第176話 燃えているアメリカ
次の目的地イタリアに向かうため黒夢がB-2スピリット(爆撃機)のエンジンに火を入れる、ターボファンエンジンがキュイイイイイイイと甲高い音を立てて目覚めた。
黒夢がいざ発進と操縦桿に手を添えた時、怪訝な顔を浮かべた。瞳をチカチカと青白く点滅させながら僕に向かって話しかけて来る。
「パパ、アメリカから電話、ツナグカ?」
「アメリカ? シェルビーさんかな? うん、スマホにつないでくれるかな」
「
すると僕のスマホがブルブルと震えて着信を知らせて来る。ええいシートベルトのせいでポケットから出しづらい、画面を見ればやっぱりシェルビー大統領からだった。
ピッ
「もしもし、ハロー、鉄郎です」
あれ、無言。切れちゃったかな?
「もしも~し」
「……………はっ! 申し訳ありません、神の玉音が耳元で聞こえたもので、心が震えてとっさに声が出ませんでした」
「えっ、電話ってそういうものじゃないの?」
「えっ、電話で神の声は普通聞くことは出来ませんよ」
「……今度、僕の事を神って言ったら絶交ですからね」
「私に死ねとおっしゃる……」
う~ん、シェルビーさんって話ずらいな、微妙に噛み合わない。
「で、用件はなんですか?」
「はっ、大変申し訳ありません!! 実は母君(夏子様)にもお願いしたニューヨークの男性特区でのデモの件のですが、日を重ねるごとに規模が拡大してまして、事は緊急を要することになってしまいまして」
「ありゃ、それはまた」
「鎮圧しようにも貴重な男性が相手なので我々も思い切った攻撃が出来ず、アメリカ政府としても手の打ち用がなく……」
「じゃあ、早いほうがいいですね、黒夢、目的地を変更する、急いでアメリカに行くよ」
「ラジャー」
皆から反対意見が出る間も与えず、黒夢が目の前に並ぶ計器の中で怪しげな
「ん、黒夢、そのボタンは?」
「加速装置?エンジンのリミッターを解除することでスピードが3倍にナル、とても便利」
バフウォオッ!!
そう言って首を傾げた次の瞬間、B-2のアフターバーナーが轟音とともに青白い火を吹く、パリのシャンゼリゼ通りをまるでカタパルトから射出されるような強烈な加速で一気に駆け抜ける、首がクキッってなった。
「アッ、パパご免なさい、パワーは3倍だけどスピードは空気抵抗もあって2倍程度ダッタ」
「う~ん、安全運転でね」
エールフランスの直行便で10時間かかる約5,300kmのルートを約1500km/h (約マッハ1.2)で飛び5時間弱で、ニューヨークのニューアーク・リバティー空港に降り立つ。(※途中米軍の空中給油を受けたが燃料を2000ガロン(7400リットル)しか入れないのでKC-Zのパイロットに心配されたが、どうやら空中給油のテストがしたかったようだ、ハイブリッドに改造?してあるので米軍のオリジナルより燃費はいいらしい)
「おのれ、クソヤンキーが!次は私の番だったのに~、ローマの夜景を眺めながらズッポリとする予定がぁ!!」
それにしてもジュリアさんがイタリア行きをドタキャンされて激おこだ、う~ん、もう食材とか準備してたのかな?けど緊急事態だものしかたないよね、だからそんなに殺気だつのは怖いのでやめてくれませんか。
早くも婚約者にビビらされる鉄郎だった、正直ひよりたくなる。
「なっ、何これ。 ニューヨークが燃えている……」
空港の滑走路に降り立った第一声だった、夜が明けたばかりの朝霧の中ハドソン川を挟んで見えるエンパイアステートビルが炎で赤く染まっている、マンハッタンの至る所から黒い煙が立ち昇り、まるで爆撃を受けたかのような光景だ、このショッキングな光景には時差ボケも吹っ飛ぶ。
「ん、あの車は」
ズボヴォヴォヴォ、ズギャギャギャギャーーーーーッ!!
丸いヘッドライトの青のオープンカーがV8サウンドを響かせながら凄いスピードで向かって来たかと思えば、タイヤから白煙をあげて目の前で止まった、運転席から飛び上がる人影。
ズシャーーーーーーッ
「かみゅ、皇帝陛下!!」
シャエルビーさんがシェルビー・コブラ427で乗り付けて、綺麗な飛び土下座を見せて来た。
「今、神って言おうとしました?」
「いえ、めっそうもない!!」
僕がジト目で見つめるとシェルビーさんはわたわたと手を振って否定する、まぁ、そんな事は今はどうでもいい。
「シェルビー大統領、あれは一体?」
僕は煙を上げるマンハッタンの街を見ながら問いかけた。
ニューアーク・リバティー空港 国際線のタミーナルB、シェルビーさんの案内で僕らは少し広めの会議室のような部屋に通された。さすがアメリカだ、色々な国の人が動き回っている、物珍しさでちょっとキョロキョロしちゃうのはしょうがない。
「すいません、緊急事態でこんなものしか用意できませんで」
シェルビーさんの部下が申し訳なさそうに近くのマクドナルドで買ってきた朝マックを僕達に配る、婆ちゃんとシルバー仮面が朝マックのセットにちょっと嫌そうに顔をしかめるが、僕は部下の人にニコリと笑ってお礼を言う、すると部下の人は顔を真っ赤にして謝り出した。いやいや、僕はこういうジャンクフードも好きだから気にしないでいいですよ。
ステーキを挟んだベーグルに日本より多めのフライドポテト、それとコーヒーが僕の前に並んでる、アメリカのハンバーガーって馬鹿でかいイメージがあったのだがそんなでもないな、ちょっと大きいくらいだ、あれってハワイの話だっけ、さっそくステーキをはさんだベーグルをモグモグしていると、シェルビーさんが酷く疲れた表情で話を始めた。
「始まりはニューヨークの男性特区からだったんです」
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