2-7 特別指令
大福のちょっとした驚きをスルーしつつ、真澄はもう一度メモ帳にされている紙を差す。
「重要なのはこの超能力者とハルちゃんは別物という事」
「あ、そういや別に表記されてますね」
「ハルちゃんが能力を持っているのは、宇宙人が影響した結果ではなく、地球が影響した結果なのよ」
「……んん?」
急に現れた地球という存在。確かに最初から表記されていたが、これまでの話には一個も出てきていなかった。
「地球が、影響? 宇宙人みたいに、ってコト?」
「そう言う事。そもそも、宇宙人は地球を支配下に置くために、遠い宇宙の果てから地球までやって来たの」
「地球侵略ってことなら、まぁ良くある話ではありますか」
ドラマや映画のSFモノでも外宇宙の存在が地球を我が物にしようと侵略を仕掛けてくるのはそこそこある話だ。
「地球はハルちゃんを防衛力の
ぐりぐりとペンで強調されたハル。
そこから伸びた矢印は宇宙人も超能力者も吹き飛ばすような勢いであり、真澄の認識の強さが窺える。
「なんでハル先輩が選ばれたんですか?」
「それはわからない。私たちは誰も、地球と対話したことがないから」
そりゃそうだ。
普通に考えて、今足元に存在している星と、どうやって対話しろと言うのか。
それこそ超能力でもなければ無理だろう。
そもそも、地球に意思があるのかどうか、というのもよくわからない話ではあるが。
「とにかく、地球は敵対存在である宇宙人に対しての防衛力を用意した。それがハルちゃん。宇宙人側はハルちゃんを排除しつつ、最終的に地球を自分のモノにしたい。ここまでは理解したってことで良いわね」
「まぁ、なんとか」
「では、ここで問題が二つあります」
言いながら、真澄は紙に二つ書き足す。
一つは宇宙人の隣に、もう一つはハルの上に。
宇宙人の上に書き足された文字には、どこか見覚えがある。
「ウノ・ミスティカ……」
「そう。それが宇宙人が作り出した手勢。宇宙人の意思に迎合し、宇宙人を神と崇め奉っている狂人集団」
宇宙人の隣に記されたウノ・ミスティカという勢力。
そこから神秘秘匿會に両矢印が引かれ、『敵対』という言葉で結ばれた。
「私たち神秘秘匿會とウノ・ミスティカはその理念からして反発していて、両者の発足からずっと争い続けているわ」
「じゃあ、二百年前から?」
「そう。その間、ずっと争い続けていて、どちらも完全消滅に至っていない」
「そのウノなんちゃらって集団が、ハル先輩をどうにかしようとしている、って事ですね」
「大福くんは物分かりが良いね。そう言う事よ。だからもしかしたら、奈園にもウノ・ミスティカが入り込んでいる可能性もあるし、もしかしたら学校内にいるかもしれない」
「危ないじゃないですか!」
「一応、秘匿會も常にリサーチを行ってるから、いないってことにされてるけどね。でも、何事にも完璧なんてことはありえないから、万が一がある」
人間がやることであるからには、どこかしらにミスはついて回る。
どれだけ完璧にやったと思っていても、何度も確認を行ったとしても、それでも
それが原因で、敵対組織の人間が懐に入り込んでいる可能性もゼロではない。
「もう一つの問題は、何故かハルちゃんの能力が、充分に働いていないという事」
「えっ? 普通に超能力使ってましたよ?」
「ちょっとした能力は使えるけど、宇宙人を退けられるほどの能力はないってコト。本来ならウノ・ミスティカなんか物の数でないほど強力な能力を使えるはずなのよ」
「それが、出来てない?」
「出来てたら私たちの仕事も、もうなくなってるはずなのよね」
そう言われると納得するしかない。
宇宙人が影響して超能力者が生まれ、それを秘匿している神秘秘匿會がいて、ハルはその原因となる宇宙人を消し飛ばす力を持っているらしい。
ハルが全力を出していれば宇宙人が消し飛ぶので、全ての原因が除かれ、あらゆる問題が解決しているはずなのだが、現状はそうなっていない。
「だから、私たち神秘秘匿會がやるべきことは、ハルちゃんの能力が
「でもどうやって?」
「それが、これよ」
真澄はメモ帳になっていた紙を裏返し、その文面を大福に見せた。
そこに書かれてあったのは指令所である。
「木之瀬大福と朝倉ハルの交流によって、彼女に何らかの影響が出る可能性がある。そのため、木之瀬大福について朝倉ハルへの接近を許可し、神秘秘匿會が秘匿する情報に関して一部開示を許可する」
「……なんスか、それ」
「YOU、ハルちゃんと仲良くなっちゃいなYO、ってこと」
改めてあけすけに説明されると、やはりなんだかしっくりこない。
これまで宇宙人だとか、それに対抗する組織だとか言う話をしていたのに、急にその組織から女の子と仲良くなりなよ、と言われている状況だ。
すぐに飲み込めという方が無理である。
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