大人にウケるだろう高校生の小説とは(前)

 前回「高校生多すぎなんじゃ!」という話をしたので高校生向けの話をします。小中学生も大学生も大人の人も聞いてね。


 図らずしも高校生の作品を読みまくることで、ある種のパターンみたいなものを見つけたので「更なる高みを!」という方は参考にしてください。好きに書きたい人は好きに書いてください。


 まずひとつめ。主人公は同年代が良いですぞ。


 例えば会社の勤務形態とか不思議な役職とか、はたまた実在っぽいけど架空の疾病とか架空の法律とか、なんか現実世界の実態にそぐわない記述が出てきたけどこれはまさか作者の想像で書いたのかな?というようなものがたまにありました。そうなると小説としてはやはり興ざめで、読む気がなくなるんですよ。


 そうなると、背伸びをせずにやはり身近な世代で身近な題材を書くのが一番いいと思います。知らないことは想像で書かない、書くなら資料をきちんと見よう。


 ふたつめ。陽キャを憎むのはやめよう。


 これは今回たくさん読んで思った話なんだけど、「バカそうな陽キャが笑ってる。私は陰キャだからあいつら嫌い」というような導入がまあ多い。とても多い。非常に多い。その後陰キャが運命の人に出会いがち。それで陰キャ過去の自分振り返って前向きに生きていこうって言いがち。まあテンプレ、というか王道ですよね、これ。


 いや、気持ちはわかるのですよ。王道のストーリーやりたいのはわかる。他人と馴染めない、私なんて意気地無しのダメ虫だと自己嫌悪してるところから始まっていろいろあって自己を肯定するストーリー、いいよね。


 ただね、その過程でモブの陽キャを見下すのはどうかと思うんだ。別にモブの陽キャである必要はないんだけど、作品内で無駄に何かの悪口を言うのはちょっと違うかな。ただでさえこの手のストーリー、ずっと読んでると「もういいよ……」となるところで関係ない人の悪口挟まれると本当に読む気がなくなるのね。


 そもそも、「陽キャ」とは一体なんだ?


 スクールカースト上位で机の上に座ってお菓子広げながら「バイト先の先輩の彼氏がさー」とかだべり出す女子なのか?

 サッカー一筋でスポーツ推薦狙ってて毎日サッカー漬けというかサッカーオタクの爽やかイケメン?

 お笑い大好きでこれからブレイクしそうな芸人を教えてくれる面白系男子?

 大阪のおばちゃんみたいにお菓子配りながら宿題見せてってねだるちゃっかり系女子?


 そして「陰キャ」とは何だ?

 その定義は一体何なんだ!?


 筆者の見解として、この言葉は「友人と楽しんでいることを僻んでいる」という印象が強くて、それゆえに個人の解像度がボケてしまうと思ってる。レッテル貼りのようなもので、よく知りもしない人のことを属性で差別しているような浅はかさも込められている気もする。ひと昔前は「リア充」「非リア」として使われていた言葉ですね。「オタク」「ヤンキー」もそれに近いですね。


 もちろんわざとボケさせたい、そういうボケたモブキャラとして使いたい、最近生まれた言葉を使って時代を表したい、そういう意図でわかって使用しているなら構わないと思います。


 しかし、特に何も考えずに「陰キャ陽キャ」を使うのであればそれはちょっと考えた方がいいです。おそらく他の表現方法があるはずです。感覚としてはお絵描きソフトに最初からあるスタンプをペタペタ貼って作品にしているようなものです。もちろんスタンプをうまく使えば立派な作品も出来ますが、お絵描きソフトなのでやっぱり絵を描いてほしいですよね。


 要は「レッテル貼りで登場人物を書くな」ということですね。これが多用されると、やっぱり読んでいて悲しくなってくる。「クラスのイケメンだから好きになった」「幼馴染だから好きになった」「オタクだからキモイ」「悪人だからいじめていい」みたいなレッテルからの動機ではなく、個人としてどうなのか登場人物と向き合ってみてください。


 次回は「大人にウケる小説」の後編です。大人ウケなんか気にしない人は別にいいと思いますが、これを取り入れるとグッと良くなると思うので、実践してみてほしいなと思います。ではまた。

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