帯状疱疹

第2話 原因を突き止める。

診察室まで来れたね。

すごい、えらいよ。

俺も一緒に診察室に入って、先生のお話を聞くよ。

一人だと不安でしょ。

泣きっぱなしじゃ診察室に入れないかって。

うん、そうだね。

一度泣くのを我慢することってできるかな。

ちょっと頑張れる？

きつい？

おうちに帰ったら、俺の胸でいっぱい泣いていいから、ね。

よし、君は今頑張る時間だ。

お、えらいね。涙とまってきたね。

もう一息だ。

そろそろ君の順番になるかな。

怖い？　怖くなっちゃったかな。

そうだよね、わかるよ。

緊張もあるかな。

わかった、わかった、そんなに泣かないよ。

ねーねー、楽にしてもらえるって考えられないかな。

おっと、名前呼ばれたね。

楽にしてもらえるって考えてみて。

どう？いけそう？

お、いける？　そう、大丈夫だよ。

楽にしてもらおうね。

診察頑張れて、えらかったね。

原因を突き止めるために、今からちょっと頑張るよ。

採血と心電図と胸部のレントゲンをまずはやってみて、

結果次第で、人間ドッグをとのお話だったね。

もう一息だよ。

一緒に乗り切ろうね。

採血で異常が出たところがあるみたい。

腫瘍マーカーの数値がかなり高いって。

帯状疱疹の原因の一つとして、悪性腫瘍も含まれていて。

え！って、そんなに驚く？

悪性腫瘍？　うん、そう。

今すでに体の中にあるか、この先５年の間は悪性腫瘍ができる可能性が高いから

自治体のがん検診なども利用して、気をつけていかないといけないと先生もおっしゃってた。

でも、腫瘍マーカーの数値が高かったということは、今の段階でどこかに悪性腫瘍があると考えた方がよさそう。悪性腫瘍ってがんのことかって？

うん、まぁ、そういうこと。

でも、大丈夫。

今の時代、早期発見なら命にかかわるということもそんなに多くはないからさ。

ごめん、今日もうひと踏ん張りしてくれる？

がん検診を受けてから、おうちに帰ろう。

今まで黙ってたことがある？

なんだろう。それ、今お話できる？

ずっと言わなくちゃって思っていたんだけど、言えなくて。

そうだったんだね。誰にも話せていないのかな。

そっかそっか、それはつらかったね。

ゆっくり、落ち着いてからでいいからお話聞かせてもらってもいいかな。

実は、この間の定期検診で要精密検査っていわれて、pet（ペット）検査を受けて細胞診をしたんだね。

そんなことがあったんだ。

一人で抱え込むような話じゃないよな。

まぁ、でも言いづらかったか。

それで、検査の結果はでてるの？

ごめんって、なんで謝るの？

昔からあった良性の腫瘍が、悪性になっちゃったみたいなの。

え、ほんと？　俺こそ、ごめん。動揺しちゃって。

ちょっと、俺、深呼吸するわ。

君も一緒にする？

吸ってー　吐いてー

もう１回、吸ってー　吐いてー

駄目だ、俺はあと数回深呼吸するね。

ちょっと待ってて。

ごめん、お待たせして申し訳ない。

君の方が打ち明けるのしんどいはずなのに、本当にごめんね。

でも、もう大丈夫。

聞いたときはすごく驚いたけど、今はもうどうやって支えていこうかなーとか、

どこの病院にお世話になるのがいいかなーとか前向きに考えられてる。

だから、君は安心して俺に委ねて大丈夫だよ。

まずは、帯状疱疹をしっかり完治させることを考えような。

そのためには、君の中にある悪性腫瘍と向き合って、少しずつ前進していけるようにしよう。

現実を突きつけられて、しんどくなることも多くなってしまうと思うけど、

君には俺という医者彼氏がついてる。

だから、大丈夫。

一緒に前を向いて進んでいこう。

時には、一緒に涙もながそう。

輝かしい君との穏やかな未来しか、俺には見えない。

一日一日、大切に過ごしていこう。

大好きだよ。

何があっても、この気持ちは変わらない。