2-3 彼女の役割
すぐに理解するのは難しかった。
「……は?」
おそらく、大福でなくとも同じような反応を返すだろう。
地球と名乗った青葉もそれは織り込み済みの様で、『わかります』と頷いていた。
「急に変なことを言われて、戸惑うのもわかります。しかし、この少女が『
言われてみれば、確かにそうだ。
青葉は『神託』の能力によって、神様の言葉を聞けると言っていた。
もし、青葉(仮)の言うように、神と地球というものが同一の存在であるならば、青葉がこれまで受け取ってきた神託というのは、神のお告げであり、地球からのお告げでもあったというわけである。
それにハルだって地球によって選ばれた存在である。そこに意志があるということは事前に得ていた情報から推察することは出来る。
「だが、だとすれば、どうして地球が青葉を操ってこんなところまで来たんだ?」
「あなたと対話するためです」
そう言って、もう一度青葉が指を鳴らすと、大福の対面にもう一つ、椅子が現れた。
全く何もなかったところから、まるで手品のように。
青葉はそこに座ると、大福が今まで座っていた椅子を指す。
「どうぞ、座ってください」
「……なんか、調子狂うな」
青葉の顔から落ち着いた声が出てくると、なんだか脳がバグる感じがする。
それでも地球は改めるつもりはないのか、そのままの調子で話を続ける。
「今回、あなたとお話をしに来たのは、協力を
「協力ゥ……?」
椅子に座りつつも
そりゃそうだ。地球と名乗る存在であれば、どうしてこのタイミングなのか、謎である。
これまで幾度となく、大福に接触する機会などあっただろう。
何せ、地球が選んだ地球の娘と一緒にいる時間が半年以上あったのである。
それがどうしてこのタイミングで……?
「とりあえず、続きを聞かせてもらおう」
対話に応じる態度を見せた大福を見て、満足そうに頷いた青葉は話を続ける。
「まず、これをご覧ください」
そう言って、青葉は端末を取り出す。
そこに映し出されていたのは、一般向けのニュースサイトである。
見出しには『隕石、接近中』というもの。
「隕石……? これがなにか?」
「これは本当は隕石ではなく、エルスウェムヤダの本体です」
「なっ……!?」
そう言われても、否定することが出来なかった。
元々、大福はミスティックの事を宇宙人だと教えられていた。
遥か彼方の宇宙からやって来て、地球を支配しようとする存在。それがミスティックである。
であれば、地球上の観測機関が飛来するミスティックを隕石だと誤認してもおかしくはあるまい。
一応の納得をした大福を見て、青葉は端末をしまった。
「この情報も本来ならば秘匿會が隠蔽するべき情報ではありましたが、発見者が個人であり、それがSNSによって広く発信されてしまったことにより、下手に隠蔽するよりは誤情報として認識させる方向に転換したようです」
「それで、エルスウェムヤダを倒すために、ハル先輩が出動するわけか」
「はい。……ですが、それでは朝倉ハルはエルスウェムヤダに負けるでしょう」
「……なに?」
青葉の声音は常に一定している。
それが冗談なのか本当なのか、全く判断がつかない程度だ。
「ハル先輩はアンタがミスティックを退けられるようにって選んだんだろ。だったら、勝てるはずなんじゃないのか?」
「……真実をお話しましょう、木之瀬大福」
居住まいを正し、青葉がまっすぐに大福を見る。
「そもそも、朝倉ハルは生贄です」
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