scene10 幼なじみ

―大知―

「二人は幼なじみなんだよね」

運ばれてきた料理に手をつけながら話を振る。

「幼稚園か、小学校が一緒だったの?」

「ちゃうで。学校一緒に通うのは大学が初めてやわ」

悠貴が答える。

「へえ、同じクラスだったとかじゃないんだ」

「ならへん、ならへん。眞白は年上やもん」

「え?」

何気なく言われたその情報は初耳だった。

「同い年じゃないんだ」

「あ、言ってへんかったっけ?一個上やねん。大学は同じ年に入ったから、同学年やけどな」

「そうなの?」

「眞白、高校の時留年しとるで」

そこまで悠貴が言った時、眞白が手を伸ばして悠貴の前で振った。少し怒った顔で悠貴に何事か手話で伝える。ごめんごめん、と悠貴は謝った。

「余計な事言うなって怒られた」

「あ、そうだよね……ごめん、眞白」

顔を見ると、眞白は困った様に、ううん、と首を横に振った。

『ハルはお喋りすぎるねん』

「あー、確かに」

「何やねん、確かにって」

「じゃあさ、どこで仲良くなったのか教えてよ」

話題を変える。

聞けば、二人が知り合ったのは悠貴が五歳の時だったらしい。

男でも字は上手に書けんとあかん、という祖母の主張によって無理やり連れて行かれた書道の教室で、眞白と出会ったのだという。

「眞白の家って、めっちゃ旧家で厳しくてな。書道もそうやし日本舞踊とか和太鼓とか、上品な習い事ばっかやらされとってん」

「なのに、ハルと気が合ったの?」

「いつも隣の席で習字やっとったからな。で、俺がダンス習っとるの知った眞白が自分もやりたいって言いだして、一緒にダンス教室も通ったわ」

「え、眞白もダンスやってたんだ?」

「うん。俺よりずっと上手かったんやで」

思わず眞白の顔を見た。複雑な表情が浮かんでいるのに気づき、胸が苦しくなる。

「あ、そうだ。眞白、デザート何か食べない?」

メニューを広げて見せる。

「甘い物、好き?」

聞くと頷いたので、どれにしようか、と一緒に選ぶ。

……まだ気になる事はたくさんあった。眞白の事を聞けば聞くほど、もっと知りたくなってしまう。

けれど、そんな俺の好奇心のせいで辛い表情をするのは見たくなかった。

頼んだアイスクリームを美味しそうに食べる眞白を見つめながら、どうしたらもっと距離を縮められるだろうかと、そんな事ばかり考えていた。

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