第134話 亀の湯2

合計8個の◯っぱいがプカプカと湯船に浮かんでいる、京香がパチャリとお湯を揺らしながら隣のリカの方を向いた。


「で、リカ、鉄ちゃんとは具体的にどこまで進んでますの?」


「キ、キ、キスはいたしましたわ!」


「はぁ、あれから全然進んでないわけね、リカ、貴女それだけの武器を持っていながら何をやってますの」


京香がリカの全身を舐めるように視線をわして呆れた表情をする、これだけ容姿に優れているくせに、この残念美少女め。


「で、でも色々とタイミングが……」


京香がリカの煮え切らない態度に眉を寄せた。そしてザバリと立ち上がると形の良い胸を持ち上げるように腕を組んだ、素っ裸の仁王立ちでリカを睨みつける。


「タイミング?ちゃんちゃら可笑しいですわ、貴女このままだと麗華さんみたいに他の娘に周回遅れにされてしまいますわよ」


「ガ~~~ン」


「ぷぷ、麗華と同じて」


麗華を例えに出されて思わず吹き出す住之江、ラクシュミーも苦笑いだ。


本来であれば鉄郎の結婚相手として一番有利だったのは麗華だったはずである、美人で強くて巨乳、幼い頃からの同居生活、日頃のコミュニケーションも他の者に比べればダントツに多かった、その上拳法の師として憧れも持たれ一番身近な存在であった。

それが今では住之江に抜かれ、京香に先を越され、リカにも婚約者の座を許してしまっている、それでもまだ危機感が足りないのか最近では黒夢を倒すことに夢中になったり、釣り三昧な生活を送っている。京香の中では麗華はすでに女として脱落者の烙印が押されている、「私だけは大丈夫」その慢心が一番怖いのだ。


「お、お母様、わたくし一体どうすればいいんですの」


自分がいかに危ない状態かを悟ったリカがすがるように京香を見上げる、それを受けて京香が優しく微笑む。


「まずはこの屋敷を出なさい」


「は?」


鉄郎のいるこの屋敷を出る?リカは京香が何を言ってるのか理解出来なかった、男性と一つ屋根の下で共に暮らす、この夢のような状況を自ら手放す女がどこに居ると言うのか馬鹿も休み休み言え、しかし目の前の京香の顔は冗談を言っている雰囲気ではなかった。


「いいですこと、この屋敷の中で鉄ちゃんが特別な感情を持ってるのは住之江先生ぐらいですわ、それ以外はその他大勢、アウトオブ眼中ですわ、大体、鉄ちゃんは最初の婚約者である住之江先生の目の届く範囲で他の娘に手を出すほど神経が太くありませんもの、男の方が浮気するのは大抵外に出かけた時ですわ」


「えっ、うちが一番鉄くんに愛されてるて、いややわ~、まっ、うちは鉄君のファーストキスの相手やし当然やね~」


「でも~、初めての相手はわたくしですけどね」


「なんでしょう、この二人の余裕、凄くムカつきます~、今度カレーに何か混ぜちゃいそうです」


照れながらもドヤ顔の住之江と満足気な笑みを見せる京香にラクシュミーが毒ずく。


「で、でも、お母様、それじゃあ余計に今このお屋敷を出ない方が良いのでは……」


「そやね、結婚前に別居するってことやろ?かえって鉄くんと離れてまうんやないの?」


リカと住之江の言葉にため息で応える京香。


「はあ、これだから素人は困りますわ。男と女の恋愛には適切な距離感が必要なんです、近くにいればいいってものではありませんわ」


「「はあ?」」


「まだわかりませんの、リカが鉄ちゃんの気を引くには一度離れる必要があるんです、それが恋愛の駆け引きってものですわ」


「あ〜、自転車のレースみたいなもんやね、集団を抜け出すには無理してでもアタックかけて引き離す必要があるんや」


「?、例えが分かりづらいですわ、鉄ちゃんの気を引いて追ってこさせるのが目的ですの、婚約者が突然家を出れば鉄ちゃんの性格なら絶対追ってきますわ、そこがチャンスなんですわ」


「「「は〜、なるほど」」」


京香は考える、婚約者という有利な立場を得た今だからこそ、リカは一度この屋敷を出て適切な距離をおく必要があるのだ、恋愛に不器用なこの娘は一度体勢を立て直した方が良い、今のままではその他大勢の一員に成り下がってしまいかねない。

京香の目からみてもこの屋敷にいる娘は中々の粒ぞろいである、本命の住之江はもちろん、脅威度は低いがスタイルと顔は良い麗華、リカの同年代でも副会長の平山や委員長の多摩川は鉄郎との接し方からライバルと言っていい、何より一番注意しなければいけないのは女子高生の肉体に大人の思考を持つ児島鈴だ、はっきり言って鉄郎はこの手のタイプには弱いと京香は睨んでいる、なんとしても先に既成事実を作っておかねば。あれ?貴子は。



「この屋敷が鉄ちゃんの大奥と呼べるようになるには最低でも後10人はお手つきの娘がいないと成り立ちません、今はまだその段階ではないですわ。さしあたって、結婚するまではわたくしのいるバベルの塔にいらっしゃい、お部屋ならいくらでも余ってますわ」


「むむ、でも学校はどうなさいますの?」


「真紅ちゃんのF-35(戦闘機)ならひとっ飛びですわ、それにバベルなら鉄ちゃんも毎週通ってるから色々と好都合ですの」


ふふ、と笑みを浮かべる京香、それを見た住之江は何やそのエロい笑みと思い、ラクシュミーはこれで少し自分の負担が減るかなと期待するのだった。









カポ~ン


「ちなみにリカは鉄ちゃんと結婚したら、お仕事はどうなさいますの?」

「そうですわね、ユーチューバーにでもなろうかしら」

「いやらしいですわ!!」

「お母様が何を想像してらっしゃるか知りませんけど、そんないかがわしい物は配信しませんわ!! あ、愛妻料理の実況とか……」

「あ~、会長の料理はやめといたほうがええんやないかな」

「じゃ、じゃあ鉄郎さんとのデート実況とか」

「そんなんしたら世界中の女から命狙われるで、後、勝手に鉄くんの動画をネットにアップすると黒ちゃんに正座で説教される」

「あぁ~、副会長の平山さんの事ですわね、“鉄ちゃんの部屋”のサイトだけにしとけばいいのに欲出して今の鉄郎さんの配信までしようとするから」

「あのサイト、有料制にしたのにまだ会員数伸びとるもんな、がっぽがっぽやろあいつ」

わたくしも会員ですわ」

「……でしょうね」



「……そう言や、訓練仲間の兵隊さんから聞いた噂やけど、なんやとてつもなくエロい動画がこの世には存在するらしいで」

「ゴクリ、な、なんですのそのとてつもないエロさと言うのは」

「なんでもモザイクだらけで誰か分からないらしいんやけど、男と女のエッチなシーンらしい」

「ぶっ!な、そそ、そんな動画ががが、ありえませんわ」

「そやろ、うちもそう思ったんやけど、見たもんがおるらしい、すぐ消されて幻扱いらしいんやけど」


ザバァ


「わ、わたくしちょ〜っと逆上せてしまいましたわ、お先に失礼しますわ!」


タッタッタタ


「なんや、京香さん急にどないしたんや、顔青なかった」

「さあ?どうしたんでしょう」

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