第202話 帰国
ヴォイヴォイヴォイ、ゴウン、ゴウン、ゴン、ゴン、ゴゴ…
グリーンノアが入港して動きを止めると、それに合わせてコロンボの海岸沿いに詰めかけた人々から大歓声が上がる。
国中の人がこの街に来ちゃってるんじゃないだろうか、そう思わせるほどの人、人、人の数に圧倒される。
堤防の上に車がズラリと並んで停まっているのが甲板上から見える、真ん中に停まっているショキングピンクの派手なオープンカー、たぶん僕が乗るのはあの車だな、貴子ちゃんのことだからオープンカーと言えど完璧な防弾仕様なんだろう。
覗き込んで見れば下部のタラップから李姉ちゃん達が先に降り始めていた、さて、そろそろ僕も下に向かうか…と踵を返そうとすると黒夢にヒョイと担がれた、そのまま甲板の上からピョ~ンと堤防に飛び降りる。
「ちょ、黒夢!」
「時間短縮、3分20秒ノ遅レ」
「「「「「キャァアアアアアアアア!!!!」」」」
スタンッ
「「「「「ウォオオオオオオオオオオ!!!!」」」」
悲鳴と歓声。皇帝が帰国早々に事故死なんてしゃれにもならない、しかし黒夢が何事もなかったように普通に着地して歩きだしたので安堵する。
凄えな黒夢、僕を担いだままこの高さをなんの衝撃も感じさせずに着地するとは、30mはあるぞコレ、黒夢にそっと降ろされてさっきまでいた甲板を見上げる。
ふむ、時間短縮はいいけど幼女に担がれる皇帝はどんなもんなんだろうね。
「ささっ、鉄くんこっちやこっち、うちの隣に乗って!!」
堤防に並んだ車、一際目立つショッキングピンクのメルセデスのオープンカー、その後に停まっている黒塗りのオープンカーに乗った真澄先生が笑顔で僕に手招きしている、ゆったりとした純白のドレスにシルバーのティアラがキラキラと輝いてまるで王女様のようだ。
パシーン!
「アホか、貴様は!鉄郎君は女王である私の隣に決まっておるだろうが!」
これまた純白のドレスに白衣を纏った貴子ちゃんがハリセンで真澄先生の頭を引っ叩く、それを見た観客がなぜか「いいぞ、女王ちゃん!大阪女なんかやってまえ!」とヤジまじりの声を上げる、結構人気あるんだな貴子ちゃん、見た目が幼女だからか、そして真澄先生は色々と大丈夫? それにしても貴子ちゃん、白衣は外せないんだね、あっ、そうか、着てないと見た目が
見れば真澄先生の車の後には東堂会長といつの間にか京香さんが乗っていた、その後にはこれまた国に帰っていたはずのジュリアさん、次いでアナスタシアさん達がそれぞれ純白のドレスに同じくシルバーのティアラを着けて座っている、僕と目が合うと皆ニッコリと微笑んでくれた、どうやら僕のお嫁さんのお披露目も兼ねているようなのだが、あらためて見るとこのメンバーは我が事ながらちょっと美人さんが揃い過ぎじゃなかろうか?
今度お父さんに会った時に自慢していいかなと考えていると、黒夢に呼ばれる。
「パパの車はコレ」
黒夢が予想通りにピンクのオープンカーのドアをカチャリと開けてくれる、運転席には白いスーツ姿が凛々しい児島さん、助手席には真っ赤なチャイナの李姉ちゃんが座った、紅白で実におめでたいし二人に感じる安心感が半端ない、僕が真ん中の列に乗り込むと貴子ちゃんが隣にストンと腰を下ろす、黒夢は後の座席に乗り込んだ。
「では、ファイトォしゅっぱぁーっつ!」
プパァァァーーーーン!!
貴子ちゃんの号令に児島さんがクラクションを高らかに鳴らすと、僕たちを乗せた5台の車列がゆっくりと動き出した。
「「「「ワァァーーッ、皇帝陛下、万歳ィ!!」」」」
コロンボの街、前にお母さんとジュリアさんがバイクレースをしたコースをパレードは進む、あの時の熱狂も凄かったがその時とは比べものにならないくらいの人数で沿道が埋め尽くされていて紙吹雪が舞っている、皆が万歳、万歳と叫びながら手を振っていて。僕も負けじと笑顔で手を振り返せば、黄色い歓声が倍以上になって帰ってくる。
「キャアーーーーーーーーーツ!!」
「凄っ、この国ってこんなにいっぱい人が住んでたんだ」
「いや、明日の式典に参列予定の国の連中も招待しているから、普段の10倍くらいの人数はいると思うよ」
僕の呟きに貴子ちゃんが答えてくれる、ほへぇ、僕らがグリーンノアでのんびり航海してる間に色々準備してたんだね、感謝感謝!
ママチャリみたいな速度で街を1周だったからお屋敷に着くのに結構時間がかかってしまった、門の前で並んでるセコムのお姉さん達にお礼を言いながら敷地に入る、しばらくすると大きな屋敷が見えてきた。
カチャリ
李姉ちゃんがドアを開けてくれたので車から降りた、屋敷の玄関前には着物姿の婆ちゃん、お母さんを筆頭にメイド服姿の元私立九星学院のクラスメイトと生徒達、それと親衛隊の皆が綺麗に並んでいた。うぉぁ、なんかいつもより迫力があるな。
「「「「お帰りなさいませ鉄郎様!!」」」」
皆が一斉に大きな声でおかえりと言ってくれる、僕の返事は自然と口から出た。
「はい、ただいま帰りました」
この光景に帰って来た事を実感するなんて、随分僕も成長?したものだ、只の田舎の高校生だった僕が流されまくって
人の人生など本当に一瞬先にはどうなるかなんてわからないものだ、その最たる原因である隣に立つ貴子ちゃんを見る。
「ん、どうかした?」
「いや、貴子ちゃんにありがとうってまだ言ってなかったなぁって思って」
「ん〜、お礼を言われるには、ちょ〜〜〜っとまだ早いかな、明日の式典はもっと凄いよ期待しててね」
そう言って貴子ちゃんはニッと笑った。
えっ、僕これ以上何やらされるの?
「ささ、鉄郎様。もうお支度のお時間がありません、お早くお屋敷に」
児島さんに背中を押され、僕は慌ただしくも久しぶりに帰宅を果たした、えっ、誰か説明してくれるんだよね?
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