィンンッ!!! ビィィィィィンンッ!!!
『怪人が現れました。オレンジャーズは直ちに出動して下さい!』
世界各地で、その姿が確認されている謎の怪人。
その怪人がついに日本にも初めて姿を現したのだ。
そして、それを皮切りに、日本にも何度となく怪人が出現する――。
◇◇◇
次回のオレンジャーズは、運命の相手ミツバチ怪人エルフィンドールズと邂逅する。
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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