第133話 亀の湯

武田邸大浴場、亀の湯。

スリランカではもともと湯船に浸かって風呂に入る日本のような習慣は一般的ではない、温泉施設も一応各地にあるがプールのような作りだったり、井戸から湧き出るお湯を服を着たままバケツでお湯浴びするのが普通だ。

しかし、日本の温泉街で育った風呂好き春子はそんなものでは満足しない、貴子の潤沢な資産を惜しげも無く使い、武田邸に温泉を引いて日本式の大浴場を作り上げた。


3つある大浴場のうちの一つ亀の湯は銭湯を思わせるタイル張りの浴室、手前には洗い場がズラリと設置され奥には大きな浴槽、後ろの壁にはご丁寧に富士山の絵が描かれていた。まんま銭湯じゃねえか!

高く積まれた風呂桶はご丁寧に関東版の直径22.5センチの黄色いケロリン桶である。(関西版は21センチ)


ちなみに後の二つは檜風呂と露天風呂である、現地で雇われた使用人にはなぜかこの亀の湯の人気が高い、ジャパニーズ銭湯は国境を越える。


チャパ


「ふぅ~、やっぱり大きなお風呂は気持ちがいいですわ」


藤堂リカ18歳はその白く長い脚を湯船の中で伸ばした、長い金髪を頭の上で結い上げ綺麗なうなじをさらす、152cmと小柄ながらもハーフであるリカは抜群のプロポーションを誇る、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込む、高い腰の位置は純日本人では太刀打ちできない体型だ。

もし鉄郎にこの国で一番の美少女は誰かと聞いたら、間違いなくリカの名前をあげるだろう。幼女とお姉さんと熟女が異議を申し立てそうだが。


そのリカの前をマブチの水中モーターを装着した黄色いアヒルが通りすぎる。通りすぎるアヒルの反対側に目を移した。


「あら、インド人さん」


「ラクシュミーですよ!そんなに難しい名前じゃないと思うんですがね〜」


色白のリカとは対照的な褐色の肌がオリエンタルな雰囲気を醸し出す、隠れ巨乳のラクシュミーも結構なプロポーションを誇る、首には黒夢にはめられた首輪がお湯に濡れて光っていた。


「インド人さんがこの屋敷にいるのは珍しいですわね、いつもバベルの塔にこもりきりですのに」


「……もう、インド人でいいですよ。……久しぶりのお休みなのですよ〜、黒ちゃんも貴女のお母さんも人使いが荒いんだから、見てくださいよこの目の下の隈!昨日なんて1日中PCとにらめっこですよ、カレーと紅茶がなけりゃやってられません」


バシャバシャと脚をバタつかせるラクシュ、水しぶきが飛んで来てリカが顔をしかめる。


「そ、それはご愁傷さまですわ」


ラクシュミーはインドのスパイで鉄郎の秘密を知ってしまったおかげで貴子に金で買われた身だ、しかし生物学者でもある、なまじ優秀なだけに随分とこき使われているようだ。



「あら、ラクシュさん随分と元気ですわね、もう限界って言うから今日はお休みをさしあげましたのに」

「こら、インド人、風呂でバタ足すなや、行儀悪い」


リカが大きな青い瞳を見開く。


「げげっ!お母様と住之江先生」


「リカ、言葉遣いに品がないですわ」


40過ぎとは思えない艶のある肌を見せつけリカの前に立つ京香、この身体で鉄郎を誘惑したかと思うと非常に腹が立つ、しかもその隣には鉄郎の婚約者に一番乗りを果たした淫行教師、一体何を食べたらそんなに大きくなるんだと迫力ある◯っぱいを揺らしていた。


隣にいたラクシュミーがその住之江を見て呟いた。


「住之江先生、すっごい腹筋割れてますね〜」


「いや~見んといてぇ、ちゃうねん、こんな筋肉はうち望んでなかったんや~っ!!」


ラクシュミーの言葉にバシャリとしゃがみこんでお腹を隠す住之江、春子の特訓やエーヴァにしごかれるうちにいつの間にか筋肉質になっていて気にしていたのだ、そのおかげで自慢の脚線美には磨きがかかり、鍛えた胸筋のおかげでバストは垂れる心配はなくなったのだが、鉄郎に「真澄のお腹硬い」と呟かれたのには大きなショックを受けていた。


「女性には適度な柔らかさが必要ですわ、その方が殿方は喜びますわ」


ニコリと住之江に追い打ちをかける京香、アンチエイジングには余念のない彼女は身体は鍛えているがそこまで筋肉は主張せず丸みを帯びている、絶妙なさじ加減で仕上げていた。


「くっ、おっぱいは柔らかいからええんや」


「そんなの私だって柔らかいですわ」


そう言って京香はムニュリと自身の形の良い胸を揉んで見せた。




カポ〜〜〜ン


4人の美女が湯煙浮かぶ湯船に並ぶ、リカ、ラクシュミー、京香、住之江と中々バリエーションに富んだ組み合わせと言えよう。


「それにしても〜、鉄郎さんの婚約者が揃ってお風呂なんて珍しいですね〜、私だけ場違いな感じです〜」


「あら、わたくしは婚約者ではなく、鉄ちゃんの愛人ですわ」


シレッと返す京香にリカが噛み付く。


「お母様!まだそんな事を言ってますの、鉄郎さんに失礼ですわ!とっとお父様との籍を抜いてくるか、この国から去ってくださいまし!」


「だって〜、鉄ちゃんみたいな可愛い息子が欲しかったんですもの〜」


「その息子とヤッちゃうって、どんなエロ漫画や」


「ふふ、義理の息子だからセーフですわ」


「「アウトやろ (ですわ)!!」」



チョポン


「それはそうとリカ、貴女鉄ちゃんとはまだ致してませんの、お母さんそれが心配で今日はこちらに来たんですのよ」


「なな、なにをいきなり、そ、そんな鉄郎さんとはまだ婚約者になったばかりで、まだ、そそ、そんな事」


京香の言葉に顔を真っ赤にさせるリカ、決して風呂にのぼせたわけでない、もともと初心うぶなリカだけに鉄郎とそう言う関係になるのには心の準備が必要だった、へたに婚約者という立場になったために当初の勢いが消えてしまい積極的に動くのが恥ずかしくなってしまったのだ。


「ほ〜ん、なんやまだなんか、おこちゃまやな〜」


「なっ、お二人がふしだらなんですわ!」


「何ゆうとんねん、愛する者同士なら自然なことやろ、まぁ、あんたのお母ちゃんはどうかと思うけどな」


「ふふ、わたくしチャンスは絶対逃しませんの」


「うぐっ、これだから先に余裕のない年増は」


「「何か言いまして (言うたか)」」(怒)



チャポ


「はぁ、仕方のない子ですこと、いいですわ私から作戦をレクチャーしてさしあげますわ、よくお聞きなさい」


京香のその言葉になぜか住之江とラクシュミーまでもゴクリと喉を鳴らすのだった。

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