大人にウケるだろう高校生の小説とは(後)

 前回のあらすじ。「わからないことは想像で書かない」「登場人物にレッテル貼りはやめよう」でした。それでは続きです。ここからは実践的な話です。あくまでも「ウケたい」人が取り入れる話なので、好きに書きたい人は好きに書いてください。


 みっつめ。オリジナル要素を入れよう。


「落ち込んでたけど一歩踏み出したら成功したよ!」

「気になる子に告白したらOKもらったよ!」「教室でダベるの最高!ウチら青春!」


 うんうんいいね、青春だね。


 書いている方はキラキラしてる自分だけの宝物かもしれない。書き上げたらそれは本当のタカラモノ。大事になすってください。


 しかし、「他人に見せる」となるとまた別の話。


 例えば、友達の家に赤ちゃんが来たとする。友達は血が繋がっているので赤ちゃんが可愛くて仕方ない。あなたにしきりにコメントを求めてくる。


「ねえ可愛いでしょう、ほらここの口のところがそっくりだって言われてね、あっあくびした、かわいいいい!!ねえねえ可愛いよね!?可愛いよね!?」


 そこで気の利いたことを言えと求められる。「確かに口のところは似ているけど、目は向こうの親の影響がよく出ているね」とか「ミルクは何cc飲むんだい?よく飲むね」とか「寝返りはした?もうすぐ?」とか、言えるならいいと思う。


 赤ちゃんでなくても、例えば友達のお母さんの描いた絵とか、友達のお父さんの釣り上げた魚でもいい。当事者や周囲の人なら「すごいすごい!」となるところ、他人からすれば「で、何?」になるわけです。お世辞に「よかったねえ」と言えば終わりなんだけど、自主企画の場合は多分求めてるの双方そういうものじゃないよね。


 小説に戻ると、自分の作品は可愛いし誰にでも愛されると思うものですけど、現実はそうじゃない。だから他人にも「お?」と思わせるような要素が必要になってくる。


 具体的に言うと、テンプレ展開に一味添えることです。例えば幼馴染に告白してOKもらう話であれば、その舞台を空港にして飛行機を眺めながらするとか、幼馴染の家が特殊な家業をしていてそこに入る勇気はあるのかとか、それこそ流行りの配信で幼馴染に告白イベントがあるとか、物語に背景を作ってみてください。


 おそらく登場人物の会話文と見た目の設定で力尽きているのだろうなと思います。アニメや漫画で言うと、キャラクターばかりで背景が真っ白な状態に近いと思われます。


 そこで気力を振り絞って、背景を書いてみてください。キャラクター書いてる方が楽しいのはわかります、それは漫画も同じだと思います。でも漫画にも小説にも「背景」は大事です。小説の場合、背景は作者ならではのオリジナル要素になります。それは何かは各自で考えてください。


 繰り返しますが、ここに書いているのは「誰かに読んで褒めてもらうための小説」です。自分が好き勝手に書く分には何を書いてもいいと思います。


 よっつめ。地の文を書こう。


 地の文って難しいよね。頻繁に「地の文と会話文の比率が読みやすさに関係するしない」の話になるのですが、そんなものは何を書くかで変わってくるわけです。


「旅行に行くぞ!」

「うわー、富士山きれいだな!」

「山中湖もきれいだな!」

「旅館の食べ物はおいしいね!」

「あー楽しかった!」


 例えばこれは会話文しかありませんが、紀行文であれば旅先の風景の説明が必要ですね。富士山の色、その時の天気、具体的な料理の説明、そんなものがないと全く思い浮かびません。目の前で見たものをわざわざ説明するほど旅先で会話するのも不自然です。


 例えば何でも会話文で済ませようとする作品もありますが、そうすると状況としては大変不自然になります。


「やあおはよう、幼馴染のヒロイン」

「そういう君は普通の高校生の主人公くんですね、おはようございます」


 こういう会話が許されるのはアニメの忍たま乱太郎くらいだと思います。忍たま乱太郎はこの辺の台詞回しがストレスなくて凄いですね。


「やあおはよう」

「おはようございます」


 現実だとこのくらいでしょう。さてこの2人の関係は、時刻は場所は天気は一体何かを地の文で表現してみましょう。一人称なら主人公の視点でわかること、三人称なら客観的にわかることを説明します。


 ついでに「今何を書いているか」を意識して書いてみてください。よく一人称と三人称がごちゃごちゃになる、というものを見ますがそういうときはまず一人称で視点を統一させてみて下さい。そうすると何を書いてよくて何を書いてはいけないのか整理しやすくなります。


 次回は「これは絶対やるな!」という話です。再度書きますが、自分のためや仲間内で見せ合うくらいなら何を書いてもいいと思うのです。今回のように自主企画に出して誰かに読んでもらうなら最低限これだけは守ってほしいということです。特に小説書き始めたばかりの人だと意外と盲点だと思うのでちょっと考えてみてください。

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