分割されて転生。地球を守る五人の俺vsキュートな少女や極悪幹部を擁する謎の組織

同歩成

第一章 兆し

第1話 俺、五分割

 巨悪に立ち向かう孤高の戦士、メンバー全員の力を合わせて戦う戦隊、巨大化する異星人、プリティな魔法少女。

 俺は勇気や強い心を持つヒーロー、慈愛に満ちた可愛いヒロインが好きだ。

 きっと俺自身に無いものを持っているからだろう。


 あるとき、俺は街をぶらぶらと歩いていた。

 するとナイフを振り回して暴れる男に遭遇した。

 近くには制服の上からでも発育の良さがよく分かる可愛い少女がいる。

 若干ストーカー気質のある俺は、会話をしたことがないにも関わらず、その少女が近所に住む少女だとすぐに分かった。


 あっ、あれは近所の可愛い娘!?

 ああ、危ない!

 すぐに助けないと!

 って、いやいや、俺には無理だ、怖すぎる。

 ここは警察を呼んだ方が無難だよね……。


 勇気も愛も強い心も持たない俺なので、見過ごそうとしたはずだったのに。


 ドクンッ!


 あれ? なんだ!?

 急に胸の奥が熱くなってきた!?


 どういうわけか胸がうずき、俺は考えとは反対に少女を守った。


 グサリッ!


 俺は暴れる男にナイフで刺された。



 ◇◇◇



 俺は気がつくと、見知らぬ空間にいた。

 多くの瞬く星が集まった銀河のようなものが幾重にも見える。


 俺は一体どうなったんだ?

 ここはどこなんだ?





 ――――そこは異次元空間にある、とある場所。


 その中心にはアストラル神と呼ばれるモノがいた。

 アストラル神は、宇宙に安寧をもたらすモノと言われ、見た目は男性とも女性とも分からない、中性的で美しい人のような姿をしている。


 そんな偉大なるアストラル神の前に、ひとつの大きなアストラル体が運ばれてくる。

 アストラル神は、そのアストラル体へ向かって言葉をかけた――――。





『地球で死んだあなた。大きくて立派なアストラル体をしていますね』


 えっ? なに? なんだって?

 今、地球で死んだあなたって言った? 俺のこと?

 俺、やっぱり死んだの?

 なぜか俺、少女をかばったんだよね。俺らしくもない。

 で、なに? 立派なアストラル体?

 なにそれ? 一体なんのことだろう???


 動揺する俺だったが、自分の状態に気がついた。

 フワッとしている。


 えっ、今の俺、肉体がない感じ?

 このフワッとしたのがアストラル体ってこと?

 幽体離脱的な?


 俺はナイフで刺されて死んで、肉体が消滅し、アストラル体とやらになっていた。


『これはこれは……。本当にすごいですね。これほど大きく濃厚なモノは、見たことがないレベルですよ。その上、レアな地球産のアストラル体とは……』


 んん?

 俺、さっきから目の前にいる知らない美形の人に話しかけられている?

 この人がどなたかは分からないが、話ができるのならば質問をしよう。


「‥‥‥?」


 って、俺、喋れないんですけど。

 えっ、なにこれ。

 俺だけ喋れないとかズルいじゃん。


 美形の人は、今度はどこともなく遠くを見ながら、言葉を続ける。


『最近の宇宙は、深刻なアストラル体不足なんです。特に上質とされる天の川銀河産のアストラル体が不足し、価格が高騰しておりまして、予算を増やせない当方としては、入荷があまりできないのです』


 俺が喋れないのに、美形の人は一人で喋り続けている。

 自分勝手すぎるだろう。

 だいたいアストラル体が高騰しているってなんだ?

 入荷ができない?

 今の俺、原材料みたいな扱いなの?


『そんなわけでありますので、あなたのアストラル体を少し薄めた上で、五つに分割して転生させます。あなたは五人に生まれ変わります』


 えっ、急になに言ってるの?

 いや、俺、薄められて五つに分割されたくないんですけど!?


『地球産のアストラル体で、五分割は初めてですよ。光栄ですね。これから世のため人のため一人で五人分、頑張ってください。ブフッ』


 いや、光栄って、最後、我慢できずに笑ったじゃん。

 馬鹿にしてない?

 俺、けっこう良いことして死んだと思うんだけど?

 それにも関わらず、五分割して転生って、ひどくない?


『私はアストラル神、宇宙に安寧をもたらすモノ。この判断は正しいのです。それではまたいつかお会いしましょう。お達者で』


 えっ、アストラル神?

 神様って、最後にカミングアウト!? 本当に!?

 いやいや、本当に神様なら俺の話を聞いて下さい!

 って、今の俺、喋れませんけどね。

 じゃなくて、本当にちょっと待って!

 神様、お願い!


 って、ほわぁああっ!!!???


 俺は何の反論もできないまま、どこかへ飛ばされた。


 五分割されて。



 ◇◇◇



 俺は五人に分割されて、パラレルワールドの地球で転生していた。


 俺レッド。

 俺グリーン。

 俺ブラック。

 俺イエロー。

 俺ピンク。


 五人揃って分身戦隊オレンジャーズ。


 これが今の俺だ。

 五人とも俺。俺だらけ。

 いやいや、確かに俺は戦隊ヒーローが好きだったけれど、これは何かが違うだろう。

 なんだこれは???



 ◇◇◇



 次回のオレンジャーズは、五人の俺の現状を確認する。

 えっ、俺ピンクって女性なの!?


 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い始める?

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!







 ◇◇◇◇◇


 第一話をお読みいただきまして、誠にありがとうございます!

 頑張って更新していきますので、お気軽にフォローしてもらえると嬉しいです!

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