scene48 ライブ

―大知―

ステージ上から見えるペンライトの輝きは圧巻だった。クリスマスとあって、アリーナ席に座るファンの中にはサンタクロースのコスプレをした女の子の姿も見える。

「みんなー!メリークリスマスー!」

奏多の呼び掛けに呼応して客席が湧く。

ライブは最新シングルのタイトル曲から始まる。アップテンポのダンス曲で、今までリリース中で一番ファンの反応が良かった一曲だ。

そして―眞白が初めて、俺のパフォーマンスを見てくれた曲でもある。

……かっこよかった、って言ってくれたな。

思い出したら嬉しくなった。

眞白はどこで観てるんだろう。

いや、観てくれているんだろうか?

一曲目が終わり、次のイントロが流れる。振り付けの途中から花道を移動していく流れだった。

手を振ってくるファンの顔を一人一人、しっかり見ながら声援に応える。二階席にも視線を移した。ステージに立つと、意外と客席の顔もよく見える。自分のファンのうちわはよく見えるし、ペンライトの光があれば尚更わかりやすい。

そうして客席を見渡して、気がつけば眞白の姿ばかり探している自分がいた。

こんなの駄目だって分かってる。集中力は切れるし、応援してくれるファンを欺いて嘘くさい笑顔を振りまく自分自身に嫌気も差す。

それでも、やるしかないんだ。

応援してくれるファンを一番大事にして、アイドルとして頑張る姿を見せる。

だけど奏多に言われた通り、俺は俺自身の気持ちも大事にしたいと思う。

眞白。俺は、君を諦めるなんて出来そうにない。

この公演が終わったら、君に聞きたいことがある。

俺はまだ、肝心な事を聞いていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る