第193話 大は小を兼ねない

貴子ちゃんが絶好調でノリノリだ。

まるでラノベのチート主人公がぶっ放す大魔法のような威力の攻撃を嬉々として繰り返す、エクスプロージョン!って叫んだ方がいいだろうか。エリア51の広大な大地に流星群が落ちたようなクレーターが幾つも出来ている、これ後で整地するの大変だぞ。

大体が貴子ちゃんって今の見た目通り子供っぽい所があるから、こうなると子供が無邪気に虫を壊すような残虐性が出ちゃうんだよな、どこかで僕が止めなきゃまずいよな。


「ハーーハッハー!!鉄郎くんの世界征服を邪魔する奴はとっとと死ねーーーーーっ!!」


キイァァァァァ、キイァァァァァーーーーーーーー!!

チュド、チュド、チュドォーーーーッ!!チュドーーン!




チュイン


「くっ、おわぁ!!か、かすった、あっぶな~」


おのれぇ、あのド変態幼女め、当たれば一瞬で蒸発するような衛星レーザーをポンポン撃ちやがって、これじゃバリアがもたんぞ。一体何基の衛星を使ってるんだコレ。

それに筋力増強剤の使用限界が近い、追加してもいいが明日からは絶対に車椅子生活だな。

でもこれ薬と推進剤が切れたら終わりだしな、とりあえず気休めにミサイルでも撃っとくか。

周りが穴だらけだがまだ機械が動くか?


衛星レーザーの光の雨がエボラ教授に降り注ぐ、圧倒的な火力差は既に一方的な虐殺のレベルに達している、しかし靴に何か仕込んであるのか高齢者とは思えない素早い動きで貴子の攻撃を紙一重で避けて見せている。

しかも時々ミサイルまで飛ばして迎撃しくるのには感動すら覚える。


「ハッハー、ジェット推進搭載の靴にドーピングによる筋力強化か、やるじゃないか虫ケラの分際で、私相手にここまでねばれるとは誉めてやるぞ!」


「貴子ちゃんそれじゃ魔王のセリフだよ」


エボラ教授が息を乱しながらも言い返してくる。


「はぁはぁ、うっさいわ、貴様これだけの力を持ちながらなぜ今まで動かなかったのだ!!」


「はぁ?世界征服のことを言ってるのか?こんなつまらん事は鉄郎くんに頼まれなきゃやるわけないだろうが、面倒臭い」


「えっ、そうなの?僕てっきり自分の罪を償う意味もあるのかと思ってたんだけど」


「へっ?つ、罪?いやー、まぁ、私は罪なくらいの超美少女だが、へへへ」


「いや、そんな事言ってないし、照れるなし」


「皇帝陛下!こいつはこう言う奴です、昔から自分の事にしか興味がないド変態野郎です!!だまされないで!」


「余計な事言うなババア!!今度は出力100%で撃つぞ」


キレやすい幼女である貴子ちゃんがバリアの中で右手を天に掲げる。撃つのか100%の衛星レーザー?



「あっ、そうだ貴子ちゃん」


「何?鉄郎くん」


「エボラ教授はコロコロしちゃ駄目だからね」


「えっ、なんで?」


眉間に皺を寄せて「何言ってんだコイツ」みたいな顔で本気で首を傾げられた、これは完全に忘れてるな。


「シカゴでちゃんと話したよね、エボラ教授はマイケルさんの親戚だって、だからコロコロしちゃ駄目、絶対!」


「いやいや、鉄郎くん、そう言う事は攻撃する前に言ってもらわないと」


貴子ちゃんが目を泳がせながら汗をぬぐう、あ~、さっきまでの衛星レーザーでも相当やばかったんだ。


「しかし、鉄郎くん、そうなると非常に難しいかもしれないよ、私手加減は苦手なんだよ、一瞬で灰にする手ならいっぱいあるけど、あのバリアだけを壊す中途半端な火力は……」


「……それって?」


「うん、ゴキブリを殺すのにミサイルしか持ってないようなもんだね、ハッハー、てへぺろっ」


「てへ、じゃないでしょ、どうすんのさ!他の人はちゃんと生きてるのにエボラ教授だけ死なすわけにはいかないでしょ」


う~ん、殺さずに勝つって意外と難しいんだな。こんな事なら黒夢くろむを連れて来るべきだった、でも諦めるわけにはいかない、マイケルさんと約束しちゃったしな。

マイケルさんは生まれて初めての男友達だ、その家族を僕が殺すのは勘弁願いたい。


「あっ、最初にやった電撃は?」


「あー、あれは1回やると一帯の電気使い尽くしちゃうから連射出来ないし、ピカピカ光って派手だけど脅かし用だから威力は微妙だったんだよね」


「う~ん、どうする、どうするのが正解だ……考えろ僕」


「じゃあ、私がやってやろうか?」


ジャリ


「えっ、婆ちゃん!」


考え事をしていたら後ろから声をかけられる、振り向いてみればナイト2000を追っているはずの婆ちゃんが居た。

婆ちゃんは刀で肩をトントンと叩きながらニヤリと笑う。


「黒いのはもうぶった斬って来たから安心おし」


婆ちゃんの向こう側にパガーニが停まっていて、助手席ではアナスタシアさんがグッタリしながらもピースサインをしている、もう終わらして来たの、早くない!


エボラ教授も婆ちゃんに気づいたのか、鋭い視線を僕らに向けて来る。


「武田春子、貴様がここに居るってことはナイト2000はもう……」


「あぁ、貴様が最後だよ教授」


「くっ」


うむ、婆ちゃんの登場は正直助かった、貴子ちゃんは完全なオーバーキルな最終兵器だからな、これでエボラ教授を死なさずに捉える事が出来るかも。貴子ちゃんが不満気に婆ちゃんに話しかける。


「春子、お前の刀じゃあいつのバリアは破れんぞ、私の衛星レーザーでもれないんだからな」


「ばかの一つ覚えみたいにポンポン撃つから避けられるんだ、頭を使え頭を」


ゴン!


「あうち!」


婆ちゃんが刀で貴子ちゃんの頭を小突く、あれ?なんでそんな簡単に叩けるのバリアは?不思議がっていると婆ちゃんが僕を見て口を開く。


「鉄、世の中、大抵の事は気合でなんとかなるんだよ、覚えておきな」


「気合なんだ……アニマル浜口最強伝説かよ」


でも婆ちゃん、ニューヨークでは確かバリアを斬れなかったよな、大丈夫か。


「さて、悪いが選手交代だエボラ教授、ここからは私が相手してやるよ」


婆ちゃんが刀の切っ先をエボラ教授に向け告げる、それに対してエボラ教授は口角を少し上げたように見えた。



カァ~~~~~~~~ン!!


貴子ちゃんがどこから出したのか、第2ラウンド開始のゴングを高らかに鳴らした、どこから出したのそれ!


考えてみるとエボラ教授に貴子ちゃん、それに婆ちゃんと高齢者めっちゃ元気だな。


コン!


「あうち!痛いよ婆ちゃん」


「鉄、なんか失礼な事思っただろう」


「テヘペロ♪」

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