エピローグ 秘匿會の矜持

エピローグ


 薄暗い部屋に、明かりがこぼれてくる。

 ドアが開くと、廊下に立っていたのは日下と大福であった。


「入りたまえ」


 日下に指示され大福は部屋の中へと入る。

 用意されていたのは一脚の椅子のみ。


「これから無期限で、君にはここにいてもらう」

「なるべく早くしてくださいよ。俺だって暇になれば何をしでかすかわかりませんから」

「こちらも最善を尽くすつもりだ。……君の英断に感謝する」


 ドアが締められると、部屋の中は非常灯だけが灯る、薄暗い部屋に戻った。

 大福は周りをぐるりと見回すと、ため息をついて椅子にどっかり腰を下ろす。


 呆れるほど何もない部屋だった。


「あー……マジで携帯ゲーム機ぐらいもってくりゃ良かった」


 これからどれぐらい続くかわからない孤独に、不安しかなかったのである。



****



「木之瀬大福は自身の無力化、もしくは死亡を望んでいる」


 秘匿會の会議室にて、日下が声を荒げる。


「あの年若い少年が、このような苦渋の決断をしたこと、私は彼を素晴らしい人物と評するに値すると思う。そして、彼の勇気に報いねば、我々は胸を張って秘匿會を名乗れないだろう!」


 集まった會員の中には当然、真澄もいた。

 その胸中に何があるのかは、今はまだわからない。


 ただ、彼女はディスプレイに表示された議題、『木之瀬大福の無力化、あるいは殺害』という文字をただただ凝視していた。


 それに気付いているのか否か、日下は話を続ける。


「我々は全力をもって、この案件の解決に当たる。そしてもう一つ、忘れてはならない。ミスティックはもう二人いる」


 ディスプレイが切り替えられ、矢田と蓮野の顔写真が映し出された。


「この二人はミスティックであり、高い危険性を持っている。まさしく我々の知るミスティックそのものであり、この二人を片付けない限り、今回の件は決着を見ない」


 日下が強か机を叩く。そこにどんな感情が乗っているのか、知る由もない。


「ミスティックが出現したとなれば奈園支部だけの問題ではなく、全世界の秘匿會の力を終結せねば解決出来ないかもしれない。だが、我々はその最前線にいると心得えよ!」


 顔を上げた日下の瞳に、鬼気が宿る。


「全員、文字通り死力を尽くせ。ここが正念場だ」

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