3-20 Take me higher

 そして大福はハルを引き寄せ、ギュッと抱きしめる。


「良かった、ハル先輩……どこも怪我はないか?」

「ないよ。大福くんが助けてくれたから」


 自由落下を始める二人の身体であったが、すぐにハルが能力を使用して、空中浮遊を始める。


 大福には能力が通用しないので、今は彼がガッチガチに着こんでいるバックパックを持ち上げる事で疑似的に大福を浮遊させることにも成功していた。


 やっと安心できる状況となり、大福は改めてハルの身体を確認する。


 確かに、どこにも外傷はない……よう……だ?


「せ、先輩、水着じゃん!」

「え? あ、今!?」


 なんともタイミングの悪い気付きに、ハルも呆れて吹き出してしまった。


「あっははは! なによ、事前にメッセージ送ったでしょ?」

「メッセージ? 見てないよ、そんなの! 後で確認せねば……」


「もう生で見たんだから良いでしょ……というか、それよりも」

「うん?」


 大福の首に回されたハルの腕に、ぎゅっと力が込められる。

 途端、二人の距離はグッと縮まり、




 チュッと水音がして、唇が触れ合う。




「せ、先輩……」

「好きよ、大福くん。誰よりも、大好きッ!」


 なんとも無邪気な告白。


 しかし、それゆえにまっすぐに大福の心を撃ち抜いた。


 ハルにしても、ここまで晴れやかな告白になるとは思ってもみなかった。


 夕焼けが赤く燃えて、それに照らされた海面はキラキラと光っていて。


 誰もいないこんな空高い場所で、たった二人で、初めてのキス。


 思い描いていたよりも、何倍も素敵なロケーションに、ハルの気持ちも昂っていた。


 おそらく、この後、家に帰った時に急に恥ずかしくなってバタバタするのだろう。

 だが、それも今は考えない。


「これが私の話したかったこと。あなたに伝えたかったこと。私のどうしようもない気持ち」

「……先輩、俺もハル先輩が好きです。これまでと変わらず……いえ、今までよりももっと、ずっと!」


 ハルの想いに応えるように、大福もハルの腰に回した腕にギュッと力を籠め、彼女を強く抱きしめる。


 もう離さないように。誰にも渡さないように。


 ああ、願わくば。こんな時間が永遠に続きますように。

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