第132話 黒夢の1日(後編)
バベルの塔で鉄郎は定期検診を受けている、日本にいる時とは比べ物にならない頻度で検査をしているのだが、立場が国王である事と男性出生率をあげるための研究の為と言われては拒むことも出来ず、今日も貴子特製のMRIに身を委ねる。
ブゥーンと小さなモーター音をたてて鉄郎の周りをサーチする無数のレンズ、MRIの操作室では黒夢が機械の操作をし、隣では夏子と京香がにやけながらモニターを食い入るように見つめる。
「鉄ちゃんの成長を日々見守る、これこそ医者の特権ですわ!! ああ、前回より爪が0.8mmも伸びてます、やっぱり若い男の子は成長が早いですわ」
「ソレハこの国がアタタカイカラ伸びるノガ早いダケ」
「ちょっと黒ちゃん、これ全裸モードで表示しなさいよ、数値だけ見たって先週と大して変わらないでしょ」
まぁ、この二人の欲望のせいで検査の回数が増えてる気もするが。病気は早期発見が大事なので定期的に健康診断は受けましょう。
鉄郎が検査室を出ると京香が抱きついてくる、ここからはただのセクハラである。
「鉄ちゃん、今回の検査も問題なし、健康そのものですわ、ついでだから1回シテいきます?」
初体験を果たした個室を横目に視線で誘導すると耳元で京香がお誘いをかける、甘い吐息を耳にかけられ顔が真っ赤になってしまった、京香は臭いもエロい。
「京香ハ、妊娠シテルカラ、モウイイ、他の個体ニスルベキ」
「そんなぁ、医学の発展には色エロな体位を試す事は必要な事ですのに〜」
「黒ちゃん良いこと言った!! 次はやっぱり私の番よね!」
「お母さんだけは絶対にないからね」
「ガ~~~ン、ならば寝込みを襲ってでも無理やり……」
「黒夢、夜中にお母さんが部屋に来たら即排除ね」
「ラジャー」
鉄郎の言葉に敬礼で返す黒夢。
「いつまでも戻ってこないと思えば何やっっとるんだお前ら」
待ちくたびれた貴子が部屋の扉の前で呆れたようにため息をついて立っていた。
「で、進捗の方はどうなのよ京香」
ドカリとソファーに腰を下ろした夏子が京香に話しかける。
「鉄ちゃんの世界征服計画のことですの?」
「何それ!」
「何って鉄郎君の子供をいっぱい作って世界征服する話だよ、ついでに人口問題も解決しちゃうよ」
「「世界中にパパの子供イッパイ」」
驚く鉄郎に何でも無い事のように貴子が言葉を返す、黒夢と真紅も当然だと言わんばかりに頷いている。
人類救済計画がいつの間にか世界征服計画にすり変っていて驚く鉄郎、男性の生まれる可能性の少ない今の世の中で、鉄郎の子供は男が生まれる可能性が80%越えの数値を出している、それだけにその子供が将来世界各国に散らばれば必然的に武田の血縁者が膨大な数になる。
「いやいや、僕の子供ばっかり増やしてどうすんのさ」
「でも現状では鉄ちゃんの子供を増やすのが一番効率的ですわ、あまり人類に時間は残されていませんから」
「第3期マデノ人工授精デ、132名ノ妊娠を確認シテル、応募殺到、パパ大人気」
「いつのまにか妊婦さんだらけだ!!」
「そうは言っても世界の総人口を考えると全然少ない数だよ、1年以内にこの3倍は欲しい所だね」
「さ、3倍……」
真紅の報告に突っ込む鉄郎だが貴子の言葉で頭を抱え考え込む、確かに自分の種で人工授精の許可は出したがまさかそれほどの人数が受けているとは想像していなかった、これでねずみ算的に鉄郎の子供が増えれば将来的には世界征服という言葉もあながち間違っていないのかもしれない。
「問題なのは、鉄くんの直接の子供がまだ京香だけって事よね、人工授精の子はこの国の王位継承権がないんでしょ、このままじゃ京香の子供が次期国王になっちゃうわ、ハッ! お母さん頑張るから今からする?」
「「「パンツを脱ごうとするな!!」」」
鉄郎、貴子、京香の3人が一斉に夏子に突っ込む、この場に春子が居たら刀を抜いていたことだろう、懲りない人だ。
「だが夏子お義母様の言うことも問題ではあるな、私はまだ子供を産める身体じゃないからな、デカ乳教師や悪役令嬢はどうなんだ?」
「乳オバケ2号ノ妊娠はマダ、フランス人形はマダ繁殖行為をシテイナイ」
「あらあらあら、リカは何してるのかしら、私の子のくせに不甲斐ないですわ」
「うわ〜、この筒抜け感は勘弁して欲しいんですけど……」
羞恥心で手で顔を覆う鉄郎をよそに、夏子が黒夢にチョイチョイと手招きして呼び寄せると耳元で小声で囁く。
「ちなみに黒ちゃん、あの女教師の時の映像は?」
「見たいノカ?」
「あるの!」
「パパの部屋はカメラがスクナイカラ、アングルが甘いゾ」
おはようからおやすみまで鉄郎を見つめる黒夢に死角はない、人はそれを盗撮と呼ぶが黒夢にとっては出来るアンドロイドの
鉄郎のプライバシーより記録と安全が優先されるのだ、そして黒夢にとっては無価値の映像記録も男に飢えた女性陣にとっては激レアお宝映像になるのだ。
「新作きたーーーっ!!」
奇声をあげる夏子に何々と京香と貴子がよってくる、エロいことには非常に敏感な連中だ。
コソコソと相談を始める3人を黒夢と真紅の鋭敏なセンサーが捉える。
「「脈拍上昇、発汗モ見られル、発情期?」」
人間は理解不能と黒夢と真紅が揃ってポキュリと首を傾げる。
「ねえ黒夢、あの3人どうしたの?また悪巧み?」
「パパは知らナイ方ガ健康ニイイ」
「そうなの?」
「タブン」
こうして黒夢にとっては平和な1日が終って行くのだった。合掌。
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